第11話 寝相と特訓
顔に何やら柔らかい感触を感じて目が覚めた。
「ん……なんだ?」
寝ぼけながら顔を圧迫する異物を触る。
(柔らかい……?)
僕は顔を離し、異物の正体を確かめる。
「!!! オリビアさん!?」
僕のベッドにはパジャマの捲れ上がった半裸のオリビアさんがいた。
「ムニャムニャ……んー? おーおはよう、ペルーサ」
「なんでこんなところで寝てるんですか!?」
「あれ? ここは君のベッドでは? おかしいな……?」
この部屋はベッドが2つある。昨日の夜はもちろん分かれて寝たはずだが……
「すなまい! 私は昔から寝相が悪くってな」
寝相って、そんなレベルじゃないでしょ……
もし僕が同じことしたらどうするんだこの人は?……いや、きっと何も気にしないだろうな……
「今夜からはベッド離して寝ますからね……」
「ん? なんでだ?」
◇
オリビアさんは起きるとすぐに鎧に着替えた。
「朝食の前に少し特訓をしてくるよ」
「え? 起きたばっかりですよ?」
「せっかくこんな立派な訓練場があるんだからな。そのために引っ越してきたんだから使わないともったいない」
さすが調査団の副団長だ。いつもふざけている人だけど陰で努力しているんだな。
「ペルーサも一緒にやらないか?」
「え?」
◇
部屋の奥にある室内訓練場。室内とは思えない広さだ。
「すごいな! いつでも訓練ができるなんて贅沢な部屋だよ」
(ホントにこの人は強くなりたいんだな)
「とりあえず剣の稽古に付き合ってくれよ。少しくらいできるだろ?」
「えぇ!? いえいえ! 無理ですよ」
「まあまあ、少しだけ」
僕に剣を渡してくるオリビアさん
「!! お、重っ!」
「……ホントに君はゴーレムを倒したのか……?」
「しかたないな、私1人で素振りでもするよ」
(情けない……)
◇
1人、剣の素振りをするオリビアさん。
剣のことはよく分からない僕にも凄さが分かった。
滑らかな剣捌き、流れるようなステップ
美しい姿は踊っているようだった。
「お? 私に見惚れているのか?」
「ち、違いますよ!」
からかうオリビアさん。
「そうだ、1つお願いがあるんだが」
「なんですか?」
「ペルーサの【鑑定】を使って今の私のレベルを教えてくれないか?」
「いいですけど……」
(確かに僕もオリビアさんのレベルは気になっていた。でも勝手に見ていいものなのか迷っていた)
「遠慮せずにホントのレベルを教えてくれよ」
「は、はい」
【鑑定】 『オリビア レベル35』
「35レベルです! すごいですね。」
「35か……まあそんなもんだろうな」
浮かない顔のオリビアさん。
35レベルというとなかなかのレベルだ。僕がいた戦士団のゴンザレスが30レベルくらいだ。
「オリビアさんはどうしてそんなに強くなりたいんですか?」
「……私は調査団ではなく王宮の戦士団に入りたいんだ!」
「そうなんですか」
「ああ、世界中のダンジョンをまわって困っている国の人を助けたいと思ってる」
「そっか、オリビアさんにはピッタリですね」
(やっぱりオリビアさんは凄い人だ。いつか戦士団に入れるだろう)
「でも戦士団に入るには60レベルくらいはないと入れないんだよなぁ。まだまだこれからだよ。もっと訓練をしないとな」
「……僕が剣の稽古付き合いますよ」
「え? いやいや、剣もまともに振れないじゃないか」
僕は魔法を唱えた。【肉体強化】
全身に力がみなぎる。これならオリビアさんの稽古にも付き合えるかな?
「すごい……魔法でこんなこともできるのか……」
「はは、僕も使うのは2回目なんでどんなもんか分かりませんけど」
剣を振る。うん、今度はしっかり振れそうだ。
「いきますよ! オリビアさん!」
「ふふ、来い!ペルーサ!!」
オリビアさんの夢を手助けになればいいな。
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