第48話

 人の形をかろうじて保ちながらもその存在はまるで影のようにうつろだ。

 それは声にならない声を上げ、視線の定まらない目で安楽をにらみながら、地獄に引きずりおろそうと安楽の脚に手を伸ばしていた。


「なっ、なんだ、こいつらは!?」

「お前が腹を開いて中身を空にして阿片を詰めてミイラとして売り飛ばした者達だ」

「死んだやつらが、私に一体なんの用だ? お前達は既に死んでいる、俺が殺したわけではない、逆恨みもいいところだ!」

「逆恨みだと? お前がしたことは死者への冒涜であり、あの世での審判を妨げるものだ」

「死人がなにを言ったところでどうなる? 誰がその言葉を信じる? そんなもの誰も信じない、何故なら私は生者であり菩薩だからな!」


 吠えるように叫ぶと安楽は足を掴んでいたものの頭を容赦なく蹴り飛ばした。蹴られた頭は毬のように転がり、消えていった。


「ははっ、見たか! もう一度死にたいなら死なせてやろう。それが慈悲というものだ!」

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