第9話 次から次へと
「危機一髪だったな」
俺たちが逃げ切ると同時にさっき居た場所が火の海になっている。そこら辺一帯にあった木や花が全て燃えてしまっている。
あと1秒遅ければ俺たちも同じ目に遭っていただろう。
(本当に危なかった。ここがどこか分からないから気を抜いちゃダメだ)
(また遥に守ってもなっちゃった。私も気を引き締めなきゃ)
それぞれがここがどこか、どれだけ危ないかを再確認する機会になった。
ただこっちの世界で言うとおそらく夜である。光がほとんどないため火がより際立って見える。
遥と美奈は洞穴を見つけると夜を明かすことにした。
「美奈は寝てていいぞ」
そう言うと美奈は素直に寝た。かなり疲れていたのだろう。
見張りをするため外を見てみると、奇妙な生物がうろうろしている。これがもしKYの送り込んだ生物だとしたら…
そう考えると遥は背中がゾッとした。
一人ひとりが人間と化け物の間のような見た目でとても強い。この間神社で戦ったやつよりははるかに強い。今の俺ではまず勝てない。
(生き残るためには俺が強くならないと)
そう考えていたら急に強い眠気がきて、意識を失うような感じで寝てしまった。
こんな夢を見た、
暗闇に俺は1人で立っていた。そこから下を見るとたくさんの子供たちが拷問を受けていた。ただその子供たち一人ひとりが子供とは思えないほどの能力を所持している。
そして正面を見ると俺の方を向いている人がいた。顔は影で覆われていてよく見えないが何故か懐かしい感じがする。
「力を忘れているのか」
いきなりそう言われた。そこで目が覚めた。
(力を忘れているとはどういう意味だ?)
時間帯は朝になっていた。美奈が先に起きて待っていた。
「おはよう」
「おはよう」
「何か危なかったことはないか?」
しっかりと安全確認をする。
「大丈夫だよ」
安心した矢先、すぐに別の問題がおきる。
食料がないのだ。半径1km以内にあった飲食店などを探すか、それとも自分たちで集めるか。
今後のことを考えると後者だろう。前者は電気もないし、本当に作れる料理が少ないうえ探すのにどれだけ時間がかかるか分からない。
幸いなことに俺にはサバイバル経験があるため、生きていけるだけの知識はある。ただこの世界がどのような仕組みでできててどのようになれば地球に帰れるのかが全く分からない。本部に連絡を取ろうとしたがネットがないため繋がらない。ただKYからの連絡は一方的に届く
『お前らはここに閉じ込められた。助かりたければこれからのピンチを切り抜けることだ』
『ヒントを1つやろう。昔を思い出せ』
「どういう意味だ?昔の事か、くそ!全く思い出せない」
この言い方と夢が一致している。力の使い方?そんなものがあれば今にでも取り戻したい。ただ本当にあるとしても今の俺には分からない。
俺は物心ついた時から殺し屋本部にいたから、それより前の記憶がないのだ。
(俺は生まれてからこれまでずっと殺し屋をしてきた。その俺に昔の出来事などあるものか)
ただやはり美奈を守るためにはその力が必要になると遥は感じている。
これまで遥は依頼を受けて殺すここまでの流れが基本であった。よって訓練では立ち回りや小技などの実力者にはあまり通用しないような技ばかりある。唯一得意な拳銃もこの間は通用するがこれから通用するかと言えば話が変わってくる。
この間使ったカウンターも自分が受けたダメージが大きすぎると跳ね返せずそのままくらってしまう。
だから自分で強くなるしかないのだ。
このような考えをまとめて遥がたどり着いたひとつの答えは戦いまくること。
理由としては1つは経験を積むこと、2つは夢で見た能力を解放に近づくために上の結論に至った。
しかし周りは乾燥しきっていて、温度も40℃近くある。
戦うには地球よりも環境が悪く、さらには足場も悪く地球と同じように戦えない。
まずはこの環境になれる必要がある。俺は昔から訓練を受けているが、普通の人間なら身体にダメージをおっていくだろう。なるべく早めにここを脱出したい。出口を探したいところだが、
「やっぱりそう簡単にはさせてくれないか」
遥のところにゆっくりと歩いてきてる明らかに人間の形をしていない、どちらかと言えば虎とコウモリを混ぜたような見た目だ。
「お前が遥か?」
「だったらなんだ」
「恨みはないが殺させてもらう。俺はそのために作られたんだからな」
(この見た目で喋るのか、ちょっとキモイ)
ただ実力は本物だ。
俺はすぐさまハンドガンを用意し、前通用した撃ち方をしてみる、ただ難なく避けられてしまった。
「なんだその子供騙しはよ」
(やはりこいつはヤバい)
「今度はこっちから行くよ」
そういうと遥に向かって飛んできた。遥には反応出来ない速度だったため。みぞおちを殴られ壁に叩きつけられてしまった。
たった1発で意識が朦朧としている。急所を殴られたため体に力が入らず頭で何も考えきれない。
(ヤバい…頭が回らない)
「トドメだ」
そういうと遥の腹を殴った。
遥は気絶をしてしまった。
どれくらい時間がたったのだろう。目が覚めた。
(生きているのか)
まだ体が痛む。どうして生きているかは分からない。ただ運が良かったのだろう。休むために元の洞穴に帰ることにした。環境が環境のため歩くだけでもきつい。
「遥どうしたの?」
そういうと美奈が駆け寄って来てくれた。美奈の肩を借りながら戻ることが出来たのですぐに休むことにした。
「私は何ができるのかな」
美奈はすでに自分が足でまといになっているのではないかと思っている。いや、確信している。
戦いでは役に立たなくても日常生活とかで少しでも役に立たなくてはいけないと考えた。
美奈は周りを歩いて少しでも役に立つものがないかと探していくと、畑を見つけた。
(あそこに何かないかな)
おそらく半径1キロ以内にあったのだろう。畑を覗くと、人参、じゃがいも、いちごが育っていた。
収穫をするために手に持っているバッグの中身を置いて、詰め込んでいく。
(私は少食だから大丈夫だけど春茶に足りるかな)
洞穴に戻ると遥が起きていた。
「何をしてたんだ?」
「ほら、遥見て」
そう言って収穫した野菜を見せる。
「おぉ良かったな。これで美奈の食料は一時持つだろう」
(俺は1週間くらいは食べなくても生活できる)
「え?遥の分だよ」
お互いに譲り合う状態が1時間ほど続いた結果2人で分け合うことにした。
するとそこへ2人、いや2体のロボットがきた。
「なんでもありだな」
2体とも体格が大きく3m程あり腕も太い。
「全く次から次へと」
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