フリード・神宮・シーヴルズの語り その二

第六話 変化できるものが生き残るのだ(The emergence of an evolutionary human race.)

 突如、頭が爆発して死んだのは、グーニーだった。


 グーニーは猫好きで知られていた。

 私は彼と親しかったわけではないが、風のうわさで聞くところによると、基地内で隠れて猫を飼い始めたという。しかも、あろうことか繁殖させてしまい、基地内に猫が大量にあふれた。ゴミ箱は荒され、いたるところに糞をする。

 しばらくして、猫の駆除が行われたが、あれは後味の悪い事件だった。まさか、グーニーの犯した罪とはこのことだったのだろうか。


 それはともかく、私たちの目下の問題は、突如として出現したミュータントたちだ。いや、目の前にいる、色白の者たちがミュータントであるかはまだ断言できないが、暫定的にミュータントと呼ぶことにしよう。

 グーニーの頭を弾け飛ばしたのはこいつらなのだ。違うかもしれないが、いちいち確認していては、次に吹っ飛ぶのは自分の頭かもしれない。


 しかし、私には武器がない。私の分の箱から出てきたものは、少なくとも今は役に立ちそうになかった。

 何か武器はないか。私は周囲を見渡す。そして、グーニーの死体に気づいた。グーニーは箱から取り出したものを手に持ったまま倒れている。

 これだ! 私は彼の持つ金属でできた筒状のものをひったくった。


 BEEEEEEM


 近くで奇妙な音が鳴った。横を見ると、ケリーが光線銃を撃ち、ミュータントたちを薙ぎ払っていた。ビーム兵器! しかもハンドサイズである。実用化されていたのか。

 さらに背後から、巨大な人影が通り過ぎる。それはパワードスーツのようだった。こんな短時間で装着できるものが開発されているとは、驚きだ。


 HAHAHAHAHAHAHA


 その笑い声から、パワードスーツの中身はデビッドだということがわかる。デビッドはノシノシと前線へと進み、その剛腕でミュータントたちを蹴散らしていく。

 二つの超兵器の登場により、戦いの趨勢は決まったかに思われた。だが、そう甘くはいかない。


 ミュータントの一人が突如巨大化し、デビッドとがっぷり四つに組みあった。両者互いに引かない。どうやら力は互角のようだった。

 しかし、そこに別のミュータントが現れ、両手を開いて、何やら念を込める。次の瞬間、デビッドは倒れ込んで、動かなくなった。パワードスーツに入っているためわからないが、グーニーのように頭を破裂させられたのだろう。


 デビッドのこともよく知っているわけではない。だが、彼と相部屋の者に聞いた話によると、イビキがうるさいらしい。そのせいで寝不足に陥るものも一人や二人ではなく、たびたび問題になっているという。

 彼はそのために命を落としたのだろうか。それ以外の私の知らない理由によるものかもしれないが、それを知るすべはなかった。


 こうなっては仕方ない。一か八か、手に持った円筒状の金属器の性能とやらを確かめるしかないだろう。私は覚悟を決め、駆け出そうとした。


 だが、そのタイミングで、空中から何かが飛来する。それはハイドだった。その背中に背負ったバックパックのようなものから、光の翼のようなものが噴出されており、それによって飛行しているようだ。

 ハイドは飛び回りつつも、ミュータントたちを光の翼で焼き殺していく。さらに、ケリーの銃撃もあり、ようやく戦いは終わった。ミュータントは全滅したのだ。


 オスプレイから降下したのは6人だったが、瞬く間に3人になってしまった。

 残った3人は同じ場所に集まってくる。そして、ケリーが怪訝な表情で私を見てきた。


「ジーク、あんた、何もやらなかったよな」


 まずい。

 この決死の作戦デスゲームは機密物資の回収だけが勝利条件ではない。1人になった時点でも勝利となる。ヘイトを重ねすぎると、味方殺しを正当化させる理由になりかねない。

 私は大きくかぶりを振って、それを否定した。


「NONNONNON! 私は必要があって守りに入っていたんだ。聞いてくれ。この作戦ゲームを勝つための鍵を私は握っている」

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