王子様は猫達を飼う。

眠れる森の猫

第1話

 わたし、猫乃宮ねこのみや猫音ねこねは妹に乙女ゲームをさせられた。なかば強制的に……


 どうしてこうなったのかって、それはリビングで起こったことが原因なんだ。妹がスマホの充電をしたまま、ほったらかしにしていたことから始まる。


「あちぃ、あちぃ」


 お風呂上りの私は身体がとってもアツアツなの。だからね。その充電していたコンセントのプラグを抜いた。かわりに扇風機のコンセントを差し込んだ。コンセントが空いていないのだから仕方ない。


 スイッチオン!!


「ああ~、われわれは、うちゅうじんだ!!」


 私は扇風機で遊んだ。だけど、すぐに飽きた。そうそう妹のスマホのことなんて、もう、すっかり忘れていたんだ。ぼへーな感じで。しばらくして私は部屋に戻り、そのまま夢の世界へと旅立ったのだ。


 なーむである。


 ちーん。

 

 次の日、妹のスマホの電源がゼロになり切れていた。ついでに妹も切れていた。


「この、バカ姉貴~!! せっかくの経験値10倍イベントだったのに~!! なにやってくれてんのよ!! このレベルまであんたが責任をもって上げなさい。さもないと、一生、口聞いてあげないんだから!!」


 妹がマクロ(違法)を使いながらレベル上げをしていたようだ。マクロとは自動で敵を倒していく、運営様がお怒りになる違法行為である。いつかBANされても知らないんだからね。じー、ぷいっとされちゃった。それから、話しかけてもデザートでつっても無視された。デザートだけは食べられていた。それで仕方なく、このゲームをしているんだ。私がなんで、乙女ゲーしなきゃいならないんだろう。うん? イベントかな。黒いネコミミがついたメイドさんが現れて……


「こんにちわ、今、アルバイトを募集しています。精神、身体ともに丈夫な方を募集しています」


 とりあえず、YESと。


「ありがとうございます。でも本当に宜しいのですか? ナニがあっても知りませんよ?」


 YES,YES。


「ありがとうございます、……ではあなたには……、……そうですか、今回もだめでしたか、ごほん、こちらをどうぞ」


 白猫さんの耳と尻尾のアバターをもらった。


 これって何に使うんだろう?


 説明には、これをつければ心も体も、あなたは猫さんになれる。そのかわり、ナニがあっても知りませんよ? って。


 よく分からないアイテムのようだ。はい、装備っと。今日も一日中、ネコろがってマッタリするつもりだったのにゲームをさせられている。ゲームの内容がだいたい分かってきたけど何が楽しいのやら、さっぱり分からない。


 特にこの攻略対象の王子が変態すぎるし。やんでる? かなりヤバめなのよね。リアルに恋人にしたら人生終了よね。こんなのを好きになる人って狂ってるとしか思えない。わたしは、絶対にこんなのを好きになんてならないからね。


 はぁ……、もう、疲れた。寝ようかな。


 明日もレベル上げ……


 zzzzzz……


 私はゲームを起動させたまま爆睡したのだった。 


★★★


「うーん」 


 眩しいなぁ、もう朝なのかな? 今日は日曜日、学校ないから朝からゲーム(強制的)。やだなぁ。スマホはどこかな、あれ、ない。


 目を閉じたまま手探りで枕元にあったスマホを探すが見つからない。仕方なく閉じていた瞳を開けると……


「シャムリーナ嬢、お加減はどうですか?」


 だれ、この人? 


 目の前に金髪イケメン、笑顔がとっても眩しい男がいた。スラっとした体型の割には体格がいい。中世の王子様が着るような服を着ている。


 今日はコスプレ大会でもあるのだろうか。妹が参加するなんて聞いてないし。うーん、考えてもわかんない。無視して寝ちゃう?


 お・や・す……


 はっ、なんだろう。


 急に寒気がしたよ。


 イケメン男はイイ笑顔でニコニコしてるし。


 うーん、気のせいかな。


 やはり、この人、どこかで見たことあるような。


 むむむむむむむ!!


  ああ、思い出したよぉ。


 攻略対象の第二王子、レオンハルトのそっくりさんだ。


 金色の髪に青い瞳、さわやかな風貌だったかな(妹談)。


 たしか、私と同じ年齢だったっけ。


 はぁ~、とうとう、ゲームのやりすぎで、夢にまで見てしまったのかな。


「すまない。シャムリーナ嬢、あなたをエスコートしていた私が……君をささえきれずに、怪我をさせてしまうだなんて……」


 さっきからシャムリーナ嬢、シャムリーナ嬢って、私はね。


 うーん、たしか、シャムリーナ嬢って、あのゲームの悪役令嬢だったよね。


 そうそう、階段から、わざと足をふみはずして、怪我を理由に婚約をせまるんだっけ。


 はぁ~、まだ目が覚めないのかな。


 夢はもういいよぉ。


 目が覚めるまで寝よっか。


 うんうん、それが一番だよね。


 果報は寝て待て?


 だったっけ。


「いえ、いえ、お気になさらず、それでは、おやすみ、さようなら、またね。ばーい♪」


 そう私が言うと、レオンハルトのそっくりさんが驚いた顔でベッドに寝転がる私を見ていた。


 なんだろう、急に固まってどうしたの。


 怖いんだけど?


 そういえば、レオンハルトのそっくりさんの側にメイド服を着た女性がいるね。誰だろう。あらら、その人も様子がおかしい。


 同じく私を見て固まってるんだけど?


 よし、ほっとこう。


 私は寝るのだ、目が覚めたらまたゲームか。がっくし。


 そして……


 しばらく時間が経っても、現実に戻ることはなかった。


 ホワーイ?


 これって、まずくない?


 明らかにおかしい。


 さすがに寝るのはやめよう。


 いつも通り、私はベッドからトーっと飛び降りた。


 な、なんですと?


 周囲を見渡すと、


「ふぇ?」


 目を疑った。


 私が愛用していた猫さんの絵柄が入ったクローゼット、鏡台、机、何もかもがない。


 部屋中にいっぱいだった、ネコさんのぬいぐるみも……


 な、なぜに?


 まさか妹の部屋、いや、でも、さすがにこれはないよ。


 そう天井を見ると、豪華な天幕、周りには高級な調度品の数が雨あられとあったのだ。売り飛ばしたら、どれぐらいになるんだろう。私はそう思った。

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