第十一話 フリードのお話に解決への筋道があるのでしょうか?

 私の話し方、まどろっこしかったですよね。そこは反省しております。

 結論をどんどん話していくべきなのでしょうが、どうしても過程を忘れたくないと思ってしまうんですよ。そこで取りこぼされるものもあると思いますから。

「要するに」で結論を出すことが苦手なんです。


 実際、話をしていて、皆さん、いろいろ言ってくださるじゃないですか。それがどれだけ力になっていることでしょう。それに疑問点とか不明点とかを言っていただけると、それが突破口になって、この事態の解決へと導いてくれるのですよ。


 それで、フリードのお話についてですが、もう、これまで話した内容で答えは出ているものと思っています。

 だから、フリードの物語を辿るのはダメ押しというか、ちょっとした補足のようなものです。それを理解したうえで聞いていただければ幸いですね。


 まず、見るべきは敵の数です。フリードさんに対して、寄見と軍人たち、ミュータント、仲間のはずの裏切りものと、3陣営の敵がいます。これは最大数と言っていいでしょうね。

 軍人たちは味方でもありますが、常に裏切る危険をはらんでいるところが、単なる敵よりも厄介といえます。

 一度にここまでの敵を相手にしているのはフリードだけです。


 そう思いたいですよね。でも、実はそうではありません。

 え? なんでだって? ふむふむ、疑問に思ってしまいますか。ちょっと不親切な物言いだったかもしれませんね。


 伝吉でんきちさんの敵は辺見を始めとするプレイヤーたち。そう思いますか?

 でも、あなたをデスゲームに送り込んだのは寄見だったり、ほかの組長たちだったり、あるいは組員たちだったり、あるいは自分自身がメンツを守ろうとする気持ちだったりしますよね。これらはあなたの味方ですか? 敵ですか?


 降屋ふれやさん、あなたの敵は辺見瑠璃へんみるりだけでした。会社やパーティ総出で、一丸となって戦った。それはそれで間違いではないでしょう。

 でも、その戦いにあなたを追いやり、同僚たちを死に至らしめたのは誰ですか。戦いのお膳立てをした寄見ですよね。その戦いに行かなければならない理由を作ったのは、会社であり、ゲームで遊ぶプレイヤーたちです。

 あなたの同僚を殺したのは誰ですか? 果たして、その原因を作ったのは辺見ただ一人だといえるでしょうか。私はそうは言いきれないと考えています。


 ほかの例を挙げる必要はありますでしょうか。

 敵というものは、その時に相対しているものばかりとは限りません。戦っていると思わない相手がいつの間にか敵になっていることもあるのです。

 うん? 詭弁だというのですか? ふふ、まあ、そういう意見もあるかもしれません。


 もう少しフリードの話をしましょう。

 あなたの戦った辺見ですが、めちゃくちゃでしたよね。巨大で、軟体で、触手を持ち、再生する。果たして、そんな生物が存在するものでしょうか。

 はいはい、確かにほかの方の辺見も大概でしたね。


 透瓏とおるの戦った辺見は人間の中に入っていたんでしたっけ。それでいて人間を骨ごとしゃぶると。

 露木つゆきさんのはバラバラに分解されても元通りの姿に戻って追ってくるんですよね。確かに大概ですね。

 殺しても死ななかったり、ゲーム越しに現実的な損壊ダメージを追わせてきたり、皆さんのお話での辺見はどれも不可思議な存在です。


 そんな生物、いると思いますか? ありえないですよね。そう、存在しないですよ。辺見なんてものは。

 あなたたちの中に誰か辺見を殺した人物がいる。現実のね。当人はそのことを恐れているのでしょう。普通の人は殺人を犯して平然としていることなんてできませんから。

 その罪悪感や恐怖を紛らわすために、辺見を恐ろしい怪物に仕立てようとしている人物がいるんです。


 言ってもいいですか?


 あなたたちの話したことはすべて妄言です。虚飾です。偽りです。

 現実に起こった死に至る出来事。それはデスゲームであると例えるに足るほどのおぞましいものだったのでしょう。それに虚飾を交えることで、あなたたちの物語は生まれたんじゃないですか。


 伝吉さん、喰われ続けて、あたなたはどこにいるんですか? ここにいるでしょう。

 降屋さん、自分の犯罪をごまかして、それでいい思いができると思っているんですか? あなたの罪は消えません。

 透瓏さん、他人の出来事を語って何がしたいんですか? そんなことであなたの現実は変わりません。

 露木さん、死後の世界に何を夢見ているんですか? あなたは現実を生きています。

 フリード、あなたの存在は何もかもが偽りでしかありません。


 もう言ってしまいましょう。


 デスゲームなんて、本当にあったりはしないのです。

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