雫2号…将来の夢③

大抵の事は

忘れてしまうものだね。


生まれた時

誰もが喜んでくれた事

優しく見守られて育った事


悔しくて、握りしめた拳

悲しくて、震えた唇

嬉しくて、拭えど溢れた涙


希望と夢と可能性を

両手にしっかり握って

この世に生まれ落ちたと

いうのに…


砂時計の砂がひと粒ひと粒

滑り落ちて、

時を刻むのと同じ様に


落として

落とし続けて、

落とさなきゃ、進めなかった


歩くのに精一杯で

落とした事さえ

気付かなかった


ふっ

と、振り返ったら、

歩いてきた道が

果てしない砂丘になっていた


風が吹いて、その足跡さえ

消そうとしている


その刹那


耳の後ろだ

そうだ、思い出した…

一度だけ、

一生に一度だけ

気がかりな選択を

過去に戻って選び直す事が出来る。


そのボタンを耳の後ろに

付けてくれたんだ。


どうして、

忘れていたんだろう。


早くに思い出していれば

優しい主人ともう少し、

一緒にいることが

出来たんじゃないか…


悪性腫瘍の早期発見が

できたんじゃないか…


しかし、

選択肢を選び直してみる事は

過去を変える、ではない。


そして、

このオプションがある事を

思い出せない雫が殆どで、

とても稀な事なのだ。



そして…

コレはまた、

かなり厳しい選択肢だ


…とても気になるのは、

とても悔しい後悔は…


長年、

しまい込んだ熱い想い


それは、

それは…

スパイになる事


お父さん

ゴメンなさい…


どうしても確認したい

あそこで、

アメリカ留学に行けていたら


そこから、

アジア系だけど

スパイになっていたか…

子供の頃の訓練は

役に立ったのか


本当に有能でセクシーな

スパイになれたか


とても気になる

死ぬに死ねない

ってか、気になって眠れない

てか、

わくわくなんだけど…



まだまだ、死ななさそうだし…

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