第四話 お前が殺したんだ、ギャハハハハハ
「おい、ふざけてんのか! これは何だ、説明しろ!」
俺は声に対して、怒鳴り声を送る。だが、声は一方的に聞こえてくるだけで、俺の言葉に返事をする気配はない。
これはどうしたことだ? 何の悪ふざけだ? まさかドッキリなのだろうか。
しかし、それにしては不可解だった。
なぜ、俺は急に建物の中に入りこんだんだ。繁華街の真っただ中で人ごみに揉まれていたはずだ。
どこかで幻覚剤でも飲まされたのか? それにしては意識がはっきりしているし、断絶された感覚もない。
どれだけ考えても答えは出なさそうだ。答えが出ないものに無理やり答えを出そうとしても意味がない。建設的なことだけ考えよう。
俺は周囲を見渡す。薄暗い通路だった。廊下のようであり、俺はその奥へ誘われるように進んでいた。
窓はあるが、暗がりだけが広がっていて、外の様子はわからない。目を凝らすと、青だか紫だかのうっすらとした光がかろうじて見えるような気がする。
なぜだ? なぜ俺は歩いている? 何者かに操られているようで、ゾッとする。
後ろに振り向き、そのまま進んでいたのとは逆方向に歩き始めた。誰かはわからないが、よくわからん奴のいいなりになるのは我慢がならない。
逆方向に進み始めるが、やはり廊下が延々と続いた。妙に入り組んでおり、時折段差があり、緩やかな曲がりもある。僅かずつだが、自分の進んでいる方向も高さもわからなくなっていた。
そんな中、急に曲がり角に行き当たる。恐る恐る、その先に何があるかを覗き込んだ。
急に目が合った。人がいたのだ。
紫に近い青い色に髪を染めた、中年の女性。服装は露出度の高いぴちぴちのドレスだった。
そんな女が微動だにせず、曲がり角の隅で息をひそめて立っていたのだ。
「う、うわあああああああ」
俺は思わず叫び声を上げていた。急に人がいるだけでも驚くべきことだというのに、異常なほどに不気味な女だったのだ。うろたえない方が無理というものだろう。
俺の上げた声でようやく俺を認識したかのように、女は表情を変える。俺を見ながらニタリと笑っていた。その笑顔のまま、俺にのっそりのっそりと近づいてきた。
なんなんだ、なんなんだ、なんなんだ。
俺はパニックに陥った。思わず、ジャケットの胸ポケットに手が伸び、
その拳銃を女に向けると、セーフティを外した。練習場で拳銃を撃った経験くらいはある。
「おい、来るな、止まれ。止まらないと撃つぞ」
俺の声は震えあがり、上ずったものだった。それでも相手には聞こえたはずだ。
だというのに、女は止まるどころか、少しずつ動きが速くなり、俺に近づいてくる。
「く、来るな!」
ダァン
俺は引き金を引いてしまった。至近距離まで近づいてきていた女の胸に命中し、左胸からおびただしい血が流れ始めている。そして、女はそのまま倒れた。
畜生! どうして、こんな時にドンピシャで命中してしまうんだ。
い、いや、この女はデスゲームがどうたらという言葉を真に受けて、俺を殺そうとしたのだろう。だから、これは正当防衛だ。俺が悪いのではない。
俺は自問自答を繰り返し、自分自身の正当性を確認する。だが、これ以上この場にはいられない。俺は駆けだした。
どれだけ走っただろうか。目の前に扉があった。俺は荒くなった呼吸を落ち着かせ、深呼吸する。
そして、扉を開いた。
ギィイイイイ
扉が開く音が
そこは広間だった。俺が広間に入ると、同じように入ってくる者たちがいる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます