【黒い御使いと白いカラス】 2月22日より。
【黒い御使いと白いカラス】
雪の降る季節、お昼ご飯を探しに白いカラスが森の上を飛んでいると。
もっと奥の、更に深い森から良い匂いが漂って来ました。
匂いを辿り森を飛んでいると、人間が倒れているのが見えました。
白いカラスは人間を食べた事はありませんが、今は寒い冬なので食事の選り好みは出来ません。
そして何より良い匂いに抗えなくなった白いカラスが近寄ると、突然胴体をガッチリと掴まれてしまいました。
「何だお前、俺をつつきに来たのか」
《だって、あんまりに良い匂いだから》
話す白いカラスに驚いた人間が手を離したので、近くの枝まで逃げました。
人間は追い掛けてきません、今度は仰向けに寝転がり、ただボーッとしています。
「何なんだ、何処なんだココは」
《迷子なのか、ココはサンタの居る村の近くだぞ、道案内してやろうか?》
「本当か?!頼む!」
人間が着いて来られるように、飛んでは枝へ止まり。
また飛んでは止まりを繰り返していると、人間にも村が見える場所まで辿り着きました。
《もう大丈夫だな良い匂いの人間、じゃあな》
村に入れば他の鳥に苛められてしまうので、白いカラスは再び森へ向かいました。
野鼠や、まだ枝に残る木の実を漁って数日が経った頃、また良い匂いがしました。
またあの人間が森へ迷い込んだと思い、匂いを辿ると、パンを紙袋いっぱいに抱えて歩いていました。
「白いカラス、お礼にパンを持って来たんだ。白いカラス、居ないのか?」
《何だ、迷ったんじゃ無かったのか》
「あぁ、お前のお陰で命拾いしたからお礼にと思ってな、焼き立てのパンを持って来たんだ」
《熱いのは嫌いだぞ》
「千切って冷ましてやるよ」
人間が出来立てのパンを千切り、ふーふーと息を吹きかけ冷ましてから、上空へと投げました。
良い匂いの人間のくれる良い匂いのパンに思わず飛び付くと、とても美味しく感じました。
《もっと》
「よし、もういっちょ」
人間は時折千切ったパンをそのまま食べたり、白いカラスにあげたりと一緒に食べていました。
《もうお腹いっぱいだ》
「じゃあコレはまた明日だな、じゃあまたな、白いカラス」
それから3日間、続けてお昼にお腹いっぱいパンを食べられました。
ですが、林に偵察に来ていた他の鳥にバレてしまい、真夜中に更に奥の森へと追いやられてしまいました。
それでも、人間は深い森まで来てくれて、パンをくれました。
そうして7日目の昼の事。
いつもの様にパンを食べていると、白いカラスは突然眠気に襲われてしまいました。
良く思い出してみると人間は、今日はパンを1口も食べていなかったのです。
《なんで》
「お前を食べる為だよ」
白いカラスは、人間が泣きながら笑っている様に見えたかと思うと、そのまま眠ってしまいました。
騒ぎに気付いた鳥達は、匂いのする人間を襲い始めます。
鳥達は白いカラスを人間から守る為に、白いカラスを村から追い出したのです。
白いカラスには鳥の言葉が分からないので、追い立てるしか無かったのです。
そしてとうとう、人間によって白いカラスが命を終える頃。
鳥達は悪い匂いの人間に呪いを掛けました。
それを知らぬまま薬を作り終えた人間は喜び、鳥達は悲しみました。
伝説通り、不老長寿の薬となった白いカラスは、もう目覚めません。
それ以来、鳥達は匂いのする人間を襲う様になりました。
呪いと薬は彼の血族へと引き継がれ、匂いのする人間の子供、その子供の子供へと引き継がれ。
そして薬が途切れた頃、再び白いカラスが何処かで生まれるのです。
おしまい。
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