ハイライトエレベーター

mayopuro

ハイライトエレベーター

今朝のケイタは酷く興奮していた。

「なあ!見たか今朝のアサナンデショ!」

「うん、見た見た!あのエレベーターだよね?行きたいな〜・・」


僕は大学2年生。ケイタは高校からの同級生だ。

『誕生日が一緒』というなんて事ないキッカケから仲良くなって、今ではすっかり親友だ。

そんな親友と同じ大学で過ごす毎日は、僕にとって幸せでしかない。


誕生日が近づいてきた僕たちの最近は

『10代最後の日をどうするか』

という話題に支配されている。

しかし特に何も決まらないまま、

とうとう明日、僕たちは二十歳になる。


そんな中、今朝のアサナンデショは謀ったかのように、僕たちへメガトン級の提案を打ち出した。


それが『ハイライトエレベーター』だ。


リポーターによると

乗った人の人生の名場面がホログラムとして現れる夢のエレベーター で、

1Fが1歳、2Fが2歳・・といった具合に階数と歳が対応しているんだそうな。

そして一番の見所は何と言っても『未来の階もある』という所だ。


どんな仕組みかは分からないが、とにかく見てみたい。

これからの人生、希望と不安が入り混じった僕たちは、

10代最後の日を『ハイライトエレベーター』に捧げる事とした。






バスに乗って現地に到着。入口は地下1Fだ。

チケットを買って、列に並ぶ。


壁にある案内板には『見れる未来は50歳までです。』とある。

50Fでビルの高さが建築法上の限界に到達したためらしい。なんともアナログな理由だ。

そういった上限があるからか、列に並ぶ姿は若者が多い。

思い思いの未来に想いを馳せ、皆一様に輝いていた。




「次の方、ご案内いたしまーす」

いよいよケイタの番だ。

「じゃあ俺、行ってくるから!」

「うん、行ってらっしゃい」




戻ってきたケイタは少し大人に見えた。

「俺、結局30歳までで見るのやめたよ。やっぱり未来は分からないほうが楽しいからな!」

「そうか・・それもいいかもね。」

僕は素直にそう思った。

「次の方、ご案内いたしまーす」

いよいよ僕の番だ。


エレベーターに乗り込んだ僕は1F、2Fと、人生を歩んでいく。

そして「いよいよここから未来だ。」と20Fのボタンを押した。

ボタンが、光らない。

21F、22F・・光らない。

おかしいな、未来が見えるはずじゃ・・・。

その時

『ミシ・・ミシミシ・・・』

聞いた事の無い音で、エレベーターが軋み始めた。


『バキッ!ゴゴゴゴゴ・・!!!』


さっき見たホログラムが、リアルな景色になって逆順で見えていく。

落下するエレベーターの中で、僕は全てを理解した。

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