第46話

「これがミイラを作った時にできる傷だ」


 レンは腹にある傷をゆっくりとなぞった。


「ここから内臓を取り出して、壺におさめる。蘇ってきた時のために大切に、体にできるだけ傷をつけないように……それをお前はどうした?」


 レンの怒りに魂が反応するかのように、璃兵衛の瞳の青い輝きが増す。

 それはまるで安楽に怒りを持つ死者達の魂の怒りをあらわしているようであった。


「そんなもの……死ねば、皆同じだ! 死体を、臓物を残したところで、本当に蘇ると思っているのか? 死ねば人は終いだ。ならば生きている者のために有意義に使って何が悪い!」

「お前っ、どこまで死者を侮辱すれば気が……!」

「たしかに人は死ねば終いだが、死して終わらないものも存在する」

「それはなんだ? 言ってみろ」

「呪いだ」


 璃兵衛が答えた瞬間、部屋の中の温度が下がったように感じた。


「……呪い、だと? くだらない」

「本当にそう思うか?」


 璃兵衛はゆっくりと安楽に話しかけた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る