episode.23 反撃
「カバネヤグラネ…」
尸楼(かばねやぐら)。
依頼が有ればなんでもこなす裏の組織。例えば人殺しでも…(お金を取ると言う事と依頼を受ける前に依頼人の素性などを調べる。)
「あの液体何?」
「物体を溶かす体液」
「げっ…」
尸楼 命明神夜(めいめい かぐや)
どストレートな口調が時々周囲の空気を悪くするのを彼女は知っているのか?そもそも無表情で感情が汲み取りにくい彼女だ。考えても無駄であろう。
「ハァーイ蜜璃ちゃんお待たせ♡やだ!?何そのブサイク!妖魔ってあんなのばっかなの!?」
尸楼 麟院黑絵(りいん くろえ)。
無表情の神夜と正反対。マスターの経験からか頼れる姉御肌。そしてオカマ。
(黑絵、準備は?)
(バッチリよ♪)
アイコンタクトで言葉を交わし、再び目線を生誕へと向ける。
「ブサイクカ、タシカニブサイクカモシレナイナ」
“奇妙な朽木(ストレンジツリー)”
生誕は身体から一つの種を飛ばす。その種は研究施設の硬い床を通り抜け芽を生やす。
(あれは…何かの芽か?)
それは時間経過で成長しているように感じる。
「よいしょっ♪」
黑絵は背中に背負っていた巨大な筆を振るう。その筆からは赤色の絵の具が飛び散り、芽を赤く染める。
「“赤色は燃える”」
そう黑絵が唱えると絵の具により赤に染まった芽は燃え、灰となる。
「ソレガオマエノイノウカ」
「さぁ〜ね?なんか時間掛けたら不味い感じがするからちゃっちゃと片付けちゃいましょうか♪」
「さんせーい」
「なら俺はもう少し様子を見る」
走り出す黑絵と神夜。両者は一斉に生誕へと攻撃を行う。
神夜が取り出すのは折り畳まれた楽器のようなもの。それはアコーディオンの様にも見える。それを広げる。広げると折り畳まれていた部分には無数の穴が開いている。
“鉄水”
その穴からは銃のように弾が発射される。それも1発や2発では無い。乱射。その姿はさながらガトリングガンを両手に持ち、暴れている狂人であった。
(コレハ、ミズカ!?ソレヨリモ、ナンテイリョクダ…)
神夜の異能は“水面(みなも)”。今乱射している弾は神夜の異能による水の弾。その威力はコンクリートや鉄板を最も容易く貫くほど。
“青い絵の具”
「“大量の水”」
黑絵の異能は“塗装”。赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の基本的な七種類の色で何にでも色を付ける。
色がつくとその色に一度だけ意味を与える事ができる。先ほどのように赤色は燃えるなど。
神夜の“水面”の異能は水を生み出す訳ではない。神夜の体は100%水分でできており、その体の水分を使い攻撃を行っている。それを使い過ぎると子供のように幼くなってしまう。黑絵のサポートがあり、“鉄水”の乱射が可能になっている。
なすすべなく攻撃を受け続ける生誕に少し不信感を覚え始める蜜璃。
(あいつは腐っても数字持ち。それがここまで一方的にやられるか?何か隠しているか、もしくは…)
「神夜!」
「分かってるって」
“高出力水砲”
“鉄水”は乱射している分、威力が弱い(?)。“高出力水砲”は乱射に回している水を一点に集中させ打ち出すもの。その威力は言うまでもなく“鉄水”のおよそ10倍の威力である。
「黑絵さん私子供になっちゃった」
打ち出したのち、武器を持ち上げる力すら残さなかった神夜は子供の姿となり黑絵の足を引っ張る。
「あなたそっちの方が良いわよ。いつもの無愛想な感じが払拭されて可愛く見えるわ」
「…ぃや!」
「て言ってもね〜私さっきのあなたのサポートで青い絵の具全部使っちゃったのよね〜」
「え…」
神夜は絶望した。顔色は変わっていないが長年過ごして来た黑絵には分かる。
(この子…見るからに落ち込んでるわね…帰ったら早く元に戻してあげないとね)
(それより蜜璃ちゃんあの仕掛け使わなかったわね)
黑絵の目線に蜜璃は無言で頷く。
(まぁ使わずに済んで良かったと思うべきか。それにしても…)
あっさりと負けすぎている。そう蜜璃は感じていた。
「ふぅ…危なかった。高圧圧縮された水の弾。凄まじい威力だったよ、実際死にかけたしね。でも遊びは終わりだよ」
「「「!?」」」
さっきまでの妖魔としての悍ましい姿の面影は残しつつ、彼は進化を遂げていた。流暢に言葉を交わすようになっていた。その時点で彼は変わっているのだ。
「まさかあの木か!?」
「御名答。“奇妙な朽木(ストレンジツリー)”の力さ。あの木が成長すると力を私に還元する。勿論生命力もね」
「あの木は私の異能で燃やした筈よ!?」
「お前が燃やしたあの芽はブラフだ。まんまと引っかかってくれたお陰で他の芽を成長させる事ができた」
「…ッ!?」
「さぁ、生命の神秘を知るがいい」
“帯電する樹木(エレクトリックツリー)”
バリ…バリバリバリバリ…ジジ…ジジジ…
神夜、黑絵、蜜璃、3人の目の前に巨大な樹木が硬い床を突き破り聳え立つ。出現したと同時、爆音と共に溜め込んでいた電気を辺り一面に放電する。
高圧の電撃それは硬い研究室の床を抉るほどの威力で土煙を上げる。
電撃にさらされた3人の遺体を確認しに生誕は動く。
(あの小娘は居ないが身体が水のようだったからな、蒸発でもしたか。とりあえず遺体を発見…)
「黑絵と言ったか?お前は私に言ったな。ブサイクと。進化、誕生の瞬間と言うのは常に醜いものだよ。まぁ聞こえちゃ居ないだろうがな」
「く…はぁ…はぁ…はぁ…」
「息があるのか!?」
(あの高電圧は雷とは比べ物にならないくらいの威力…それを!?)
「御生憎様だな…こっちは医者やってんだ。人を生かすも殺すも俺の手の内だ」
「っ!?やはりお前は危険だ!先に殺す!」
生誕は考えていなかった。いや、考える隙を与えられなかった。何故彼が電撃を受け軽傷で立っているのかを…
“帯電する樹木(エレクトリックツリー)”
生誕が生み出した技。それは溜めた電気を一気に放電するもの。それに対して蜜璃が取った行動は医療器具のメスでその電気を斬るというもの。
「お前…まさか!?」
生誕は自身の懐を確認する。彼が常に持ち歩いていた“物”が無い。
「返してもらったぞ。俺の“異能”」
江東蜜璃
異能力“再配列”
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