episode.5 接敵
episode.5 接敵
彼女と一緒に暮らし始めて1週間が経った。
「1週間経ったけどどうよ?」
今日は特課に警察から依頼がくる日だ。その為、紘さん、麗央さん、蜜璃さんと事務所に集まっているのだが、案の定質問攻めを受けていた。
「どうって普通ですよ」
「その答えはつまら〜ん」
「ラッキースケベ的な展開はあったのかッ!?」
麗央は食い気味に魁斗に聞く。
「無いですって…」
(言えない…風呂から素っ裸で出て来たなんて…)
「ずっとくっ付かれていて不便じゃないか?」
「ずっとじゃないです、学校の日は留守番できてますよ?」
(まぁ、家じゃずっとと言っていいほどくっ付かれてるけど…)
この前の彼女の真意を聞き、俺から彼女に強く言えなくなってしまった。一人の寂しさは知ってるつもりだから。
「今日午前4時ごろ、高速道路を走っていた大型トラックが横転する事故が発生しました。運転手に怪我は無いとのことです。警察はー」
事務所内のテレビにはヘリコプターから撮影されたと思われる映像とニュースキャスターの説明が流れる。
「最近多くない〜?ここでの事故」
「ああ、今月に入って3回目だ。しかも連続で」
ガチャ
「魁斗、警察から直々の依頼だ」
外に出ていた帯人が戻り、開口一番に依頼を伝える。
「高速道路での連続事故の調査だそうだ。この前のように力のある妖魔かもしれんがお前なら大丈夫だろ?」
「はい」
そう力強く頷いた後、ロッカーから刀袋を手に取り現地に向かうべく足早に事務所を後にする。
魁斗が出た直後…
「なんか最近魁斗にばっか依頼来てません〜?」
「確かに…帯人どうなんだ?」
「今回の依頼の采配は俺の個人的なものだ。先の依頼は特に魁斗に行ってもらおうと思っていた」
「「と言うと?」」
「あいつの仇に酷似した痕跡だったからだ」
目的地の高速道路までは電車を使い近くまで向かう。駅を降りると知り合いの警部さんと目が合い会釈をする。
「遠藤(えんどう)さんお久しぶりです」
「おう、帯人から話は聞いてるとりあえず乗んな」
そう言い、車へと案内され遠藤の運転する車で現場へと出発する。
「遠藤さんお子さんは元気ですか?」
「ああ、今日も玄関先でごねられた。可愛いもんだよ」
遠藤さんは娘さんを持つ一児の父で、この通り娘さんにデレデレだ。その後娘さんの話を楽しそうに聞かされ、その数分後に目的地へと到着した。
「ここですか?」
「ああ。おう」
遠藤さんが手を上げ規制線を潜り抜ける。鑑識の人やその他の警察関係者が遠藤さんの後に続く俺を不審な目で追う。それもそうだ。服装は黒スーツでも顔立ちはまだ子供と分かる高校生だ。
痕跡を調査していたであろう警察の方がこちらに気づき挨拶をする。
「お疲れ様です遠藤警部、とそちらの方が?」
「ああ、紹介する。この子は特課の夜屍魁斗。魁斗、こっちは巡査の早水楊(はやみよう)だ」
「早水です。よろしくお願いします」
「こちらこそ」
握手を交わすが見た目のせいか少しの不信感は拭いきれていないように思う。
警察の方々が集めてくれた痕跡と写真を見る。
トラックと併走する様に走る人型の影の写真、足跡。
荷台を蹴破られてそのまま横転と言った所だろう。だが肝心の妖魔の動機が分からない…
「…」ピクッ
警戒範囲を広めてて良かった。でもこのスピードなら後数秒でここに着くか…
「遠藤さん、みんなを連れてここから離れてください」
俺が刀袋から刀を取り出す様子を見て遠藤さんは分かったと答え集まっていた人たちを誘導する。
「お前ら撤収だ!急げ」
「ヒャッホーイ」
ガキーンッ…!!!
金属と金属のぶつかる音が高速道路上に響き渡る。
腕が鎌のように鋭く伸びている。見た目通り闘争心が高いのだろう。飛びかかり重力を利用した渾身の振り下ろしを刀で受け止める。
「アリャレ?」
(重い…)
なんとか相手を弾き返し、体制を立て直し刀を前に構える。
「ウケトメラレルトオモテナカッタ」
人語を理解しだしているその口ぶり、恐らく何人かの人はこいつに犠牲になっているのだろう。それならば俺はこいつを始末するのみ。
“一心流・咲華(ショウカ)”
切り裂き肉を断つその一太刀は花が咲き誇る春の桜のような美しさを兼ね備えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます