第19話 『未熟』トロール編7
〜前回までのあらすじ〜
入院中だった女子高生のパピコは、雑巾男に連れられ、異世界にやってきた。
その世界は、昔読んだ絵本の世界にそのものだった。
これは。最弱女子高生パピコと雑巾男グリースが、暗黒の魔女から世界を救う物語。
現在、パピコはガルタダに呪文を伝授してもらうべく、修行をしている。
一方、グリースはフィルと共に素材集めの為、獰猛なトロールの行方を探していた。
しかし、獰猛なトロールは三体とも何者かによって殺害されて死体となっていた。
【修行】
ガルダダの家付近
野原
パピコと※ファルゴが対峙している。
※ファルゴ(大鷲)ガルタダと共に住む異獣
パピコは、坐禅をしている。
パピコは、深い呼吸とともに欠伸をした。
ファルゴの目は、落ちついておっとりしている。
パピコは、ガルタダに指示され教えてもらったあくびをするという呪文でファルゴを眠らせようとしていた。
『はぁはぁ、どうもうまくいかない』
パピコが流した汗が、地面に弾んだ。
”ポターン〟
「焦ることはない」
ガルタダは、パピコに言った。
「君の心がそこに追いついていない状態ではうまくいかない」
「心が追いつく?心を追いつかせる事はどうすればいい?」
パピコは、ガルタダが何を言っているのか理解出来なかった。
「時間だ」
「時間?、私には修行している時間はあまりない気がする、そんなんでも大丈夫なの?」
「時間は、ひとつの概念だ、伸びたり、縮んだりする」
ガルタダは、細い目をよりいっそう細くして、パピコに言った。
パピコの目は、ガルタダの言っている事を懸命に理解しようとしていた。
「私達のいる世界と君のいる世界の時間がどうやら違う」
「どういう事?」
「それぞれの惑星には、その星特有のエネルギー運動というものがある。君の住む地球のエネルギー運動は、ここよりずっと大きい」
二人の会話以外は、虫の音色しかこの場所に聴こえてこなかった。
パピコは、その環境の中、集中してガルタダの話しを聞いていた。
「君の身体は、地球の特性があるからここでは、短い時間で色々な事が早く習得できるはずだ」
「でもさっきは、時間は概念だと」
「そうだ、だからこそ今の事を理解する必要がある」
「思いって事?」
「少し違う、身体に君の意識を一致させるんだ」
「どういうこと?身体と意識は、一体ではないの?」
「もちろん、君の言う身体と意識は、一体のように感じる。それを瞑想によって別々のように感じる事もできる。でも私の言っている事は、そのどれでもない。頭で考えても無理だろう」
パピコの頭は、混乱し始めていた。
「さっき言った私の身体は、この世界の時間の流れと違うという事はリスクがあるんだよね」
「そうだ、君はこの世界では、身体が早く劣化が進むという事だ」
パピコは、息を飲みこんだ。
「どのくらい?」
「ここに、1年いれば、君は10年歳をとる」
パピコは、ここに7.8年もいれば、お婆ちゃんになると思いぞっとした。
「すまない、君にリスクを背負わせてしまって、」
「大丈夫、私はここには長くいないわ」
「パピコ、もう一度わかりやすく言う、君の地球での意識とここでの意識を一致させるんだ」
「それってわかりやすいの?」
「今、私の最善だ」
ガルタダは、苦虫を潰した顔した。
するとファルゴがガルタダを馬鹿にしたかのように鳴いた。
しばらく、二人の修行は、続いた。
【魔女の城では】
薄暗い部屋の中。
魔女は、水晶に映る”パピコとガルタダ〟をみている。
魔女は、薄気味悪く笑った。
『ガルダダ、何度やっても運命はかわらないよ』
魔女もこの世界が2度目という事になぜか気づいていた。
魔女は、もうひとつ気づいた事があった。それは、パピコがこの世界の人間ではない事だった。しかし、魔女にとっては、地球の普通の16歳の女の子の存在は、とるにならない事だった。
【船付き場にて】
妖精トロール家族が船着場に着いた。
そこはローナンガーの港といわれ、ガルダダの家からは、30キロ近くの距離が、あった。
その船着場には、300人位乗れそうな立派な船があった。
ドリーマーの下女が妖精トロール家族を待っていた。
「お待ちしておりました」
「すみません、待たせてしもうて、」
妖精父が言った。
「これからこの船はアダストリアに向かいます、そこにエルフ達と貴方たちの仲間はいます」
「そこに行けば安全なんですよね」
妖精母は、不安そうな顔で下女に訴えた。
「すみません、、、安全ではないです。この惑星自体が消滅してしまえばどこにいても同じです」
「そ、そんなそれではどこにいても同じではないですか?なぜドリーマー様は、アダストリアを目指されたのですか?」
「それは一部のエルフにしか知り得ない事です。私にも実は知らないのです。ドリーマー様が死んだ今、後は、息子のビジョン様がその意志を継ぐでしょう」
「嘘だドリーマー様が死んだなんて」
『うそだ、、うそだ、、、おれは信じない』
ミントは、悲しみを隠しきれなかった。
「ドリーマー様から本当にその事について、何も聞いてないのですか?」
妖精父は、下女に尋ねた。
「すみません、、その事については何も、」
「私達は、てっきり楽園にいけるもんだと、、」
妖精母は、肩をおとした。
「考えてみたら都合が良いですよね、、おらたちだけたすかるなんて、、、そうだ。わしらもその残されたビジョン様達に協力できる事があるかもしれねえ」
なんとか、気持ちを盛り返そうと妖精父は、自分に言い聞かせるように言った。
「どうしますか?、いかれますか?」
「いぎます、私らもなにかお役にたてるなら、なぁ?」
妖精母は、妖精父の言葉に頷いた。
ミントも元気なく頷いた。
『なんの為に、、おれは』
ミントは、一人心の中でつぶやいた。
すると下女が思いもかけない事を言った。
「私は残ります」
「なして?」
妖精父は、下女の言葉の意味がわからなかった。
「私は、仲間たちが帰ってきたときのためにエルフの里を守っていこうと思っております」
「どないして、いまのままだと我々がそのアダストリアにいがなぎゃこの世界を救う手助けができないのではないか?」
「もう一つこの世界を救う方法があります」
「なんだべ?そりゃ?」
「ある娘とカミアシです」
「それは、もしかして、パピコとグリースの事かい?」
下女は、発言したミントに驚いたような顔を向けた。
「やっぱり、私の言った事で、あなたの元に行ったんですね、」
「あんたか、余計な真似してヨーデル泉にあの二人をよこしたのは、」
「お陰で、父さんと母さんは、獰猛なトロールに攫われたんだ!」
「ミント、あの二人は、関係ないでないか?それにあの二人は、我々んたすけてくれたでねえか」
「父さん、黙っていて、、」
「ミントどうしたんだい?」
妖精母は、ミントの微かな異変に気づいた。
「行こうアダストリアに」
ミントは、そう強く言うとその後は、ずっと黙ったままだった。
船は、妖精トロールの家族を乗せてアストリアスに出航した。
”ぽーぉーしゅしゅー〟
【修行2】
ガルダダの家付近の高原
パピコとガルタダは、数時間の特訓をしていた。
「ガルダダ、ちょとトイレに行ってくる」
パピコは、少し疲れた表情をみせてその場を立ち去った。
ガルタダは、岩の上に座りあぐらをかいたまま目を閉じた。
パピコは、トイレに着くと急に泣き出した。
、、、、、
、、、。
涙が後から後から溢れてきた。
パピコの心を代弁すると彼女は、この先、何故かなにもかもうまくいかない気がしていた。
ここに来たのが間違いのような気もした。
彼女は、ここに来る前、いつも心の中で今とは違う場所を求めていた。
誰かが訪ねてきて、私の世界を変えてくると思たりしていた。
でも実際はその全部が違っていた、、。
彼女は、この先の不安に押しつぶされそうになっていた、、。
”え、、、ふ、、ぐゅ、、、、〟
彼女の涙が溢れて止まらなかった。
”ぐぅ、、しゅ、、、ん〟
しばらくの間、パピコはトイレにへたり込んでいた。
ガルダダの家の中を見回すと、仏像があった。
その仏像は、なにやら独特の雰囲気をかもしだしていた。
外にいるガルタダは、パピコの異変に気づいていた。しかし、トイレから戻ってこないパピコをそっとしておいた。
ファルゴも二人の修行に付き合わされいたが、行儀良くおとなしくしていた。
しばらく立つと、パピコは力無くトイレからでるとガルタダとの修行に戻る気がおきなかった。
なんとなく、たまたま目の前にあった仏像の前に座り込み眺めていた。
その仏像の顔が優しくパピコに微笑んでいるように感じた。
パピコは、いつのまにか仏像の前で眠りについていた。
時をみて、ガルダダがパピコの様子を見に入ると、寝ているパピコに気づき、そっと毛布をかけて、また外に出た。
【修行の再開】
パピコは、目覚めると何故かすっきりしていた。身体も少し軽くなっている事に気づき、毛布もかけある事にづいた。すぐにガルタダがかけてくれたんだと思った。
外にでるとガルタダにお礼を言って修行を再開してもらった。
即席の師弟関係みたいになった二人は、パピコがお礼を言った後は、お互い言葉を交わさず無言のままただ訓練だけが続いた。
空にはただ無数の白い雲が自由に浮かんでいる。
パピコは、未だにファルゴを眠らせる事ができないでいた。
つづく。
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