武器
【今日のテンプレを報告するわ。
『重い荷物を持とうとした女性がぎっくり腰になる』以上だわ】
テンちゃんから今日のお告げを聞く。
「ぎっくり腰かー大変だなぁ。
あれ本当に動けなくなるらしいんだよねー、俺も気をつけよう!
よし、福ちゃん仕事をしにギルドに行こうか!」
「ワッ」
頭の上にいる福ちゃんから返事をもらい、ギルドに向かった。
ギルドについたらまたミーナさんに呼ばれていたのでギルドマスター室に入る。
何故か商会で一緒に働いていたカリンちゃんがいた。
「トム、今日呼んだのは依頼を受けてもらいたいからだ」
「依頼ですか?」
「実は商会から特殊な依頼を受けてな、それをやってもらいたい。
商会の方、依頼書をそいつに渡してくれ」
「わかりました。
トム君これが商会からの依頼」
カリンちゃんから依頼書をもらい内容を確認する。
街にある武器屋の店員となり、武器の説明や陳列、購入の意思のあるお客様と金銭による取引をして欲しい。
そんな内容だった。
「あれ?武器屋だってことはステフさんがいるよね。
カリンちゃん、もしかして冒険者が増えたから人が足らなくなったの?
てかそもそもこの依頼内容って、斡旋とかしている商会が対応するのが普通だよね?」
「うん、本来なら商会が対応するんだけど、ちょうど斡旋できる人がいないらしく、副支店長がギルドに依頼することを決めたの。
あと人が足らないんじゃなくて、ステフさんがぎっくり腰になって動けなくなっちゃって今、武器屋に店員がいない状況なの」
ぎっくり腰の言葉を聞いた時、少し体がびくってなった。
「なるほど。
だから呼ばれたんですね。
商会の仕事でモグラさんと面識もあるし、商会の受付の経験で金銭のやり取りも慣れている。
つまり適任者が冒険者ではなく、私ということですね」
「そういうことだトム、武器屋がうまく回らないと冒険者たちが困る。
つまり冒険者ギルドも困るってことだ。
期間はぎっくり腰の店員が戻るまでだ。
今日から武器屋で働いてくれ」
「わかりました。
カリンちゃん、依頼は俺が受けるから安心してってクルル兄に言っといて、どうせ俺が行くことを計算して冒険者ギルドに依頼してきたんだと思うし。
ギルドマスター、もう武器屋は開いてる時間なので今から向かいます。
カリンちゃんもまたね」
ギルドマスターに頭を下げ、カリンちゃんに挨拶をしてから部屋を出て、ギルドの制服のまま武器屋に走って向かった。
「トム坊来てくれてありがとうな。
お前なら信頼して仕事を任せられる」
「信頼して下さりありがとうございます。
一応商会で扱っていた武器の知識は入ってますので、対応できると思います。
私が知らなそうな特殊な武器はありますか?」
「いや置いてあるのは一般的なものばかりだから、
おそらくトム坊でも説明可能だろう」
「それはよかったです。
ところでモグラさん、なんかやつれてません?」
目に隈をつけてやつれてるモグラさんが気になりすぎて聞いてみた。
「いや仕事が忙しすぎてな。
新人冒険者は金を持ってないから安いやつしか買わん、そして扱いも下手くそだからすぐ武器を壊す。
だから作っても作っても終わらない。
さっき安い武器は完売した、店を開けた直後だぞ。
今から今日ぶんと明日のぶんを作らなきゃならん、しかもステフが来れないとわかって絶望しとったんだよ。
本当にトム坊が来てくれてよかった」
「大変ですね。
俺に何かできることがあれば言ってください」
「ありがとうトム坊、とりあえず店番は任せた。
儂は地獄に向かう」
「お任せください!」
俺の言葉を聞いたモグラさんは地獄というなの鍛冶場に向かっていった。
「さて、とりあえず帳簿でも見てこの武器屋の値段設定を勉強しようかな。
ん?なんだこれ?これけっこう前に注文されているやつじゃん。
モグラさん忘れているのかな?
後で確認してみよう」
帳簿などが置いてある机の上に紙の束で見えづらくなっていた、オーダーメイドの注文書を見た。
今年の春に注文されている、今は夏なのでけっこう前だ。
暗くなる頃モグラさんが鍛冶場から出てきた、後ろに一度だけ見たことがある人を連れて。
「モグラさんお疲れ様です!
仕事は終わったんですか?」
「いや休憩だ休憩。
また夜通し作らんと明日のぶんの数が足りん」
「夜通しですか、あまり無理はしないでくださいね。
ところでモグラさんと一緒に出てきた人はだれですか?
一度大食い大会で見ましたけどここでは初めて見ました」
俺とモグラさんのいるところではなく、店の前で体を伸ばしている大食い大会優勝者の赤い髪をツインテールにした少女を指差し聞いてみた。
「トム坊が商会をやめた後に、うちで正式に働くことになった姪のラッコだ。
ラッコ!ちょっと来い」
「どうしたのモグラおじさん。
僕に何か用事?」
モグラさんに呼ばれたのでラッコと呼ばれる少女がこっちに来た。
「ラッコ、こいつはトムって名前の冒険者ギルドの職員だ。
ステフの代わりに店番をやってもらっている。
ちなみにラッコの初めて作った棍棒セットを買ったやつだ」
「え!僕の棍棒セットを買ってくれた人!
ありがとう!ありがとう!あれで自信がついて本格的に武器を作ることにしたんだよ!」
「いやこちらこそ棍棒セットに助けられています、作ってくれてありがとうございます」
「うわー!すごい嬉しいこと言ってくれる!」
少女は嬉しさのあまり俺の両手を掴みブンブンと上下に振っていたが、お礼を言うと手を離しバンザイをした。
「気に入ったよ!名前はたしかトムだったよね、じゃあトムムって呼ぶね!
僕のことはラッココって呼んで!
さん付けもられちゃん付けもいらないからね!」
不思議なあだ名がついた。
「ではこれからよろしくお願いしますラッココ」
「うんよろしくねトムム!」
握手をしてお互いのあだ名を言った。
「トム坊暗くなったから店を閉める、今日のお前の仕事は終わりだ。
また明日も頼む」
「了解しました。
あとモグラさんこれをみてください」
忘れされているであろう注文書を見せた。
「あーこれか、別に忘れているわけじゃねーんだ。これは特殊な武器で製作に時間がかかる。
勇者が冒険者になったって情報がこの街に入った頃に注文されたんだ。
つまり新人冒険者が使う武器の製作におわれて、注文されている武器を作る時間がないんだ、
大丈夫、注文者には許可をとってある」
まさかライトの冒険者登録がこんなところにまで影響をおよぼしているとは。
「俺の友人がご迷惑をかけてすいません」
「ん?トム坊は勇者と友達なのか?」
「はい。
地元が同じなのでよく遊んでましたし、今も手紙が送られてきます」
勇者として発表されたので、勇者のことを話しても良くなった。
「気にすんな、いつか冒険者ブームをおさまるだろう。その時に作ることにしている」
「でも待たされてるのは可哀想ですね。
何か、画期的なアイディアがだせればいいのですが、
あいにく鍛治に関してはど素人ですし思いつきません。
モグラさん何か俺にできることありませんか?」
流石に冒険者ブームがすぐにおさまるとは思えなかったので、何か力になれないかとモグラさんに聞いた。
「ねーな。いやトム坊ならなんか思いつくかもしんねーな。
よしトム坊!俺の仕事を見てなんかアイディアをだせ!
そしてこの生活から俺を救ってくれ!
行くぞ!ラッコ店じまいは任せた」
右腕を掴まれて、強引に鍛冶場に連れて行かれ武器を作る工程を見せられた。
作り方はシンプルで、商会から購入している製鉄されたインゴットを、熱で柔らかくしハンマーで形を整える。
整形された武器を今度は鉄のやすりのようなもので削っていき刃の部分を尖らせる。
「どうだトム坊、なんかいいアイディアでたか?」
「んーなんか頭にひっかかるんですが、今のところでてないですね」
「そうか、仕方ないな。
トム坊今日はもう遅いから儂の家に泊まっていけ。
儂らはこれから明け方まで武器を作る」
「モグラおじさん僕が案内するよ」
「ああ頼んだ」
モグラさんの横で同じように剣を作っていたラッココが案内してくれるようだ。
モグラさんの住居は武器屋の2階で、必要な物が最低限置いてあるような感じだった。
「トムム今日はこの部屋で寝て、この部屋が1番静かなんだ。
これが布団ね、じゃあ僕は仕事に戻るから」
「はいわかりました、お仕事頑張ってください」
「ありがと」
案内された部屋からラッココは出て行ったあと部屋の窓から音が鳴った。
「あっ福ちゃん」
窓を開けて福ちゃんを部屋の中に入れる。
そう福ちゃんは冒険者ギルドで看板梟をしていたのだ、受付嬢の強い要望により。
「お仕事お疲れ様福ちゃん。
今日は福ちゃんが頭の上にいなかったからすごい違和感があったよ」
「ワッ」
「福ちゃんもそう思ったんだ。
じゃあ明日は受付嬢さんたちに悪いけど、武器屋で看板梟をやってもらうね」
「ワッ」
今日も福ちゃんは可愛い。
『
名前:トム 年齢:15歳 性別:男
職業:テンプレ使いver2
Lv:20
HP:66/66
SP:60/60
STR:57
DEF:42
AGI:51
DEX:88
LUk:60
パッシブスキル
フラグ LV Max
テンプレサポート LV 2
アクティブスキル
フラグ LV Max
テンプレインストール LV 1
テンプレボックス LV 1
』
「1レベル上がってる、アクティブスキルの方のフラグもMaxになってる。
それにテンちゃんのレベル上がってる」
【あらほんとね、なんか1つじゃなくて2つのテンプレを伝えられるようになったわ】
「へぇーそういえば今日のお告げってステフさんのことかな?なんかタイミング的にピッタリだったよね?」
【そうよ、我が見た映像ではそのステフって女とそっくりだったわ】
「え、テンちゃん映像でテンプレを見てるの?ならもう少し情報をくれてもいいんじゃない?」
【無理よ、我はそういう器用なことができないスキルなのよ。
今のは主様が正解を導き出したから答えられたのよ】
「ふーんそういうもんなんだー」
相変わらず俺のスキルは使いづらいものばかりだ。
レベルの上がったフラグは23%から30%になった。テンプレが起こる可能性が3割っていうのは結構すごいことだと思う。
でも何が起こるか分からないのでやっぱり使いづらい。
日課も終わったので寝ることにした。
朝、目を開けると髪が赤い少女の顔があった。
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