第3話 小児性愛に効く薬毒3
髪の毛をぎゅっと掴まれて痛い!と思った瞬間に顔をがつんと殴られた。
身体は吹っ飛び、壁で肩を酷く強く打った。
慌てて身体を起こして辺りを見渡す。
狭い部屋でベッドが一つある。
やけに乾燥していて、気持ち悪いくらい暖かい。
「舐めてんのか! てめえ!」
目の前に大きな男が立っていた。
「ひい!」
と美優は身体を引いた。
男は体中に刺青の入った、みるからにヤクザ者という感じの男だったからだ。
その上、男は全裸で美優の目の前に立っていた。
「金ぇ稼ぎに来たんだろうが!」
と怒鳴られて、美優はがたがたと震えた。
壁際に身体を寄せて震える。その震える身体は薄く透き通った肌着を一枚羽織っているだけだった。
全裸の男は美優のすぐ側でしゃがみ込んで、
「なあ? 妹にシャブ、喰らわしてやりてえんだろ?」
と言った。
「え……え?」
「十五でシャブ中とはなぁ。へっへっへ」
「だからな? 一生懸命働いて、な? 妹に買ってやんな。な?」
脳裏に浮かんだのはやせ細り、骸骨のようになった妹の姿。
ロリコンの継父に弄ばれ、精神に異常を来した妹は中学生になると家を飛び出し徘徊するようになった。それまでに継父の子供を三回ほど堕ろし、深夜の街で出会った男の部屋に転がり込み、数千円の金で身体を開く事に何の抵抗もない女になっていた。
美優も十五歳になった時に継父に金で売られた。
気持ちの悪い男達に何日も監禁されて犯された悪夢が蘇る。アニメのコスプレの服を何着も着せられ、写真、動画に撮られながら何人もの男に陵辱されたのだ。みゆたん、みゆたん、という荒い息の声が今でも脳裏に焼き付いている。
そして美優も妹同様、諦めてしまったのだった。
堕ちていくのは簡単だ。
誰かに相談するという知恵もなく、ただ人の言いなりになっていれば簡単だった。
男は再び立ち上がり、美優の頭を掴んだ。
「どうした? いつもみたいにやってくれよ」
無理矢理に顔を上に向けられ、目の目には勃起した男のモノがある。
「妹が薬が欲しいって泣いてるぜ?」
ガリガリの骸骨のような妹ではもう身体を買ってくれる男さえいない。
身体すら売れない妹には金もなく、当然、薬も手に入らない。
気が狂ったように部屋の中で暴れて、血の出る爪で壁をがりがりとひっかくだけだ。
そんな狂った人間でも妹は妹だった。
見捨てられない。妹の薬代を稼ぐ為に美優は毎晩、身体を売るのだった。
妹をそんなふうにしてしまった罪悪感が美優にはあった。
まだ小学生の妹を生け贄にしてしまった。
今、自分がこうやって身体を売って金を稼ぐのが妹への贖罪だ。
いつか同級生が言った言葉が蘇る。
「寝てる間に殺しちゃえば?」
確かにそうすればよかった。
何も聞こえないふりをしていた自分が憎すぎる。
死んでしまいたいと思いながらも、妹を残して逝けない。
薬物中毒の妹もそう長くないだろう。
だから薬物から更生させようという気持ちもなかった。
妹が欲しがるだけ与えて、そして早く死んでしまえばいい。
その時はお姉ちゃんも一緒に一緒に逝くからね。
美優は男に乱暴に身体を引きずり起こされて、身体を固くした。
いつもの事だ。暴力的に嬲られる事には慣れている。
ぎゅっと目を瞑っているうちに終わる。
「クソアマが!」
男はいつもよりも機嫌が悪かったようだ。
顔面を酷く殴られて、美優は息が詰まった。
無意識に身体を庇い、身体を守るようにぎゅっと手足を縮こまらせた。
その態度に男はますます逆上する。
小さな美優の頭くらいの拳で美優の顔を殴り続けた。
(助けて……助けて……)
美優は身体を縮めて、そう呟くだけだった。
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