第六話 老人の話もちゃんと聞かなきゃいけないよ
おじいさんの語りが始まった。
今回の話し合いは誰があのおばさんを殺したかって話のはずなんだけど、おじいさんの話は随分と見当はずれな方へずれていく。
この感覚、ちょっと懐かしい。小学校の頃の校長先生がそうだった。話しているうちに、どんどんテーマから話がずれて、全然関係ない話を始めるんだ。
そうはいっても、話を聞かないわけにもいかない。
おじいさんの話は奇妙で恐ろしくて、それでいて今の状況において大事な話に思えた。
おじいさんはヤクザの組長だという。その話は妙に生々しく、血生臭い。
デザイナーやイラストレーターは自分たちの仕事のことをヤクザな稼業なんて言うこともあるけど、実際のヤクザとは違う。でも、おじいさんは実際に暴力と犯罪の世界を生きてきた人なんだとわかった。そのことが恐ろしかった。
それよりも大事なことは、おじいさんがデスゲームに行き、帰ってきた経験があるということだ。
私は自分がどうやってここに来たのか、いまいちわかっていない。ラジオ局に乗り込んだことは覚えているが、ただそれだけだ。
だというのに、おじいさんはどうやって来て、どう帰ればいいかがわかるという。私は耳をそばだてた。
でも、期待外れだった。霊がどうとかわけのわからないことを言っている。私がここに来たことが心霊現象でないことだけは確かだ。私には霊感なんてないし。
そう思っていると、気になることを話し始めた。
私はその話を聞いてピンと来た。
通路で倒れていた死体、それがその辺見瑠璃だったのだ。
そのことに気づいてからは、もう気が気でなかった。おじいさんの話なんてまるで耳に入らない。ただ、自分が犯人だと疑われないかだけが気にかかった。
気がついたら、おじいさんの話は終わっていた。
何やら、おじいさんと弁護士のサングラス男が揉めており、その仲裁にウソつきの元ニュースキャスターが入っている。
まずい、このままでは話し合いについていけなくなってしまう。私は焦り、何かを発言しなくてはと気が逸った。
「あのですね、その辺見瑠璃さんっておばさんのこと、私も知っているんです」
自分の発言に私自身が驚いていた。
どうしよう、どうしよう、どうにかして辻褄を合わせないと。
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