露木新の語り その二

第六話 ふーん、あなたの切り札は何なのかしら?

死者たちによる遊戯デスゲーム……? 何それ?」


 耳慣れない言葉に私は戸惑った。

 四谷さんの家に来てからというもの、おかしなことばかり起こってる。四谷さんは目玉だけで動いて喋るよくわからない状態になっているし、寄見よりみさんは車椅子を破壊され、足を怪我してしまった。家の周りは妖怪みたいな、見慣れない化け物がたくさんいる。


「つ、露木つゆき、元凶は辺見瑠璃へんみるりだ……。あいつを見つけ出して、殺すんだ。それが、このデスゲームの勝利条件……。

 奴は青紫の髪に露出度の高い服装をした中年女性だ……」


 寄見さんは怪我に苦しみながらも説明する。やたらな説明セリフに思えるかもしれないけど、これは要約したものなので。

 手当はしなくていいのかな。そうも思うけれど、まあ、いいか。怪我の手当てなんて、あまりやったことないし。面倒だし。


「ふーん、そのゲームやる気なの? やりたいなら止めないけど」


 目玉の四谷さんが甲高い声で言葉を発する。


「ゲームなの? ルールとか、あるわけ?」


 やるとかやらないとか言われても、よくわからない。けど、こんな状況は辺見とやらをどうにかしないと、元に戻らないんじゃないの。やるしかないじゃん。

 私の言葉に四谷さんの声が返ってくる。


「ルールは私も詳しくないけど、使えるアイテムなら渡せる。おふだを三枚まで持てて、この家にある道具なら、そのお札に読み込んで持ってくことができるのよ。で、必要な時に出せばいいってわけ」


 お、なんかゲームっぽくなってきたかも。少しだけワクワクする。

 私は失礼して、家の中を見させてもらった。そこには、想像以上に奇妙な珍品奇品ばかりが置かれている。


「これなんか、どう? 妖怪を一撃で殺せる槍だけど? こっちは霊力を弾丸に変えて撃ち出す拳銃。これもお勧めよ。あとは腕を鬼と一体化させる注射器とかね」


 四谷さんが解説してくれた。


「この腕時計は妖怪を洗脳することができるの。その連絡帳は妖怪の名前がわかるものね。あと、この下駄とかね。お天気占いをするとき、あさっての方向に蹴っ飛ばしても遠隔操作リモートで戻ってきてくれるから、お勧めよ。

 その杖は炎が出てくるんだったかなあ。それと、この数珠は手にはめると亜空間とつながって、何でも吸い込めるようになるよ。

 あ、えと、そのドスはなんだったっけ。実体のない妖怪でも切れるとか、そういうやつだったような……」


 いろいろと見て回ったところ、結構、面白いものがあった。

 私は役に立ちそうなものを札に読み込ませていく。


「まずは、これね。匂いカタマリン。匂いを可視化する効果があるらしいから、まずはこれで辺見を見つけようと思う」


 私はスプレー缶をお札に読み込ませた。


「次は、これかなあ。パチンコよね。遊技機じゃないよ。玉を撃って獲物を仕留める狩猟具のほうね。スリングともいうのかな。石だったらいくらでも拾えるだろうし、拳銃とかより、こっちのが使い勝手よさそう」


 そう言うと、パチンコを読み込んでいく。


「あとは、やっぱ移動手段よね。この羽の生えたローラースケートみたいなの、何? ああ、空を歩ける靴なんだ。いいじゃん。これにしよ」


 またも、お札に読み込んでいった。


「寄見さん、じゃあ、行ってくるね」


 玄関から出ていく。寄見さんは苦しそうにうめき声を上げるだけだった。


 まずは、最初のお札を開放する。スプレー缶が出てきた。それを吹き付けると、玄関から人型のものが移動しているのがわかる。これが辺見だとかいう人の痕跡なんだろうか。

 それを追いかけて先へ進んでいった。幸いにも、というか、そこまで出現頻度は高くないというべきなのか、妖怪に遭うことはない。


 そして、青紫の人影が歩いているのを見つけたのだった。

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