09話.[無駄にするなよ]
「ひ、久しぶり」
「仁菜か、上がれよ」
「お、お邪魔します」
もう八月になっているから確かに久しぶりだった。
喧嘩なんかをしたわけでもないのに何故かここまでいられなかったが、幸い色々な存在がいてくれているおかげで気にならなかったことになる。
「名と関係を戻したのか?」
「ううん、まだお友達のままでいるよ」
「俺は寧と付き合い始めたが、そうか」
「寧ちゃんから聞いたから知ってるよ、おめでとう」
まあでもこれから夏祭りとかあるし、行こうと思えばプールや海にも行けるわけだからそう時間はかからないだろう。
いかに休みたがりの彼女だとしてもそういうイベントってやつには勝てないのと、名が放っておかないだろうからだ。
「ありがとな、ミキを連れてくるから待っていろ」
そのミキは変なタイミングで変身して最近は疲れ気味で休んでいるのだ。
無駄にするなよと言っても聞いてもらえない、ちゃんと優先しているのに安心できないみたいでな。
「ごめん!」
「え、は?」
いきなり礼を言われるのもあれだが、いきなり謝罪をされるのもこういう反応になるのか。
いやそれにしてもなんの謝罪だよ、面倒くさいことにするのはやめてもらいたいところだが果たして。
「……自分の都合が悪くなったときだけ和平を利用しちゃったから」
「あ、それって名と別れた日のことか? 別にいいだろ、俺なんてどんなときでも仁菜に助けてもらっていたんだからな」
なんだよそんなことかよ、そんなことで責めるような屑ではないぞ。
だが、謝った後も暗い顔をしていたから頭に手を乗ってけてみた。
「大丈夫だから気にするな」
「うん……」
「この話は終わりな、ミキを連れてくるから待っていろ」
で、部屋に戻ったら変身した状態で寝ているミキが……。
あまり言いたくはないが馬鹿かと言いたくなる。
なんでこんなに弱っているのかを自覚できていないわけではないだろうからこれもまたいつものあれだ。
「こら」
「痛い……」
別に耳を掴んだとか腕を引っ張ったとかそういうことではない。
「仁菜が来ているから戻ってくれ、あとむやみに変身するな」
「服を買ってもらったからせっかくなら着たかった」
「いいから戻して休め、弱っているミキを見たくねえ」
一階まで運んでそれから仁菜の足の上で休んでもらった。
「ミキちゃん久しぶりっ」
「にゃ……」
「あれ、お疲れなの?」
「にゃ、にゃにゃにゃ」
「なるほど、和平のために頑張っているからなんだね」
何故か昔からミキが言っていることを分かるから不思議な存在だった。
俺でもできないことを当たり前のようにしていて、しかも懐いていたから嫉妬したこともある。
とにかく、いつも通りとまではいかないものの、仁菜は笑顔だったから安心できたのだった。
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