ココ村の少女ラナ

桜庭ミオ

第1話 お祭りの日の朝

 光の月(4月)の3回目の、光の曜日。

 今日は、太陽の女神さまに、感謝をささげるお祭りがある。


 わたしは見たことないんだけど、太陽の女神さまは金色の長い髪と、目を持った――美しい女性の姿をしてるみたいんなんだー。


 朝から、とっても晴れている。窓から見えた空が、とってもキレイで、感動した。


 窓にうつるわたしは、深緑色のワンピースを着ている。

 髪の毛と、目の色が青いのは、水の魔力を持ってるからだ。


 お祭りなので、薬草つみはしないけど、水やりがあるので、外に出る。


 小鳥たちの声が聞こえる。おだやかな風が吹いて、花の甘い香りに、いやされる。

 花の周りで、ハチがブンブン、蝶々がひらひら飛んでいて、楽しそうだ。



 今は、雨季。


 わたしが住んでいるシュシュ王国の1年は、12か月だ。

 季節は、春と、夏と、秋と、冬がある。


 ゆきつき(1月)と、こおりの月(2月)が冬で、乾季。


 大地だいちの月(3月)と、ひかりの月(4月)と、はなの月(5月)と、みずの月(6月)が春で、雨季。


 かみなりの月(7月)と、ほのおの月(8月)が夏で、雨季。


 かぜの月(9月)と、果実かじつの月(10月)と、おとの月(11月)が秋で、乾季。


 よるの月(12月)は冬で、乾季。


 雨季というのは、雨が多い季節のこと。

 乾季というのは、雨が少ない季節のこと。


 春から秋は、太陽の女神さまが起きていて、植物が育ちやすいけど、果実の月(10月)から冬にかけて、花が少なくなる。


 冬は、太陽の女神さまが眠り、夜の神さまが目を覚ますといわれている。

 太陽の女神さまが、眠ったからといって、朝がこないということはない。


 冬に成長して、花を咲かせる花だってあるし、冬に、食べられるようになる野菜もあるんだ。


 1か月は、30日で、曜日は7つ。

 炎の曜日、水の曜日、大地の曜日、風の曜日、雷の曜日、氷の曜日、光の曜日だ。


 氷の曜日と、光の曜日は、田舎では、お店がしまっていることが多い。


 光の曜日に、太陽の女神の神殿に行き、太陽の女神さまの像に向かって、おいのりをささげる人たちもいる。神官さまのありがたいお話もある。



 庭の木や花や、畑にある野菜や薬草に、魔法でお水をあげていたら、妖精たちと、小人たちがやってきた。


「おはよう!」


 わたしが笑顔であいさつをすると、妖精たちと、小人たちが、ニコニコ笑って、「ラナ、おはよう!」って、返してくれる。


 妖精は、赤、青、緑、空色の目を持つ。髪の毛はピンク色。

 魔力を持っているので、魔法が使える。


 赤い目の妖精は、炎の魔法を使う。青い目の妖精は、水の魔法を使う。緑色の目の妖精は、大地の魔法を使う。空色の目の妖精は、風の魔法を使う。


 小人は、こげ茶色の髪と目。魔法は使わない。


「きょうはおまつりだねっ!」


 ピンク色の髪と、空色の目を持つ妖精が、銀色の羽で飛びながら、楽しそうに言って、わたしの肩に乗る。

 わたしは妖精の頭を指でなでると、ほほ笑んだ。


「そうだね。お祭りだね。毎年あるのに、ドキドキするよ。楽しみだけどね」


「おまつりのおかしも、たべたいけど、ラナのまほうのおみずも、スキ! おいしいし、げんきになるの!」


「ありがとう」


 わたしが笑顔で、魔法のお水をまくと、妖精たちと、小人たちが、キャーキャー! ワーワー! よろこんだ。

 そして、わたしが出したお水をおいしそうに飲んでくれた。



 しゃべらないけど、精霊たちもいる。

 赤、青、緑、そして、空色の精霊たちが、ふわふわ、ふわふわ、浮かんでる。光っているので、とてもキレイだ。


 赤いのが炎の精霊。青いのが水の精霊。緑なのが大地の精霊。空色のは風の精霊。

 ここにはいないけど、雷の精霊は黄色で、氷の精霊は銀色だ。光の精霊は金色で、闇の精霊は黒。


 わたしには、昔から精霊が見えるけど、ほとんどの人には、見えないらしい。

 ココ村の中で、精霊が見えるのは、わたしだけ。


 昔、わたしが精霊を見ることができると知った神官さまが、とてもうれしそうな顔をしながら、『精霊が見えるということは、太陽の女神さまに、とても、愛されているということなのだと思います。それはとても、すばらしいことだと、私は思いますよ』と、言ってくれた。


 精霊がいるということは、多くの人に、知られていることだけど、見える人が少ないし、精霊はしゃべらないので、よくわからないだといわれている。


 なので、本にも、精霊のことは、あまり書いてない。


 太陽の女神さまと、妖精たちは、精霊と話すことができるって、本に書いてあったんだ。

 クレハおばあちゃんが、本に書いてあったとしても、すべてが正しいジョウホウなのかはわからないって、昔、言ってたことがある。


 だから、妖精たちに、精霊と話せるか、聞いてみたんだけど、『はなせるー!』って、みんな言ってたから、本当なんだと思う。



 そうそう。今、思い出したんだけど、わたしの名前――ラナは、古い言葉で、光という意味なのだと、昔、神官さまがおしえてくれた。


 そのあと、クレハおばあちゃんに聞いてみたら、わたしが、お母さんのお腹の中にいた時のことをおしえてくれたんだ。


 昔、お母さんが、太陽の女神さまが現れたという、森の泉に、お父さんといっしょに、行ったんだって。


 その日の夜、お母さんが、太陽の女神さまと、キレイな森で出会う、ふしぎな夢を見たのだそうだ。

 夢の中で、太陽の女神さまが、お母さんのお腹にふれて、『ラナ』と、話しかけたのをおぼえていたらしい。


 そのあと、わたしが、お母さんのお腹の中にいることが、わかったらしくて、わたしの名前が、ラナになったんだって。

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