(232) 手のひらに降る雪

冬の匂いを散りばめた

夕暮れの交差点

ありふれた光景の片隅に

君の姿をみつけた


小さな子供の手をひいた

ピンクの手袋がまぶしくて

「君は今 幸せ?」

分かり切った問いかけを

心の中で繰り返し


僕に気づかない君が今

目の前を通りすぎる


君が残したものは

心を酔わす甘い香りと

手のひらに降る雪のように

滲んで消えた鮮やかなメモリー


もしも昔に戻れたら

何度そう願ったろう

若すぎたあの頃 愛だけは

色褪せないと信じてた


電車が通ると揺れた部屋

ままごとみたいな時が過ぎ

編みかけのセーター残し

いなくなった君

あの夜もこんな雪だった


大人になった君が今

目の前を通りすぎる


僕が失くしたものは

悲しい夢の優しい続き

手のひらに降る雪のように

儚く消えた ひと冬のメモリー


ふたりの足跡もやがて

この雪が消してしまうだろう


君が残したものは

心を酔わす甘い香りと

手のひらに降る雪のように

滲んで消えた鮮やかなメモリー

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