第14話 ダンジョンへの出発

 僕は次の日から【速読】を使って図書館中の本を片っ端から読んだ。


 本を読んでいっていくつか気になる魔法も出てきた。




 【古代魔法】という今ではほとんど使える魔法使いがいない魔法だ。


 強力すぎたり、危険すぎるため封印されたという古代魔法。デーモンを倒すには必要になってくるかもしれない。


 古代魔法以外にもまだ僕の使えない魔法があり、新しい魔法は【魔法の宝玉】を手に入れると使えるようになるようだ。


 ホントに知らないとこばかりだったな……







「あんた、最近いつもここにいるわね」


 速読している僕に話しかけてきた美人だがどこか暗い女性。図書館の隅で速読をしていた魔法使いだ。オリビアさんより少し年上だろうか?


 「あまり見ない顔ね」


 「あ、数日前にここに来ました……」


 「そう、勉強熱心ね」


 「いえいえ……あなたもよく速読してますね? 何を読んでるんですか?」


 「……あんたに言う必要ある? 関係ないでしょ!」




 女性は不機嫌になり図書室を出て行ってしまった。


 (そんなに悪いこと言ったかな……?)







 部屋に戻る城内でディランにばったり会った。


 「ペルーサ、国王から聞いたよ。私とダンジョンに行ってくれるんだってな。楽しみにしているよ。」


 相変わらず不敵な笑みだ。


 「オリビアさんも一緒に行きますよ。」


 「オリビア……? あーあの女剣士か。かまわないよ。じゃあ数日後、楽しみにしているよ。」


 どうも嫌な予感がするな……


 去り際のディランを【鑑定】した。




 【ディラン レベル68】




 さすが国王が気に入った魔法使いだけあるな。かなりレベルだ。









 ダンジョン出発の当日、カノン様に出発のあいさつにいく。




 「気を付けてくださいね。無理ならないで」


 「大丈夫ですよカノン様。今回はディランさんとオリビアさんも一緒なんですから」


 「そうですよ姫様! ご安心ください!」


 オリビアさんの言葉にカノン様も安心したようだ。全く正反対のような2人だが意外と仲が良いようだ。


 「そういえばオリビア、最近グリンダとは会ってますか?」


 「グリンダですか……最近はあんまり……やはりあれから別人のようになってしまいましたね」


 「そうですか……彼女には何度も気にしなくていいと言ってるんですけれどもね……」


 (グリンダ? 誰のことだろう?)


 あまり明るい話ではないようなので首を突っ込むのはやめておこう。







 「ペルーサ、ちょっとオリバーのところにも寄っていいかな?」


 「はい。もちろんです」


 オリビアさんの弟のオリバー。


ケガは治っているがブランクもあり、まだ病院のリハビリ場で少しづつ訓練をしている。






 「オリバー!」


 「姉さん! ペルーサ!」


オリバーはすっかり明るくなり元気そうだ。




 「訓練は順調なようだな。これからペルーサとディランとダンジョンへ行くからあいさつにと思ってな」


 「そうなんだ。気を付けて! ペルーサ、姉さんを守ってやってね」


 「こらこら、私が保護者だろ」


 オリバーを引っぱたくオリビアさん。この姉弟に笑顔が戻ってよかった。




 「俺も早く強くなってペルーサとダンジョンにいくから待っててな!」


 「うん。僕も楽しみにしているよ。」


 同い年の友人もできた。








「ほんとに弟を治してくれてありがとうな」


「いえいえ、そんな」


「オリバーまた元気になってくれてよかった。ペルーサの魔法には人を幸せにする力があるよ」


リハビリ場を出てオリビアさんが言う。


 「そうだと嬉しいです。ますはカノン様を元気にしてあげたいです」


 「そうだな。私も協力するよ!」


 「はは、頼りにしてます」







 病院の入院部屋から怒鳴り声がする。


 「おいおい! なんだよこのまずい飯は! 俺を誰だと思ってるんだ?」


 ガラの悪いしゃべり方で看護婦に絡んでいる男がいるようだ。


 「どうしたんだ?」


 オリビアさんが近くの看護婦に聞く。


 「はい……もうケガは治ってるのになかなか退院してくれない迷惑な患者がいまして……」


 「ペルーサ、ちょっとここで待ってくれるか?」


 正義感の強いオリビアさんが放っておくわけがない。


 ……しかし、この声どこかで……?







 「おい、ここは病院だぞ? 静かにできないのか」


 「なんだこの生意気な姉ちゃんは? お、なかなか可愛いじゃねぇか! 彼女にしてやろうか?」


 このままじゃオリビアさんがボコボコにしてしまう! 僕は急いで病室へ入る。


 「そんな谷間丸出しの鎧なんか着て、スケベな女だなぁ」


 「貴様……」


怒りをむき出しにするオリビアさんは腰の剣に手をかける。




 「ダメだ! オリビアさん!」


 僕はオリビアさんに掴みかかる。


 「離せペルーサ! こいつは斬る!」




 「ん……! お前は……ペルーサ!?」


 「え?」


 男は僕を知っているようだ。


 「あー! お前はゴンザレス!!」


 なんとゴーレムのダンジョンで僕を置いて行ったパーティの隊長ゴンザレスだった。




 「ペルーサ。お前、生きていたのか……」


 驚くゴンザレス。驚くのも無理はないだろう。彼の中の僕はレベル1の魔法使いのままだ。


 ゴンザレスはダンジョンから脱出してこの病院にたどり着いたのだろう。




 「そうか、この男が前に言っていたゴンザレスか……ペルーサ、こいつを追い出してくれ」


 「追い出す? ペルーサが? 馬鹿言うんじゃないよ。こいつはただ荷物運びだぜ?」


 「……ホントにやっちゃっていいですか?」


 「おい、なに調子にのってんだ? 俺に勝てるとでも思ってんのか」




 ゴンザレスはベッドから起き上がり僕に殴りかかってくる。やはりもうケガは治っているようだ。




 【肉体強化】




ゴンザレスのパンチを僕は軽々受け止める。


 「え?」


 「ゴンザレス、もうお前は退院だ」




【風魔法】




ゴンザレスを病室の窓から外へ吹き飛ばす。


 「ぎゃーーーー!」


 地面に転がったゴンザレスは一目散に逃げて行った。




 「ふふ、よくやった。それにしても失礼な男だったな。私をスケベな女などとぬかしおったぞ?」


 「まあそんな鎧を着てれば……」


 「ん? なんか言ったか?」


 「……いえ、何も」







 城の外にはディランが馬車を用意していた。


 「おはよう。よろしく頼むよ2人とも」


 「……よろしくお願いします」




 「おいペルーサ、ここからは気を抜くなよ」


 「はい」


 不安が渦巻くダンジョンへの旅が始まった。

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