episode.20 進度
真季波家。大きなテーブルを囲み食事をする。
「みなさんおかわりも有りますからね!」
真季波琥珀
凪の妻。家事全般をそつなくこなす。常に明るい雰囲気を纏っている。が、少し抜けているところも…
「美味過ぎる…」
「そうだろ!沢山食べてくれ」
凪は奥さんを褒められた事で舞い上がり紘に料理を勧める。目の前のお皿に増える料理の数々に紘は苦笑いするしか無かった。
食事も終わり、片付けには琥珀を中心に結奈、静恵が手伝う。
「お手伝いありがとうね結奈ちゃんと静恵ちゃん」
「いえいえ、居候のようなものですので…これくらいしか出来なくてすみません…」
「そんな事気にしなくて良いのよ」
「その…ちゃん付けはなんかむず痒いですね…」
静恵の言葉に琥珀と結奈はお互いに顔を見合わせ笑う。
「え!?何かおかしな事言いましたか!?」
「いいえ、私こそ気が回らなくてごめんなさい。そうよね…歳をとるとダメね」
「あの、失礼を承知でお聞きしても…?」
「ええ何かしら?」
「おいくつですか…?」
「私は今年で43よ」
「「よ、43!?!?」」
2人が驚くのも無理はない。琥珀の見た目は20代後半頃から全く変わっていないのである。不思議だ。
ドカッ…
台所で談笑していた3人は大きな音に反応しその音がした方へと向かう。
(奥の部屋は確か兄さんと魁斗くんが話してるはず…)
近づくにつれ会話は大きくなり声が聞き取れる。部屋の外には紘、唯が聞き耳を立てていた。
「紘、なんの音?」
紘はこちらを振り向き、見た方が早いと言うように親指で扉を指す。
「なんで…」
部屋の真ん中に倒れているのは蜜璃。そして殴ったと思われる人物は魁斗であった。
「兄さー」
静恵が結奈を静止させ紘に話を聞く。
「紘何があったの?」
「帯人はもう長くねぇって話だ」
「え…?」
「それはどうー」
静恵がその話を詳しく問いただそうとした時魁斗は口を開く。
「蜜璃さんなら治せるんじゃないのかよ…」
「無理だ。俺の異能は“侵食(しんしょく)”傷に入った細菌や毒物、体に害のある物は取り除けても傷自体を直すことはできない」
「でも結奈さんは!?」
「結奈が元通りなのは側だけだ。傷を糸で繋げただけ。元通りになんてなってない。激しく体を動かすと傷が開く」
「…おじさんはどこですか?」
「…」
「酷い怪我をしていた!安静にしてないと行けないのに…」
魁斗は倒れている蜜璃の胸ぐらを掴み問う。
「知ってどうする?」
「連れ戻す…もうこれ以上俺の大切な人に居なくなってほしくない」
力のこもる手。そしてその目を見て蜜璃は溜息を吐く。
「あいつは死ぬ気だ…1人で妖魔の王が居る洞窟に向かった。その覚悟が分からないほど餓鬼じゃないだろ…?」
(分かる。おじさんがどんな思いを胸に剣を振るっていたのか…分かってる…分かってるんだ…)
服を掴んでいた手が緩む。溢れ出そうとしている気持ちを堪えるように魁斗は奥歯を噛む。
「おっす!凪さんに案内された麗央様はただいま帰還しーってなんだ?この雰囲気…???」
ここに空気を読まないゴリラが一頭迷い込んだようだ。
「「KY!」」
紘と静恵による制裁が麗央を襲う。致し方ない事だ。その後この空気感で話す事ができず、自然に解散した。
その日の夜…
1人縁側から外に出る人影。
「な〜にしてんの?」
「…紘さん!?」ビクッ
魁斗が縁側から外出しようとした時、紘に呼び止められる。
「蜜璃に止められたから黙って出て行こうとしたんだ〜?でもさ、場所知ってるの?」
「…」
「その間は知らないな?ならさ俺が送ってあげようか?」
「紘さん場所知ってるんですか!?」
「わぉすごい食いつき…まぁね!蜜璃から聞き出したんだよ〜褒めてくれても良いんだぜ?」
(まぁ、蜜璃はこうなる事予想してそうだけどね…)
「それじゃ行こうか!」
「楽しそうだな!俺も混ぜろよ」
「麗央さん!?」
「よ、どうせ帯人助けに行くんだろ?戦力は多い方が救出の時のリスクも減るしな」
「声を抑えろよ!」ゲシ
紘は麗央の足を蹴るが痛かったのか右足を手で撫でる。
「兎に角、出発するぞ」
“空間転移”
麗央と魁斗の背を触り飛ぶ。屋敷の風景から一変、そこには大きな洞窟の入り口が見える。
「ここが根城か」
「早く行こう!」
魁斗が入り口から中へ走り、それに連なり麗央、紘と中へと入る。
中ではまるでこちらが来ることが分かっていたかのように妖魔の大群が待ち構えていた。
「こいつら!?」
「紘は温存(力)、魁斗は俺の後ろ!俺が道を作る!」
指示の通り魁斗と紘は麗央の後ろに周り麗央は大群めがけて拳を振るう。
その一発の拳は空を切るが周りの妖魔は当たったかのようなダメージを受け後方へ飛び絶命する。
(相変わらず出鱈目な強さだな麗央…)
麗央は能力などは使っていない。麗央の圧倒的な力(筋肉)により、大気や水を振動させ相手を弾き飛ばす。単純な“力”だけでこの威力である。
前へと進みながらも撃ち漏らしなどは無い。流石である。
(頼む…間に合ってくれ!もう2度と失うわけにはいかないんだ!)
魁斗、紘、麗央の3人が進む一方で洞窟の最深部では複数の数字持ちに囲まれ、妖魔の王と帯人が対面していた。
「わざわざ情報提供に出向いてくれたのかい?」
「いや、お前たちを倒しにきたんだよ」
今、戦いの火蓋は切られる。
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