(2)

 8畳間に円形のチャブ台を置いて、光宙と光宙の家で働いている4人の技能実習生は夕食をとっていた。

 光宙の家で技能実習生が働くようになって一〇年近く。

 3年前に光宙の母親が死んでから、食事は光宙が作るようになったが……手際に関してはマシになったが、腕前に関しては光宙自身も上がったようには感じていない。

 全員が、美味いとも不味いとも言わず、黙々と食っていた。

「社長さん、昼間、来た人、誰だったんですか?」

 一番長く働いているベトナム人の技能実習生のゴがそう訊いた。

「東京の取引先の人じゃけど……」

「大丈夫な人ですか?」

「何がね?『大丈夫か?』ってどう云うゆ〜意味ね?」

「日本人で雰囲気が良く似てる人知ってるから」

「どこの人じゃ?」

「私を日本に連れてきたブローカー」

「はぁ?」

「私の給料の半分を、今、そのブローカーに払ってるでしょ」

「あ……ああ……」

「そう云う人」

「そ……そうか……」

「ええっと、社長さん、こう云うのって日本語だと『差し出がましい』って言うかも知れないですけど」

 一番若い実習生のナムが手を挙げてそう言った。

「何ね?」

「変な詐欺に引っ掛からないで下さいね。ここが潰れたら、私達、日本で生きてけなくなるから」

「いや……じゃから……」

「あの人みたいな、変に人なつっこい人ほど気を付けた方がいいですよ」

「そ……そっかね……」

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