第600話 鳳と金剛石

 オレの名前は鳳健吾おおとりけんご。入社三年目の新米ぺーぺーさ。

 今、オレは獅子堂課長に推薦されて無期限の海外転勤を実行中。飛行機に乗り、海を挟んで隣の大陸へゴォォォと渡米したフライヤウェイ


 その後、色々なトラブルがあったものの、何とか衣食住は確保出来た。“住”に関しては同僚であるダイヤ・フォスターの部屋に居候と言う形でお世話になっている。

 ダイヤは中々癖のある同僚だが良い奴だ。その家族とも仲良くさせて貰ってる。(一部例外あり。主に次女)

 今日も元気に仕事だ。米国の大都市ニューヨークは自由の女神が太陽に照らされる程の澄んだ晴天だぜ。


「あれ? ダイヤ戻ってないの?」


 出先での仕事を終えて昼下がりにホットドックを食べ歩きながら、帰還したオフィスには先に帰ってるハズの同僚の姿がなかった。


「ん? なんや一緒や無かったんか?」


 回転椅子をくるっと回してこっちを向く、関西弁を話すアメリカ人はマックス。ショートドレッドの金髪が特徴のサンボ選手である為、それなりにガタイは良い。


「オレは現場で別れたけど……」


 出先での仕事は公園の清掃の手伝いだった。

 ブルックリンブリッジパーク。良くオフィスの面々でBBQに行くので見慣れた場所だと思ったが細かく回ったら規模がヤバかった。

 ボランティアも10数人ほど参加していたが、フィットネスパークの側面もあるほどに広大な敷地を全て掃除するのは一週間はかかるだろう。


「全く……どこをほつき歩いてるんだか。明日もエルダーさんに呼ばれてるってのに」


 エルダーさんは今回の清掃を企画した初老の富豪さん。同僚のダイヤをお気に入りの様子で、孫娘みたいに慕ってくれている。当人も健脚で一緒に清掃していた。普通に良い人。


「明日もパークの掃除か?」

「まぁな」

「なら、俺も時間が合うなら行くのだが」


 と、名乗りを上げてくれたのは大陸系アメリカ人のヴェイグである。細目が特徴のパルクール選手で、日本の忍者と思える程に身軽なヤツだ。


「いや、オレとダイヤの仕事だ。各々の仕事の割り振りはきちんとしようぜ」


 一人一人に割り振られる仕事はきちんと期間内に終わるように調整されている。海外支部はまだ稼働したてなので、まずはこの形態に慣れる事を軸に置いている。


「ニックス、ダイヤに連絡してみろ」


 オフィスの一番奥に座る銀髪のロシア系アメリカ人のクラウザーは海外支部の部長だ。オレはチーフって呼んでる。


「わかりました」


 スマホを取り出して連絡しようとするとLINEがぴろんと音を鳴らして、メッセージを入れてくる。ダイヤからだ。

 ったく……どこで油売ってんだが――


“Help me~”


「……は?」


 メッセージはそれだけだった。


 これは、オレがアメリカに渡米してから半年後。生活環境やダイヤの家族との関係に馴れてきた時に起こった、マフィアの倉庫に突っ込んだ時の話である。






 Help me? ヘルプミー? 助けて? どういう事だ?


 オレはポチポチと“今どこだ?”と英語で返信。すぐに送り返したのだが、既読がつかない。


「なんや? ダイヤから連絡か?」

「マックス、コレどう思う?」


 オレはLINEの“Help me~”をマックス見せる。


「助けを求めるやん」

「いや、それはわかるんだけど……返したオレのメッセージに既読がつかないんだよ」

「緊急事態じゃないのか? それ打つので精一杯だった可能性がある」

「いや、だったら“~”は入らないだろ。アイツ、絶対余裕あるぜ」


 ヴェイグも会話に加わる。

 何かとサプライズ好きなダイヤの事だ。

 アイツは何かと騒ぎ立てるカーニバルガール。仕事は出来るが、ちょっと目を離すと制御不能で坂道を転がり続けるのでオレとペアを組むように言われてる。


「ニックス、ダイヤのスマホのGPSの位置情報を調べろ」


 オレらの会話を聞いていたチーフが何か思い当たる様子で指示を出す。

 仕事中は社内支給のスマホを使っているので位置の特定は簡単だ。オレは自分のデスクに座ってPCにあるGPSアプリを起動。ダイヤの位置を割り出す。ん?


「どこだった?」

「なんか……街中の建物を指してます」

「どこや?」

「ここは……」


 マックスとヴェイグも覗き込んで来る。

 ダイヤのスマホのGPSはミッドタウンにあるホテルの一つを差している。

 会社とは正反対の場所だ。なんでこんな所に居るんだ?


「……今日の業務は終了にする。三人とも準備しろ」


 そう言ってチーフは立ち上がった。


「どこに行くんです?」

「Miss.ミザリーに会いに行く」


 名前からしてヤバそうな女の予感……






「チーフここって……」

「行くぞ」


 夕刻。徐々にイルミネーションの光に包まれつつあるニューヨークで、オレ達三人はチーフの運転する車に乗って一つのホテルへ足を運んだ。

 そこはミッドタウンの中でも最上位とされるホテルの一つだ。ロシアの会社が経営しており、内装も綺麗だった記憶がある。

 車はそのまま地下駐車へGO。

 地下ゲート前で止められるも、チーフは門番の人とロシア語で話して通してもらった。


「普通に入れましたね」

「ここの責任者とは前に一度話した事があってな」

「初耳やで、クラウザー」

「良い話ではなかったからな」

「なるほど……それで我々を連れてきたと言うワケですね」


 マックスもヴェイグは何かを察した様子。オレは全然わかんない。聞いた方が良いかな。

 車は空いている場所に止まるとオレらは車から降りる。


「ニックス。ダイヤのGPSの位置はまだここか?」

「えっと……そうです」


 オレはアプリの入った自分のスマホを見て場所を確認。GPSは動いていない。


「マックス、ヴェイグ。私と一緒に来い」

「おっけーや」

「後ろを警戒します」

「ニックス、お前はここで待機だ」

「え? オレ待機?」


 車から降りる三人に釣られてオレも降りるがどうやらお留守番らしい。

 あ、ちなみに“ニックス”ってのはオレの呼び名ね。

 名字の鳳→フェニックス→ニックス(長いので頭をとって)って感じ。


「あのー、チーフ。説明が欲しいんですけど……」

「後でする。ダイヤを動かされる前に取り戻す。もし、我々が30分経っても戻らなかったらニューヨーク市警に通報するように」


 取り戻す? 通報? なんか……物騒な事になってきたなぁ。ダイヤ絡みになると妹のサンがすっとんで来るだろうし、間違いなく大事になる。

 オレの不安をよそに三人は来客用の扉から中へ入って行った。


「うむむ」


 海外支部の面々とは半年の交流を得て、大体の経歴を把握している。


 マックスは生粋の日本マニアだ。なので、オレの事をあだ名じゃなくて名前で呼ぶ。黒帯に憧れて何故かサンボをやっていると言うワケわからない思考をしているが、普通に日本が好きなだけだ。


 ヴェイグはアフリカの民族出身で、出稼ぎにやってきているらしい。なんでも、悪霊と戦う呪術師シャーマンの末裔とか。


 そして、チーフことクラウザーは元特殊部隊出身だと言う噂がある。あくまで噂だ。ダイヤがフレンドリーに聞いてもはぐらかし、マックスを近接格闘術CQCっぽい動きで手玉に取り、ヴェイグ以上にナイフの扱いに長ける。

 オープニングメンバーの人選は社長と轟先輩が立ち会ったハズなのでオレは先輩に連絡してチーフの事を聞いた。すると、


 良い人だよ? 会社も安全だからね。


 だそうだ。まぁ、チーフのどっしりとした安心感は本社の獅子堂課長に通じるモノがあるので、異論は無い。


「自由の国アメリカだもんなぁ。いろんな人が居るよ、そりゃ」


 しかし……社長はどういう基準で今の海外支部のメンバーを集めたのだろうか? 昔、海外を放浪していたと言う話は轟先輩から聞いたけど、その時にコネでも出来たのかな? 特殊部隊とコネってどういう事だよ。


「チーフを探ると社長の謎も深まるなぁ」


 すると、駐車場への扉が向こう側から開いた。早すぎるが、三人が帰ってきたのかと思い、視線を向けると。


「ん? あれ?」


 約20年前にオレの故郷である『神ノ木の里』から失踪した圭介おじさんが現れた。






「やれやれ。こちらで事業を展開するには苦労しそうだな」

「既に地盤が確立されていますし、大都会への参入はマネージメントリスクが高いと思います。トラブルが起こればデュークがこちらへ出向く必要がありますし」

「海を越えてまで益を増やす必要は無い……か。企画は小規模にしよう」


 てな会話が少しだけ聞こえるが、そのまま車に乗って行ってしまいそうだったので、オレは咄嗟に話しかける。


「嘘……圭介おじさん!?」

「ん?」


 オレが驚いた声を上げると、おじさんは不思議そうに視線を向けてくる。そして、オレを見るなりその表情はみるみる驚いたモノに変わり――


「まさか……ケンゴかい?」

「ちょっ! 今までどこに居たのさ!」


 本人だったのでオレは思わず駆け寄る。

 彼の名前は白鷺圭介しらさぎけいすけ。父さんの親友の一人で、ジジィの一番弟子。短い間だったけど、一緒に寝食を共にしていた父親の様な存在である。

 オレは駆け寄ると、隣に居るガタイの良い男が前に出る。


「リック、いい。彼は私の親戚だ」


 おじさんがそう言うと、男はスッと前を開けた。


「久しぶりだね、ケンゴ。そうか、もう20年も経つのなら成人か。格好いい大人になったね」

「え、そう?」

「将平にそっくりだ。目や表情はアキラさんを思い出す」


 おじさんの口から出た、将平、アキラ、の名前はオレの父と母である。二人は昔、事故で無くなって――ってそんな事よりも。


「今何やってるのか知らないけどさ。ジジィめっちゃキレてるよ? 絶対に日本には行かない方がいいって!」

「それも覚悟の上さ。師が私の元に来たとしてもソレは受け入れるつもりだ。タダでは殺られんがね」


 ワァオ。雰囲気的に一大勢力を築いている様で少し安心。ジジィなんて日本を離れればタダの夜闇に隠れるのが上手いだけのブーギーマンだからな。


「ところで、ケンゴ。何故ニューヨークに居る? まさか『神島』の――」

「いやいや、無いよ。無い。オレは就職してる会社の転勤案件で今こっちで仕事してるの」

「ほー、そうか! それは良かった!」


 とても嬉しそうにおじさんは、そう言ってオレの肩に手を置く。そんなに喜ぶ事ある? ってくらい、良かった本当に……と感無量な感じだ。


「おじさんは仕事?」

「ああ。拠点はイギリスの方にある。今回は事業の新規開拓に来たのだが、ニューヨークは既に地盤が整っている。外様が割り込むのは難しいな」

「空いた椅子はすぐに誰かに座られちゃうからね」


 世界経済の中心とも言われるニューヨーク。そこへ参入するだけでも数多のリスクや手間が必要になるだろう。


「お前の会社は日本が本社なのかい?」

「そー、こっちは海外支部ってところ」

「なら、社長さんは相当なやり手だな。ニューヨークに支部を立てるのは並大抵ではないからね」

「半年前に稼働したばかりで、まだフワフワしてるけどね」


 現地にきちんと着地させるのが、オレの役目だ。獅子堂課長と鬼灯先輩の期待を裏切らない様に日々を全力疾走中である。


「おじさんは、何かの社長的な事をやってるの?」

「まぁ、そんな所だ。それに――」

「デューク、そろそろ……」

「ああ、少し時間を押してしまったな」


 まだまだ話し足りない所だが、互いに予定が進行中だった。


「じゃあLINEしようよ。そしたら気軽に話せるじゃん」

「そうだね」


 オレは個人用のスマホにて圭介おじさんとLINEを結ぶ。ジジィに密告するつもりは無いが、おじさんの事情も知りたい所だ。


「機会があればこっちに遊びにおいで。妻と娘を紹介するよ」

「娘さん? 滅茶苦茶聞きたいところだけど。次の楽しみにとっとくよ」


 オレはいつまでニューヨークにいるかはわからないが、今の忙しさが落ち着けば訪ねる機会もあるだろう。

 オレの返答におじさんは微笑むと、用意してあった乗用車の後部座席に乗って去って行った。


「とんだエンカウントだったなぁ。よし」


 オレはLINEでミコ婆(ジジィの妹)に連絡する。圭介おじさんとインドで遭遇、ガンジス川で洗濯してましたよ、っと。コレに釣られたジジィは、きっとインドに飛ぶだろう。うけけ。


「うぷぷ」


 ガンジス川付近で圭介おじさんを間抜けに捜すジジィの姿を想像すると笑いが込み上げる。

 そんな事をしていると、またもや内部からの扉が開いた。三人が帰ってきたのかと思ったら。


「……何とかエスケープネ」


 辺りを見回しながらダイヤが顔を覗かせていた。ったく、アイツ……本当に何をやってるのか。皆に迷惑をかけやがって。






「おい! ダイヤ!」


 オレが事情を聞こうと少し怒り口調で声をあげる。するとダイヤは警戒する視線を向けたが、オレだとわかると逆にパァ、と明るくなり、ダッ! と走ってきた。

 ここで、彼女の事を少し紹介しよう。


 ダイヤ・フォスター、23歳(同い年)。

 フォスター家四姉妹の長女。美人。巨乳。モデル体型(いくら食っても太らない)。巨乳(二回目)。フレンドリー。ハグ女。後先考えない。キス魔。


「ニックスー!」


 そのままハグの構えで腕を開いて迫ってきた。良くあるアメリカ人特有の近い距離のスキンシップだが、ダイヤの場合は一味違う。

 オレは迫る暴れ牛をかわす様にサッと身を翻す。


「お前! 今までどこにいたんだ!? ちょっと目を離した隙に消えよってからに!」

「色々アッタんダヨー! 取りあえずハグプリーズ!」


 オレはダイヤと一定の距離でジリジリ間合いを取る。

 ハグを狙うダイヤとソレを絶対に受け入れてはならないと知っているオレ。

 普通なら美女巨乳のハグなんて、男ならご褒美じゃん? しかし、事情は少し複雑だ。

 何故なら巨乳美女のハグを受ければ男は無条件で全てを許してしまうからである。あの豊満な胸の柔らかさを正面から感じてみなよ? 全ての感情が“煩”に傾くから。そうなったら“まともな判断”なんぞ全て消える。

 そして、今必要なのは“まともな判断”なのだよ。


「お前なぁ……チーフ達と一緒に迎えに来たんだぞ? ちゃんと説明できるんだろうな?」ジリジリ……

「ノープロブレム、ヨ。とにかくハグとキスをサセロヨ!」ジリジリ……


 このハグキス中毒者め! その胸にある二つの凶器がオレの理性を殺すんだ! 三人が戻るまで理性だけは絶対に死守せねばならない!


 すると、バァン! とダイヤの出てきた扉が勢い良く開いた。今度はなんだ!?


「居たぞ! あそこだ!」

「アッ!」


 すると、ダイヤはサッとオレの後ろに回った。扉から出てきた男達は動きやすいラフな服装に上からジャケットを着ている。耳にはインカム。胸には膨らみが見える。どう見ても銃です。ダイヤ、お前なにしたんだ?


 ドタドタと扉から出てきた男達は計五人。しかも、全員が屈強な肉体にてオレとダイヤを扇状に囲む。背後は乗ってきた車なので逃げ場はない。


「Miss.フォスター。戻ってもらいます」

「イヤデース! オマエラ頭オカシイヨー!」

「ちょっ、ちょっと――」

「貴女に拒否権はありません」

「ソッチの都合デース! ポリスに行きますヨー!」

「我々の権力はニューヨーク市警に左右されないのです。ですから大人しく――」

「ちょっと! 待てぇぇい!」


 オレが大声を上げると、全員が押し黙る。オレを挟んで会話するの止めろ!


「説明してぇ! 誰か! 頼むから!」






「些か、アポイントが強引ではなくて? Mr.クラウザー」


 ミザリー・ボイルド。

 このホテルの支配人であり、威厳のある淑女と言う雰囲気がこれ程似合う者はニューヨークでも彼女くらいだ。彼女が取り仕切る様になってからホテルは利益が倍に膨れ上がった実績がある程の手腕を持つ。


「手段を選んでいる場合ではないと判断したのでな。Miss.ミザリー」


 クラウザーはミザリーと応接室にて対面していた。この場所に足を踏み入れる事が出来るのはVIPの中でもミザリーが認めた者だけである。


「今回の件は少しばかり強引が過ぎますわ。強引なのは嫌いじゃないけれど……エレガントに欠ける行動はナンセンスよ。ワタクシ、これから大事な予定があったのに」


 応接室の外では、ミザリーの部下が何人か気を失っている。建物に入ってから強引にこの場へやって来た証明だった。

 現在は、クラウザーの側にマックスとヴェイグが立ち、ミザリーの側には選りすぐりの部下が二人睨みを効かせている。


「よく言う。先に事を起こしたのはそっちだろう?」


 クラウザーの問いにミザリーはキセルを吸いながら悠々と視線を向ける。

 マックスとヴェイグもそれなりの場数を越えている故に現状に物怖じしなかった。


「ダイヤ・フォスター。俺の部下だ。返してもらおう」

「言いがかりですわ」

「間違いなくここに居る」

「証拠は?」


 クラウザーはダイヤの携帯のGPSの位置情報を表示してミザリーへ見せた。


「ここだ。他に言うことは?」


 ピリッと場に緊張感が走る。ミザリーの部下二人は上着の前を開けた。ソレはいつでも銃を抜ける合図の様なモノ。


「ワタクシの好きなモノを知ってるかしら? 心臓を鷲掴みにされる事と“調教”ですわ。刺激のない日常なんてうんざり」


 その言葉にクラウザーが動き、ミザリーの首に手を掛ける。同時にミザリーの部下が銃を抜き、一人がマックスとヴェイグに、一人がクラウザーの頭に銃口を向けた。


「撃ってみろ。脳を撃ち抜かれたとしても、脊髄反射でお前らのボスの首も圧し折れる」


 クラウザーはミザリーから目を離さずに銃口を向ける部下に言う。マックスとヴェイグは流石に動けずにいた。


「ギリギリギリと……心臓が締め付けられるこの感覚……はぁぁ……とても心地良いですわ」

「部下を返してもらおうか」


 クラウザーはギリっと握力が入る。向けられる銃口もいつ撃たれてもおかしくない緊張感が場を包んだ。

 すると、ミザリーはテーブルの上にコト……と一つのスマホを置く。ソレは、ダイヤに渡されていた社内支給スマホである。


「ソレを道端で拾ったのですわ。連絡が来たから咄嗟に返しただけ」

「…………」

「辻褄は合っているのではなくて?」


 クラウザーはミザリーの首から手を離す。その瞬間、部下は引き金を引こうとしたがミザリーが、止めなさい、と制し二人の銃を下げさせた。


「……どこで拾った?」

「ブルックリンブリッジパークですわ」

「…………」


 クラウザーはそのスマホを手に取ると立ち上がる。


「……疑って悪かった」

「いいえ。とても心臓が締め付けられました。ふふ。また、ワタクシに付き合ってくださる? Mr.クラウザー」

「次に会うときはこんなレベルじゃない」

「オホホ」


 行くぞ、とクラウザーはマックスとヴェイグを連れて応接室を後にした。


「クラウザー、こいつはちょいとマズイんとちゃうか?」

「警察の対応は遅すぎますか?」


 クラウザーを先頭に廊下を歩きながらマックスとヴェイグが告げる。ダイヤのスマホを拾ったなどと明らかな嘘は二人も見抜いていた。


「ミザリーは『カラシコフ』の総帥の孫娘だ」

「! マジかいな」

「厄介ですね」


 『カラシコフ』。ロシアの裏社会でその名前を知らない者は居ないほどの一大勢力である。現在彼らは、数多の先進国へ“根”を張る為に各国に支部を立ち上げる為に手を広げていた。


「ニューヨーク市警に詰め寄られても、追求はかわされるだろう」

「じゃあ、どないするんや?」

「先にダイヤを救い出す」

「しかし、返しの報復があるのでは?」

「顔を隠して乗り込む。ダイヤの居所がわからなくなる前に、ここから助け出すことが先決だ」


 既に位置情報を示すスマホの存在は割れた。ダイヤがどこかに移動させられてしまうと本当に足取りが掴めなくなってしまう。


「キャシーから装備を買う。各々の役割は追って指示を出す。今夜中に終わらせるぞ」


 そう話しながら三人は地下駐車場へと戻ると、車の前にケンゴが俯せで倒れ、ビクビクと痙攣していた。


「ん?」

「ニックス!?」

「うわ! し、死んどる!?」

「し、死んでねぇ……」


 マックスの言葉にケンゴは何とかツッコミを入れた。






 クラウザー、マックス、ヴェイグが戻る数十分前。オレはダイヤを庇いつつ、状況の説明を男達から聞く。


「我々のボス、ミザリー様は“調教”とギリギリの緊張感が何よりも好きなお方だ。そのどちらかを常に感じて居なければ生を実感できない程にな」

「フザケンナヨー!」

「そして、此度にそのお目にかかったのはMiss.ダイヤ・フォスターだ。全てに置いて類まれのない逸材とボスは評価している。彼女のような存在を完璧な存在へと調教する事をボスは望んでいる」

「ウルセー!」

「故にボスがMiss.ダイヤを側に置くことは必然と言える。拉致も仕方ない。運が良いな、Miss.ダイヤ。貴女の生涯の安寧は約束された」

「イー!」


 おいおい。無茶苦茶じゃねーか! 何が拉致も仕方ない、だ。普通に犯罪だぞ。ダイヤなんて、家の中に入ってきた異物をずっと威嚇する猫みたいになって語彙力減ってるし。

 流石は自由の国アメリカ。ハンパねぇぜ。自由過ぎて、論理感がガバガバじゃねぇか!


「そこでだ、ミスター。彼女を引き渡してくれないか? そうすれば君は特別に見逃そう。後日、ボスから謝礼が送られるだろう」

「金で売るくらいならこんなところまで迎えには来ねぇよ」


 無論、オレの答えはノーだ。すると、ダイヤが後ろから抱きついてくる。


「絶対に行かないヨ! ワタシはシスターズとニックスとずっと一緒ネ!」

「うわっ! バカ! ヤメロ! シリアスな状況なのに理性がぁ!」


 そして、潰れパイの感触が背中から伝わり魂を幸せにする。その乳房は豊満であった。

 その時、パスパスと言う音と、チクって感覚。1秒後、ビビビビビ!!!


「うごごごご!!!?」

「ワッ!? ニックス!?」


 オレは全身が痺れて立ってられず、後ろから抱きつくダイヤの支えも虚しく俯せに倒れ、地面とキッス。オレのファーストキスは地面でした。ビクビク痙攣する。

 テーザー銃だとぉ……おのれぇ……ビクンビクン……


「よくもニックスヲ! 絶対にユルサナイヨ! お前ラ!」

「バカ……お前は逃げろ……」


 狙いは自分だと言うのにダイヤはオレの事を庇って男共へつっかかる。

 逃げてくれるのが最良だったが、そう言う所がダイヤ・フォスターだ。身内の為なら状況関係無しに、ヤー! と突っ込んで行く。

 案の定、普通に捕まった。離せヨー! と抵抗するもデフォルトの様にクロロホルムで眠らされた。

 そのまま駐車場に停まっていたバンに乗せられて、ブロローと何処かへ連れて行かれた。もー、あのアメリカ娘は~!






「すすみまませせせんん」


 車を背にするように起こされたオレはまだ痙攣しつつも何とか先程の情報を伝え終わった。


「いや、よくやってくれたニックス」

「本当やわ。無茶苦茶しよってケンゴ。テーザー銃がハンドガンやったら死んどるで」

「痕跡からして、バンがここを発ったのは数分前の様です。追いかければまだ間に合うかも」

「あ、その点に関しては……」


 オレは痺れる身体を錆びたロボットの様に動かしてスマホを取り出す。


「ダイヤの服のポケットにオレの社内支給のスマホを入れました。場所はGPSで追えます」


 奴らが長々と説明している間にそっと忍ばせたのだ。


「やるやんけ!」

「これで後を追えますね」


 ここからはオレらのターンだ! サンに連絡してニューヨーク市警と突撃してやるぜ。お姉様LOVEシスターもやべぇぞぉ。市警総動員騒ぎだ。S.W.A.T.とかも呼んじゃううう。くそ……まだ痺れが……


「全員車に乗れ。ダイヤを追うが、その前に準備を済ませるぞ」

「準備?」


 オレはヴェイグに肩を貸してもらって車に乗る。


「キャシーの店に行く」






「あんた達! どういう事なの!? ワタクシが目を離した隙に! 逃げられたなんてぇ!」


 ミザリーはダイヤを逃がした部下達の前で馬用の調教鞭をピシャンッ! と叩く。部下達はビクッ!


「し、しかしボス! すぐに捕えました! 傷一つ負わせること無く――(ピシャン!)ヒギィ!」

「お黙り! ワタクシの嫌いなモノは……一度手に入れたモノを奪われる事ですわ!(ピシャン!)」

「ヒギィ! ありがとうございます!」

「キィィ!!」


 ピシャン! ピシャン! と部下を順に鞭で叩き、調教された部下たちはその都度、ありがとうございます! と声を上げた。


 ピシャン! と、ありがとうございます! の流れが完全防音のお仕置き部屋で響き続けていた所、扉がノックされる。


「失礼します、ボス」

「何かしら! ノーサス!」


 総帥直属の構成員であり、お目付け役としてミザリーの側に居る黒人のノーサスはニューヨーク支部の実質No.2だった。


「逃がした“宝石”を再び確保しました」

「! 本当!?」

「はい。イーストビレッジのプライベート倉庫に運びました。あそこなら電波も遮断されますし、うってつけの環境かと」

「流石ですわ、ノーサス。流石は、お祖父様の直属、実にエクセレント。それに比べてお前達は何なの!? もっと精進しなさい!(ピシャン!)」

「ありがとうございます!」


 やれやれ。相変わらず、お嬢は好き放題やってるな……

 と、ノーサスは現状に呆れるが、ミザリーは経営者としての能力は総帥を越える器量を持つ。元々、潰れ掛けていたこのホテルを買い取り、五年ほどで以前の倍以上に成長させた手腕は本物。故に多少の横暴は黙認されている。


「ハァ……ハァ……駄目ね。この高ぶりは……綺麗な“宝石”を磨かないと治まらないですわ!」

「車を用意してあります」

「行きますわ!」


 とても美しいダイヤ・フォスターをワタクシ好みに仕上げてあげますわ……うふふ――






 ダイヤに忍ばせたGPSはイーストビレッジにある一つの倉庫で停まった。どうやらそこに運ばれた様だ。


「いらっしゃーい♪ あらやだ。クラウザーじゃない~。マックスにヴェイグも。あらあらニックスまで~。男所帯でどうしたのよ~」


 ダイヤの所へ向かう前にオレらはとある雑貨店に寄り道。それは会社の近くにある、ニューハーフのムキマッチョな退役軍人のキャシーさんが営む店だ。


「キャシー、ダイヤが拐われた。取り急ぎ、“B装備”を仕立てて欲しい。実弾抜きだ」


 その言葉にMrs.キャシーの表情が変わる。なんだろう“B装備”って……しかも聞き間違いかなぁ? 実弾って聞こえたぞ。


「本気? クラウザー。現役に戻るつもり?」

「ダイヤを助けに行く。『カラシコフ』が相手である以上、銃弾は避けられん」

「『カラシコフ』……ミザリーちゃんね。もぅ! ノーサスは何をやって居るのかしら!」

「ミザリーの経営者としての手腕は本物だ。故にある程度の自由は許容しているのだろう」

「自由が過ぎるわよっ!」


 良かった。キャシーさんもオレと同じ考えだ。ニューハーフな彼女(彼)だが、比較的にまともな思考をしている分、ギャップが凄い。


「B装備ね。四人分で良い?」

「ああ。お前達、特別な要望はあるか?」

「え? なんか通るんですか?」


 そもそも“B装備”の概要がわからないのだが……


「グローブ的なのくれへんか? 俺は多分殴ると思うねん」

「吹き矢を頼む」

「もう……武力行使の流れになってる……」

「ニックスは?」

「えっと……オレは特に無いかなぁ」


 二人に比べて何も思い付かん。


「ニックスには俺と同じモノを。装備を完了したら乗り込むぞ」

「了解や」

「わかりました」

「お、おー!」


 取りあえずシスターズに連絡しておくか。お姉様がピンチダヨー、っと。






「うげ……」

「どうしたのですか? サンお姉様」


 ニューヨーク市警として街をパトロールしていた、フォスター家次女のサンは偶然見かけた三女のリンクと道端で話していた所、ケンゴからのLINEにげんなりする。


「アイツからよ……」

「あ、本当だ」


 姉妹のグループLINEに現れた異物ことケンゴの事をサンは毛嫌いしている。理由は男と言う事と、敬愛する姉と同じ部屋に寝泊まりしていると言う事からだった。


「サンお姉様。ダイヤお姉様がピンチって書いてま――」


 と、リンクが告げようとした所、サンは既にケンゴへ連絡を掛けていた。


「ニックス! どういう事よ! お姉様がピンチ!? 説明しなさい!」

『落ち着け、ポリスガール。今、装備を整えてクラウザー達と助けに行く所だ。お前は――』

「場所を言いなさいよ! 場所を! アタシも行くわ!」

『相手は『カラシコフ』だぞ? S.W.A.T.出せんのか?』

「所長を脅してでも引っ張り出すわよ!」

『そこまですんな。まぁ、取りあえず市警は動かしてくれ。可能な限り大事おおごとにしてくれればこっちもやりやすいからよ』

「言われなくてもやるわよ! いい、ニックス! お姉様に傷一つでもあったら……アンタを殺すっ!」

『その殺意は『カラシコフ』にとっとけ。位置画像を送る』


 すると、ピロン、とイーストビレッジにある一つの倉庫が表情されたマップが張られた。


「リンク! 貴女は帰ってお姉様の部屋でミストと一緒に居なさい! 家のドアにロックをかけるのよ!」

「わ、わかりました!」


 お姉様ぁー!! 今、サンが行きますぅぅ!! とサンは署へ走って行った。






「これでよし」


 オレは移動する最中でサンに連絡して、最低限の後続を確保してもらった。これでオレらが失敗してもニューヨーク市警が何とかするだろう。


「相手は銃を使う事を前提で動くんだ。常に味方を視界の中に捉えて動け」


 チーフの適切な指示は完全に場馴れしてる。もう、ここまで来たら聞いても良いかな。


「あの……チーフって実は特殊な部隊とかに居ました?」

「その質問には国との公約で詳しくは語れない。語れるの事は、この程度の修羅場は慣れている、と言う事だけだ」

「あ、そうですか」


 それが答えみたいなモンか。マックスとヴェイグも薄々と言うか時たま垣間見える雰囲気で、ある程度は察していたらしい。

 ちなみに“B装備”の概要を説明すると、


 暗視ゴーグル(閃光対策仕様)。

 防弾ベスト。

 マスク。

 耐熱手袋。

 閃光手榴弾スタングレネード

 煙幕手榴弾スモークグレネード


 がデフォルト。それに加えて、マックスには拳の部分にバルクの着いたグローブ、ヴェイグには金属筒の吹き矢(麻痺針)がオプションで着いている。

 クラウザーとオレは暴徒鎮圧用のゴツイ、ゴム弾銃(弾数六発)を抱えている。

 これが最新のアメリカン、カチコミスタイルかぁ。まさか、オレが加害者側になるとは夢にも思わなかった。


「サンが市警を援軍に連れて来るんか……」

「もう一押し欲しい所だな」


 マックスとヴェイグの懸念は最もだ。

 サンの事だ。何がなんでも市警は引っ張って来るだろう。しかし、奴らは市警の権力の外に居ると言っていた。果たして迅速に動いてくれるかどうか……

 戦力……『カラシコフ』の威に怯まない……あっ!


「ダメ元で連絡してみるかな」


 圭介おじさんにちょっと泣きついて見よう。






 ダウン・タウンのマンハッタン、ヘリポートにて、待機していたヘリは圭介とリックが乗り込んだ事でプロペラを起動し始めた。


「ニューヨークでの会合は全て終了です。後は帰るだけですよ」

「出張に付き合わせて済まなかったね、リック」

「別になんて事ありません、師範。寧ろ、レディから他国に行くならきちんと師範を護るように言われていましたので」

「おやおや。奏恵は実に心配性だね」

「イギリスに師範は絶対に必要です。まだまだ、気に入らないと感じている勢力もいますし、用心に越したことはありませんよ」


 圭介の弟子でもあるリックは彼の家族とも仲が良い。そして、圭介の成している事に彼も救われた経緯から、この命は惜しみ無く『白鷺家』の為に使うつもりだった。


「皆、心配性だね」


 想ってくれる人たちの多さに圭介は微笑ましく笑顔を作る。ヘリはゆっくりと浮上を始めると空港へ進路を取る。


「ん? おっと」


 すると、ケンゴからLINEが入った。圭介はスマホを取り出してメッセージを見る。

 そして読み進めると真剣な顔つきになって行く。


「どうしました? 師範」


 並みならぬ様子にリックが尋ねると、


「リック、行き先変更だ」






 イーストビレッジ。

 『カラシコフ』が利用するその倉庫は表向きには運送会社を装って運用している。本来なら薬物や銃器に密輸した食品等を保管するのだが、現在は全て捌けており次の物資は入荷待ちだった。

 そこにはダイヤを拉致したバンが停まっており、ミザリーの乗った高級車がやってくる。


「お疲れ様です! ボス!!」


 車からミザリーが降りると、事前連絡を受けていた構成員達が整列し、彼女を出迎えた。


「ボス」


 ぬぅ、と肥満体質の巨漢が現れた。百キロは軽く超えていよう彼は特注の白のスーツを着ている。


「ボルツ。ダイヤ・フォスターはプライベートコンテナかしら?」

「ぐっすりだ。完全にボス待ちだよ」


 巨漢――ボルツ・パウンドはミザリーが本国に居る時からの部下である。


「うふふ……ボルツ、お土産よ」


 ミザリーは道中で買ってきたチキンバスケットを手渡すとボブは嬉しそうに受け取った。


「うひょー! ボス最高!」

「ボルツ。ボスは最高なのでは無く、完璧なのです」

「リー」


 と、ボルツの片割れに現れたのは長身の中国風の男――リー・リョクンが告げる。

 彼はボルツと並ぶと細く見えるが、その服の下には数多の暗器と殺人術を仕込んでいる。ボルツとは親友でもある。


「わかってるよ、リー。でも、最高も褒め言葉だろう?」

「ふむ。ボスに決めてもらおう。ボス、“完璧”と“最高”どちらが相応しいですか?」

「ふふ。どっちも素敵よ。ありがとう、二人とも」


 三人はミザリーが組織を成り上がる際の初期メンバーだ。この界隈を共に成り上がって来た親友でもある。


「平造は仕事かしら?」

「ボスを狙うヒットマンの噂を聞き付けてソイツを追ってるよ」

「彼はソロの方が動きやすいですからねぇ。そろそろ連絡がある頃だと思いますが」

「まぁ、良いですわ。ワタクシはこれからお楽しみだから……外はよろしくね」

「任せてよ、ボス」

「最も『カラシコフ』に絡んでくるアウトローは最早殆んど居ないと思いますが」


 この辺り一帯は既にボブとリーによって制圧済みである。イーストビレッジの一部は『カラシコフ』の管理下にあった。


「外の指揮はお願いね、ノーサス」

「お任せを」

「♪~♪~」


 部下達の頼もしい言葉を疑う事無くミザリーは鼻歌交じりにダイヤを拘束しているプライベートコンテナに入って行った。






「起きて」

「ン……ンン……」

「起きなさい、ワタクシの美しい宝石」

「ン……ウワー!? 出ター!」


 目を覚ましたダイヤは至近距離で覗き込んでくるミザリーを見て、まず声を上げた。

 元気な様子にミザリーはニッコリ笑う

 ダイヤは逃げようと身体を動かすが、腕は拘束されてダブルベッドの上に繋がれていた。


「どこダヨ、ココー!」

「ここはワタクシのプライベートコンテナですわ。ようこそ、ダイヤ・フォスター。ワタクシの“宝石”」


 ミザリーに驚いたダイヤだったが、コンテナの中も相当にヤバい。

 まず、壁はピンク色に塗装され、鞭や火の着いてない蝋燭キャンドルが配置されている。全部使えるように手の届く位置にあった。他にも快楽を目的とした大人のオモチャが多数。


「ウワー!!?」


 ダイヤはまた声を上げる。


「うふふ。どんなに声を上げても無駄。一度は逃げられたけれど……むしろ、それはこの感覚を得る為のプロセスだったのですわね。ダイヤ・フォスター。ワタクシをここまで焦らすなんて……イケナイ子……今からその声をこれからワタクシ好みに変えて差し上げますわ!(じゅるり)」


 異質な空間にて身動きが出来ずに拘束されている事に二度目の叫びが響く。しかし、ソレは逆にミザリーのサド心に燃料を注いだ。


「はぁ……はぁ……大声を上げても無駄ですわぁ。ここは完全な防音……例えジェット機の爆音ですら遮断する。まさに……ワタクシと貴女だけの世界ぃ!」


 バサッとミザリーは着ているドレスを脱ぐ。黒く派手な下着姿に、ダイヤにも劣らないプロポーションがさらけ出される。


「これから貴女は生まれ変わるのですわ! そう……今までの貴女は、偽りの姿。人は仮面をかぶって生活している。その方が社会にとって都合が良いから。けど、ワタクシはそうは思わない! 人は己を解放するべきなの! ソレを解放するのがワタクシの役目なのですのよ!」

「意味ワカンネー!!」


 ガシャガシャとダイヤは逃げようと手を動かすが、拘束している鎖はビクともしない。


「うふふ。怯えている小鹿の様……素敵ですわ」


 ギシッとミザリーはベッドの横に座って、ダイヤの頬を触る。

 ヒィー! とダイヤは恐怖でそんな声しか出ない。ミザリーはブワっとダイヤの上に覆い被さる様に動くとナイフを取り出した。


「はぁはぁ……まずは……邪魔な服を脱がせて差し上げますわ……はぁはぁ……安心して……はぁはぁ……同じものを用意させますから……」

「全然安心デキネー!」

「こらこら動いちゃダメですわ~♪」

「イヤァァァ!」


 ピンチ。






「やれやれ。毎度毎度ながら、警戒する意味はあんのかねぇ」

「ここいらは『カラシコフ』の支配下だしな。俺らが居る意味はあんまり無いよな」


 倉庫の門前を見張る構成員の二人は退屈しながらそんな会話をしていた。


「ボスのプライベート時間だ。万が一にも邪魔されない為さ」

「ボルツさん!」

「お疲れ様です!」


 そんな二人の元へミザリーから貰ったチキンバスケットを抱えた巨漢のボルツが顔を出した。


「他人の趣味は中々に理解されないのは解る。けど、ボスはいずれ『カラシコフ』を継ぐ器だ。僕たちで支えてあげようよ」

「ボルツさん……」

「もちろん、そのつもりです!」


 下の者に気を配るボルツはミザリー陣営の良心とも言われている。本来なら幹部クラスが下部構成員に声をかけるだけでも天地がひっくり返るレベルの事態だ。しかし、ボルツは性格からも部下にもフレンドリーに接し、頻繁に声をかけていた。

 彼のおかげで、サド気質なミザリーの配属になっても陣営に留まる構成員も多い。


「門前はよろしくね。僕は倉庫内に居るから」(むしゃむしゃ)

「はい!」

「任せてください!」


 そう言って食べながら去っていくボルツの姿が見えなくなるまで二人は頭を下げていた。


「ボルツさんに声をかけて貰えるだけで、これからも頑張れる気がするわ」

「俺も」


 地味なファンクラブもあるボルツ。その雰囲気に共感する二人は改めて門を護る心構えを宿すと、


「ん?」

「ん? んんんん!!?」


 ゴォォォォォ――と正面から大型トラックが突っ込んで来ていた。






 時速50キロで走ってきた大型トラックはまさに鉄塊。ガシャン! と金網の門を容易く破り、そのまま倉庫の鉄扉をひしゃげる形で挟まるとドゴーン! と言う音と共に停止した。


「な、なんだ!?」

「襲撃か!?」


 構成員が集まってくる。

 シュー、と音を出す運転席を見ると完全に潰れており誰も乗っていない。


「一体なんの騒ぎだ!!」


 外の構成員に指示を出していたノーサスが遅れて駆けつけた。


「ノーサス様! 襲撃です! 突然、トラックが突っ込んで来て――」


 すると、トラックの無事な荷台がバクンッ、と開いた。誰か乗っている。

 全員、銃を抜きトラックの荷台を確認する為に後部へ回ろうとした時、荷台の側面の小型窓が開き、中からコンコーン――と出てくる“缶”が先に視界に入る。


「! 全員、目を閉じろ!」


 ノーサスの指示と彼らの視界がカッ! と光に包まれるのは同時だった。


「うわっ!?」


 閃光手榴弾にノーサスは何とか反応するも部下達は完全に眼を潰された。

 そして次は、ボフンッと煙幕により視界が完全に覆われる。


「くっ!」


 こちらの注目を集めてから眼を潰した……素人の襲撃じゃない――

 次に、バチチ! と音が響きその都度、ぎゃあ!? と部下達の悲鳴が聞こえ始めた。






「お前達は倉庫内へ行き、ダイヤを助け出せ」

「了解や」

「ニックス、大丈夫か?」

「オレ生きてる……?」


 ヴェイグに手を貸して貰って起き上がる。

 キャシーさんに回して貰った大型トラックとマフィアの倉庫に突貫したオレは今日も生を実感していた。

 荷台には衝撃緩和材が大量にあったものの、マジで死ぬかと思いました!!


「行くで」

「ああ」

「あー、待って~」


 場は閃光手榴弾と煙幕で完全に敵側の視界は封じられている。そこへチーフは先陣を切りスタンロッドを持って怯む敵を無力し始めた。手慣れすぎてて頼もしすぎる。


『マックスとニックスはダイヤを助け出せ。俺とヴェイグは外を制圧するぞ』


 インカムからチーフの指示が飛ぶ。そこは、時間を稼ぐ、じゃないんですね。完全に勝つ気だよあの人。


『ダイヤを助けたら即座に離脱だ。こちらの証拠は可能な限り残すな』


 ちなみにオレらは特殊ゴーグルで、煙幕の中でも敵が普通に見える。

 荷台から降りるとヴェイグは吹き矢で敵を麻痺らせ、チーフの援護。オレとマックスは衝突で歪んだ鉄扉の隙間に煙幕手榴弾を投げ込み、中の視界を覆ってから侵入した。






 不明瞭な視界では誤射する危険性から銃は使えず、人数不利でありながらも状況はクラウザー達の優位に働いた。しかし、


『ヴェイグ!』

「!?」


 煙の中から奇襲を受けるのは相手だけでは無い。咄嗟に閃光に反応したノーサスは煙幕で視界を覆われつつも、恐れる事無く前に進み、侵入者の一人にナイフを突き立てる。


「来ると思っていたが……予想以上に早かったな」

「やはり、お前は一筋縄ではいかんか」


 ヴェイグに迫ったノーサスのナイフをクラウザーが抜いたナイフで受け止める。触れあうナイフの刃と刃が火花を生んだ。


「足音も四つ……片手にも至らない人数で我々を出し抜けると本気で考えたのか?」

「出し抜く気はない……仲間を取り戻しに来ただけだ」


 クラウザーは背からゴム弾銃を回し、至近距離で撃つ。しかし、ノーサスは身体を側面に向けてかわしつつ、半回転してクラウザーへナイフを振るう。

 クラウザーはソレを屈んで避けるが、その手にはナイフは無く、反対の手に持ちかえたノーサスのナイフが下から眼前に迫る。

 ソレを横に転がる様に避けつつ膝立ち姿勢でゴム弾銃を構えるが、読んでいたノーサスに銃を蹴り弾かれた。

 ノーサスのナイフが頭上から切っ先を下に向けて振り下ろされる。クラウザーのその手首を先に掴むと入れ替わる様に立ち上がり、CQCにて奪おうと動くが、ノーサスはナイフを反対の手に持ち変えていた。

 入れ替わりつつの一閃をクラウザーも少し間合いを取ってかすらせるに留める。


「……」

「……」


 クラウザーもナイフを構え、ノーサスと至近距離で対峙。双方、油断無く相対する。


「チーフ……」


 二人の高度なCQCはヴェイグに割り込めるラインを遥かに越えていた。

 自分に出来る事は他の敵を無力化し、チーフに横槍を入れさせない様にする事だ。吹き矢にて、煙幕の外の対応に回る。

 他の所から集まって来る敵に、フッ! と麻痺矢をお見舞いして、痺れさせて無効化して行く。






 オレとマックスは煙で視界が覆われる倉庫内に侵入していた。裸眼では完全に見えない視界でも専用ゴーグルを着ければあら不思議! 十分に視界が確保出来るのです。


 ドスドスドス!!


「ん?」


 なんだ? 何かこっちに巨大な塊が向かって――


「誰だお前らー!!」

「うぉっ!?」

「なんや!?」


 巨大な塊は人だった。巨漢という表現がこれ程似合うヤツは居ないほどの体格をした男。相撲取りでも大きいヤツを更に一回り大きくしたような見た目は間違いなく200キロはあるだう。それが、ドスドスドス! と走ってきて、張り手をかまして来たのだ。


「危ねっ!」


 オレとマックスは左右に別れて張り手を回避。しかし、オレは迫るその体躯にチッと触れただけで突き飛ばされた様な衝撃に尻餅を着く。

 かすっただけでこの威力。まともに受けていれば間違いなくぶっ飛ばされる。完全なる全身凶器。人類が体現できる質量の究極系だぜ、こりゃ。


「ふしゅぅぅぅ――」


 巨漢マンはオレをギラリと見る。え? オレぇ!? そりゃ、弱い方を潰すのはセオリーだけどさ! 先に強い方を潰しておいた方が後が楽だぜ?


「やれやれ。随分と騒がしくしてくれましたね」


 援護に来ようとしてくれたマックスを阻止する様に長身の男が間に入る。


「視界不良。実に利に叶っている。中に敵が何人居るか解りませんからね。しかし、ご安心を。倉庫内には私達しか居ません。それで十分なのでね」

「ボスの邪魔をするヤツは……潰す!」


 マッチメイクが決まったか……


 マックスVS長身男。

 オレVS巨漢男。


「……なぁなぁ、マックス」

「何や?」

「そっちと代わってくんね?」

「そんな隙はあらへん」


 言っては見たが、長身男からは何か冷ややかなモノを感じる。ジジィにも似た雰囲気は、裏街道を歩く事で備わる気配だ。手ぶらに見えるが、間違いなく手ぶらじゃない。


「ボルツ、死なせては行けませんよ? 我々に楯突いた事を後悔させなければなりません」

「わかってるよ、リー」


 二人とも銃は持ってる気配無いけど……フィジカルの方が強そうだもんなぁ。そうこう話している内に立ち上がる。


「死ね!」

「今、殺さないって言ったよね!?」


 巨漢のボルツがオレに張り手。しかし、遅い。オレは横に避けながら後ろに下がる。

 流石にフットワークはこっちが上か。それまで上回られたらマジで無敵の人だ。


「逃がさないよ!」


 だが、ボルツの攻撃は途切れない。張り手、張り手、張り手、張り手、張り手――

 オレはかわし続けるが、その最中に暗視ゴーグルを弾かれる。なんてプレッシャーだ! 食らえば間違いなく骨か内臓を持っていかれる。すると、いつの間にか壁が背に当たった。

 なにぃ!? 誘導されてた!? いや、偶然――


「単純だな、オマエ!」


 ボルツが勝利を確信する張り手を構える。マジかよ、コイツ……オレの動きをコントロールしてやがった。


「っ!!」

「どっせい!」


 オレは咄嗟に持っていたゴム弾銃をボルツに向けて発砲。ほぼ銃先の密着距離で、同時に顔面に張り手をもらう。

 張り手は顔面にもらうが、威力が伝わる前にゴム弾がボルツの身体を押し返した事で軽く触れる程度に留める。

 一瞬、死が見えたぜ……


「ぐううぅ……やるな、オマエ」

「どーも……」


 次弾装填――はさせてくれねぇか!

 ブォッと迫るボルツの張り手。それを屈んで横に転がる様にかわすオレ。頭のあった位置の鉄骨がひしゃげる。ひょぇぇぇ……食らえば間違いなくあの世行きだ。


「ちょこまかすんなよ」

「無茶言うな……」


 余裕のボルツはオレを見てニィと笑う。お互いに殺す気が無いってのに、火力が違いすぎる。

 ボルツは自分の優位性を完全に生かす動き。あの脂肪を前に打撃は無効だろう。手持ちの火力じゃどうしようもねぇ! しかもパワーキャラにあるまじき理性も持つ。頭良いデブはここまで強敵なのかよ! 閃光手榴弾で動きを止めつつ何とか拘束するしか――


「ん?」


 と、ボルツが停止していた。なんか、自分の手の平を見てるぞ? オレも目を凝らして見てみると、張り手で鉄骨をひゃげた時に少し切った様だ。


「い」

「い?」

「痛ぇぇぇよぉぉぉぉ!!」


 急にそんな事を叫び出して、オレに突撃してきた。連打のような張り手。咄嗟に避けるがベストを掴まれる。やっべ!!


「痛ぇぇぇぇ!!」

「うっおおお!!」


 身体がふわりと浮いた瞬間、防弾ベストを脱いで離脱。すぽ抜ける様に投げられたベストは、ビタンッ! と壁に叩きつけられる。ヒェッ。オレもああなってたかと思うと背筋が凍る。


「あぁぁぁぁ! 血ぃ! 血がぁ!!」


 ボルツは狂った様に暴れる。理性的なキャラかと思ったら北○の拳のハー○様タイプかよ。そんなモンが――


「リアルに居るんじゃねぇぇ!!」

「痛てぇぇぇぇよぉぉぉぉ!!」


 追いかけてくるボルツ。逃げるオレ。ケーン! タスケテー!!






「ボルツを暴走させてしまいましたか。ああなれば止められるのはボスか私しか出来ません。あちらの方はお気の毒に」

「気にすんなや」


 マックスはトントンと拳を構えながらボクシングのフットワークで構える。


「ああ言うヤツは燃費が悪いねん。逃げ回ってたら勝手にバテるやろ」

「それはあり得ません」


 リーは腕を広げてノーガードを見せつける様にマックスに身体を開く。長い腕も相まってトラバサミのような雰囲気を感じた。


「私が居るのでね。ボルツの欠点は埋められるのですよ」

「ハッ! とんだユージョーパワーやな!」


 マックスが攻める。緩からのステップを入れた急速接近。見た所、リーには大きな得物はない。つまり、即死を取るような武器は無く、あっても暗器。防御は防弾ベストに任せて攻撃を優先的に当てる。


「ふふふ。踏み込みますか? 私の領域――」


 と、リーが喋っている所にマックスの拳が顔面を捉える。クリーンヒット。うぶぅ!? とリーは鼻血を出して仰け反った。


「や、やりますね……中々に速――ぶふっ!?」


 更に左フック。右アッパー。左ボディで身体を折り曲げさせて、両手を組んで後頭部を打ち下ろした。

 うごぉ!? リーは地面に顔面を激突させる。


「なんや? オタク、めっちゃ弱いやん」


 あっさりとした幕引きにマックスは、鬼ごっこをしているケンゴを助けに行こうと視線を向ける。と、


「――な!?」


 ガクンッ、右足の力が抜けた。咄嗟に膝立ちをするが、左腕も力が入らず、ダラン……となる。

 見ると関節部に小さな針が刺さっている。


「人間には動きを司る“点”があるのです。私はソレを穿つのが得意でして」


 リーが背後でゆらりと幽鬼のように立ち上がった。


「それと、知っていますか? 人間は攻撃している時が一番無防備なのですよ」


 その顔はダメージを負っているが恍惚とした表情をしている。リーはマックスの攻撃に合わせて小さな針を関節部に刺したのた。

 しかし、マックスの打撃は素人のモノではない。鍛えている腕から放たれるパンチを顔面に三発もまともに受けて平然としているの妙な話だ。考えられるのは――


「薬物か……くだらんやんけ!」

「違いますよ。私の特殊体質でしてね。一定のダメージを受けると痛みが快楽に変わるのです」


 マックスは関節に刺さった針を抜く。痺れは抜くと同時に引いて行った。即座に立ち上がる。


「ったく……面倒見やな」


 ボクシングスタイルを取り、キュッとリーへ向き直る。彼は相変わらず両手を広げて攻撃の隙を晒していた。


 なる程、アレは雰囲気通りに罠っちゅう事かいな。


 下手に攻撃を仕掛ければ針を貰い、行動を奪われる。アウトスタイルでジリジリ削る時間はない。ここは一気に攻める。


「耐えてみろや!」


 トンッ、とマックスは踏み込み、先程よりも動きがノッた右ストレートをリーの顔面に叩き込む。


「言い忘れましたが」


 しかし、マックスの拳をリーは蛇のようにかわした。


「今、私は分泌される快楽物質によって超集中状態に入っています」


 トトト、と突き出したマックスの右腕に無数の針が刺さり、動きが完全に停止する。


「当たりませ――ぐお!?」


 しかし、右ストレートは囮。マックスは左肩を当てる形でサンボのタックルを完璧に決めていた。本命はこっちだ。いくら痛みに強いとは言え、生物的な反射的による動きの停止は無視出来ないハズ。


「食らっとけ!」


 力の入らない右腕を左手で掴み、がっちりリーの身体を固定すると、仰け反る様に斜め後ろへ叩きつけた。


「ぐぉぉ!!?」

「くぅっ!」


 そして、ダブルダウン。リーは投げられた衝撃で全身が痺れて沈黙。マックスは投げられながらも背骨の一部に針を刺されて、首から下が麻痺して動けなかった。


「くっ……」


 口と目しか動かせない。何とかして首の針を抜いてケンゴの援護に――


「キキキ……キヒヒヒヒ!!」


 奇声を上げながらリーは、ズルリ……と起き上がった。彼は痛みによって脳内麻薬が大量に放出されて、完全な覚醒状態となっている。この状態のリーはノーサスでも止められない。


「中々でしたよぉぉ!! ここまで私を昂らせるとはぁぁぁ!!」






『――るとはぁぁぁ!!』


 リーの恍惚とした叫びは、ノーサスとクラウザーのインカムに各々届いていた。


「ああなったリーは私でも止められない。止められるのはボスだけだ」

「……」


 ナイフを持ち、互いの隙を伺うノーサスとクラウザー。倉庫内の状況は最悪だ。


「行かせないぞ? いくら『バレット』の一員とは言え、易々と抜かれては総帥直属は勤まらん」


 ノーサスの純粋な近接技量はクラウザーと拮抗している。交わる刃。CQCで互いに互いの隙を常に伺う。


「……ヴェイグ」

『こっちは動けません。下手をすれば、敵がそちらへ雪崩れ込みます』


 ヴェイグのインカムに繋いだが、銃撃音が聞こえる。他の箇所の配置についていた敵が寄って来ている様だ。

 その指示を出しているのはノーサスである。彼も戦いながら適切な指揮を執っていた。


「詰みだ。まとめて死んでもらう」


 ノーサスが勝利宣言の様にそう言った時――ガシャンッ! とガラスの割れる音が聞こえた。


 窓ガラスが割れた? 倉庫には手の届く高さに窓はない。あるとしても日光用の天窓――


 そして、突如として発生する突風に煙幕が晴れる。上空をヘリが通過し、遠くへ飛行して行く。






 やべぇやべぇやべぇ!!

 オレよりも三倍は強いマックスがやられた。致命傷を負った様子は無いが、何かやられたのか身体を動かせずにいるようだ。


「痛てぇぇぇぇよぉぉぉ!!」

「くっそー!!」


 助けに行きたい所だが、オレは追いかけてくる○ート様から逃げるので精一杯だ。少しでも足を止めれば挽き肉に――うげっ!?


 近くのペイント缶を投げられ、オレの背中にヒット。飛び道具……だと!? 派手にスッ転ぶ。


「チーフ……ヴェイグ……どっちも取り込み中?」


 倒れながら二人に助けを求めるがインカムは壊れたのか機能してない。すると、グイっと持ち上げられ近くのコンテナに投げられる。ぐほぉ!?


「痛ぇぇ――」

「オレの方が痛ぇよ……ケホ……」


 コンテナに手を掛けて何とか起き上がると、ボルツがズンズンと目の前に歩いてくる。

 いかん……殺られるっ!


「痛ぇぇぇよぉぉぉぉ!!」


 オレの顔面に向かって張り手が振り下ろされる。あぁ……死ぬときって本当に何も考えられないんだなぁ。転勤の時にリンカちゃんが見送ってくれなかった事が心残りだぁ……


 その時、バリンッ、と言う音と共に両足の靴裏がボルツの顔面に叩き込まれていた。

 オレの頭を潰されたリンゴの如くしようとした張り手が空を切る。思わず怯む程の威力にボルツは鼻血を流しがら後退。目の前に現れたのは――


「ケンゴ、間に合ったかな?」

「圭介おじさぁぁん!」


 ヘリからパラシュートにて、直接天窓をぶち破って、倉庫内に圭介おじさんが参戦した。






「くっ……」


 ヴェイグは、集まってきた敵による銃撃から身を隠すことしか出来なかった。

 引き付けておかなければ、コイツらはチーフや倉庫へ雪崩れ込む。そうなれば本当に詰みだ。


「大いなる自然よ。我が命を迎え入れたまえ――」


 ヴェイグは民族間に伝わる祈りを済ませる。それは次の行動に命をかける事を意味していた。と、


「ぐぁ!?」

「なんだ!? お前は――」


 そんな声が聞こえてこちらへの銃撃が止み、発砲音は別方向へ変わる。用心して物陰から様子を伺うと、一人の男が敵の銃を無力しながら制圧していた。


「『白鷺剣術』には限定的だが対銃戦闘も想定されている。本来はナイフでもあれば瞬殺なんだが不殺が一番の心得なんでね」


 リックは敵を後方から襲撃。射線の被る位置を巧みに移動した事で敵は誤射を恐れて銃が撃てなかったのだ。

 ヴェイグはリックに吹き矢を飛ばす。


「おっと! 待て待てミスター黒ずくめ! 俺は味方だ!」


 容易く吹き矢を避けたリックは両手を上げて告げる。


「オオトリケンゴって知ってるか? 彼の知り合いの知り合い」






 オォォォ、と効果音が聞こえて来そうな場面。倉庫内は張り詰めるような空気に支配されていた。


「ケンゴ、倒れてる彼は味方かい?」

「同僚なんだ」

「それで、例のダイヤ君はどこだい?」


 あっ! 敵のキャラがあまりにも濃すぎる故にダイヤの事がすっかり頭から抜け落ちていた。まぁ、必死だったって所もある。多分……


「このコンテナだと思う」


 オレらが背にしてるコンテナは、ガラガラの倉庫内に存在するモノとしては明らかに不自然だ。


「開けられそうかい?」

「いや……そんな隙が無かったから」

「じゃあ、彼らを制圧しようか」

「鼻……鼻血っ!? い、痛てぇぇぇぇよぉぉぉ!!」


 うわっ! 来たぁ!? オレはサッとその場を離脱。圭介おじさんもかわして――ない!?


「体重は200キロオーバーと言うところだね。中々の質量だ。その体躯ならば腕を振り回すだけで驚異だな」

「痛てぇぇぇぇよ!!」


 鉄をひしゃげる殺人張り手がおじさんを襲う! 逃げてぇ!


「ふむ」


 その時、ブワッとボルツの身体が回転した。まるで、その場で鉄棒を前転したように綺麗な回転を見せて背中からコンクリートの地面に叩きつけられる。


 古式『背落とし』。だったのだが……『背落とし』は本来、足下に潜りつつ体勢を崩し、相手の勢いを利用して投げる術だ。

 しかし、圭介おじさんは、ボルツの張り手の勢いだけを利用して、立ったままヤツをその場で半回転させたのである。


「い、痛ぇぇぇ……」


 勢い+自分の体重による衝撃をモロに受けたボルツは何とか意識を保ちつつも痺れて動けない様だ。

 おじさんはそのボルツの頭に、とんっ、と軽く手刀を入れると完全に意識を飛ばす。


「頭から落とすと死んでしまうからね。少し勢いをつけさせてもらったよ」


 手加減したんすか……


「キヒィィィィ!!」

「む」

「うわぁ!?」


 金切り声を上げつつ、リーが迫ってきた。何か不自然に両腕を開いての接近は不気味過ぎて、おじさんもボルツから離れる様に動く。オレも四つん這いでわたわたと距離を取る。


「私の友人を……よくも殺りましたねぇぇ!! 仇は取らせてもらいますよぉぉ!!」

「死んではいない。気を失ってるだけだよ」

「ウィィィィィィ!!」


 会話が出来ないってホントに嫌ぁね。威嚇するクワガタみたいに迫るリーに対して、おじさんは片手を前に出す構えで迎え討つ――


「ソイツは受けたらアカン!」


 咄嗟にマックスの声が響いた。しかし、おじさんは既にリーの間合い。何が起こるんだ?


「ほう」


 次の瞬間、おじさんは何かを感じ取った様に一歩引いた。しかし、リーは追撃する。


「何を企んでようと……無駄ですよぉ! キヒィィィィ!!」


 なんでアイツ、あんなハイになってるんだ? 普通にコワイ。すると、ゴンッ、とおじさんは突き出したまま腕を拳に変えて、迫ってくるリーの頬を抉った。


「おほぉ!?」


 少し脳を揺らされたのかふらつくリー。おじさんは突き出した自分の腕を見た。


「なる程、針か。君は点穴を打つのが上手いみたいだね」


 点穴? なんか中国拳法家が使う、打たれると相手が動けなくなるような部位だっけ?

 おじさんは先程の攻防でリーが針を使う様を見切ったようだ。


「ふふふ……そうですよ。しかし、今の私は例え種明かしをしても相手を無力する事が出来ぃぃぃる! ウィリィィィィィ!!」


 DI○にも片足突っ込み始めたリーが再度クワガタ戦術。両手を開き、おじさんへ迫る。おじさんは先程と同じ構えだ。


「ウィィィィィィ!!」

「なるほど」


 間合いに入った瞬間、リーは唐突に転んだ。それはもう、ギャグみたいに盛大にだ。尻を山の様に突き出してアラームを止めた目覚まし時計のように沈黙する。


超集中ゾーン状態は無敵ではないよ。生物的な欠点は普段と変わらないさ」


 そんな事を言いつつ、おじさんはリーの小指を結び、更に手首を結んで捕縛する。


「なんや……一体なにが起こったんや?」


 オレはマックスのうなじに刺さっていた針を抜く。突然現れて、敗色濃厚からの盤面ひっくり返しだからなぁ。関ケ原の合戦中に突然ガ○ダムが降りてきた様なモノだ。


「どれだけ脳が活性化しようとも、人体の反射を逆手にとればそう難しい事はない」


 おじさんは突き出した腕を囮に、リーを避けられない距離まで引き付けて“突き”を鼻と口の間にある急所――人中に叩き込んだと説明してくれた。


「彼は恐らく、私の拳は見えていただろう。しかし、前のめりに動いていた事でブレーキをかける事が出来ず、避ける事も出来なかった。まぁ、彼の戦闘スタイルも後手タイプと言うことも敗因だっただろうね」


 おじさんはさらっと言っているが、覚醒状態の人間相手に、容易く出来る様な芸当じゃない。

 昔から強いとは思ってたけど、ガチでジジィ並みに強ぇぇ。


「とは言え、私も歳だな。一つ貰ってしまったよ」


 と、1本だけ軽く刺さっていた針をポイと捨てる。これで全盛期を過ぎてるのかぁ。若い頃はマジで勝てる人いなかったんじゃない? おじさんが人格者でホントによかった。


「ケンゴ……このおっちゃんは何者や?」

「オレの親戚。父親みたいな人」

「彼は大丈夫かい? ケンゴ」


 リーとボルツを簡単に拘束したおじさんがこちらを気にかけてくる。


「ちょっと痺れとるだけや。ケンゴ、ダイヤを頼むわ。俺はまだ動けん」


 と、マックスは自分のスマホを投げてきた。ダイヤに忍ばせたGPSを確認しろ、という意図らしい。


「彼らの様子は私が見ておこう」

「お願いします」


 オレは見張りと敵の監視をおじさんに任せてコンテナへ向かう。






「特殊な鍵とかは無しか」


 オレはGPSの反応が間違いなく目の前のコンテナから発信している事を確認しつつコンテナをぐるりと一週。

 出入口は1ヵ所のみ。これでまたダイヤを連れて逃げられたら洒落にならん。中にはダイヤとやべー女が居るので、慎重にコンテナの扉を開ける。


「うっ……」


 開けると同時に、もわっと、女性の甘い匂いに鼻が蒸せる。甘いものでも食べ過ぎると胸焼けする感覚に近い。

 中はピンク色の塗装が施され、鞭や蝋燭に大人の玩具が壁には飾られているピンクハードな空間だ。ダイヤは……


「んんー! んんんんーっ!!」

「ハァ……ハァ……危なかったネ」


 なんか蝋燭を持って、黒い下着の熟女(多分ミザリー)を目隠しとギャクボールを着けて両腕をダブルベッドに拘束していた。

 なんか……凄いエロいハズなのに、全然エロくない。すると、オレの気配に気づいたのかダイヤは振り返ると蝋燭を振り下ろす。


「わー! 待て! オレだ! ニックス! ニックス!」


 オレはマスクを取って声を出した。


「ニックス……? ニックス!」


 シャツを下着ごと縦に切られているダイヤは、そのまま抱きついてくる。うお!? 布面積が少ない二つの実りの感触がダイレクトにぃ!?


「来てくれるってわかってたネ」


 ダイヤの安心した言葉にオレの煩悩は自然と消えた。少し震えているのがわかったので、頭を撫でる。


「皆、来てる。サン達も心配してるから帰ろうぜ」

「ウン!」






「んんんー! んん、んー!!」

「……お前、よく逆転したな」

「オチたフリしたネ。レッドカーペットレベルの演技をしたヨ」

「そんで、ミザリーコレはどうするんだ?」

「関わりたくも無いネ」


 オレは自力では拘束の取れずに、んーんー言うミザリーの入ったコンテナを、そっと優しく閉めた。






 その後、サンの引き連れたニューヨーク市警が到着し、同時にオレらはダイヤを残して撤収した。

 流石にトラックでの倉庫特攻は言い訳が見つからないので、ダイヤが誘拐されたと言う事実だけを警察には認識して貰う。

 ミザリーと『カラシコフ』の幹部陣は誘拐監禁強姦未遂と言う罪状で連行され、ダイヤはサンから、御姉様ぁ! と抱き着かれていた。

 そんな様子を見届けたオレら襲撃メンバーは撤収用にキャシーさんが用意してくれていた乗用車のある路地裏まで移動する。


「Mr.シラサギ。今回は部下共々、本当に助けられました」


 クラウザーは援護に来てくれた圭介おじさんに頭を下げていた。互いに自己紹介を一通り行ってからの会話である。


「頭を上げて下さい、Mr.クラウザー。私は親戚を助けに来ただけです。大した事はしていません」


 十分、大した事なんだよなぁ……


「Mr.シラサギ。今回の一件は『カラシコフ』との交戦となります。私どもの方は対応策はありますが、貴方は顔を晒してしまっている……」


 そう、覆面をしていたオレらとは違い、おじさんは顔を隠すモノを一切なく場に現れたのだ。『カラシコフ』に顔を覚えられただろう。


「問題ありませんよ。私の活動範囲はヨーロッパなので。それに、私が何者かを知れば逆に手を出すことは無駄な労力と悟るでしょうから」


 ワォ……本当にイギリスで一大勢力を築いてるのか。まぁ、個人的におじさんを殺そうと狙っても無理だと思うけど。

 すると、チーフは名刺を取り出すと更に番号を書き足して、おじさんに差し出した。


「私のプライベート番号です。何かあれば連絡を」

「ありがたく頂きます。それでは、こちらも」


 と、おじさんは金属のプレートをチーフに渡す。なぁに? コレぇ。


「私の名刺です。Mr.クラウザーにとって価値のあるモノになるかは解りませんが、事業面での相談があればいつでも連絡を」


 この金属のプレートは名刺なんだぁ。凄いなー。この一枚作るのにいくらかかるんだろうなー。ちょっと金混ざってるし。


 なんか、昔は縁側で隣に座ってた圭介おじさんは、知れば知るほど雲の上の更に上の存在に……


「師範」


 すると、ブォン、とバイクがやってくる。運転手はおじさんと一緒にやってきた付き人のMr.リックだ。

 近くの人間からバイクを買ったらしい。


「行きましょう。最終便には間に合うと思います」

「それじゃあね、ケンゴ。今度は同僚の皆さんとこっちにも遊びにおいで」


 Mr.リックからヘルメットを受け取るおじさんは昔、隣に座った時の優しい微笑みでそう告げる。

 立つ位置は変わってもその本質は昔と変わらない、おじさんであると改めて感じた。


「うん。こっちに余裕が出来たら行くよ」


 オレの返答を聞き、おじさんの乗ったバイクは去って行った。





「ハッハッハ! 何とも傑作だ、ハッハッハ!!」

「いや……当事者はマジで笑い事じゃないですよ」


 次の日の休日。第一土曜日恒例のブルックリンブリッジパークの浜辺で、チーフ主催のBBQにエルダー爺さんも招待して昨晩の事を話していた。

 メンバーはチーフの奥さんと娘さんに、雑貨店店主のキャシー、ダイヤを含めるフォスター姉妹、マックス、ヴェイグと、いつもの面子だ。



 本来なら仕事だったが昨晩に誘拐されたダイヤの事をエルダー爺さんに話すと、BBQの招待を条件に休みにして貰ったのだ。今はチーフがBBQを準備している間、他の面子はビーチバレーで白熱している。


「まるで、映画だね。それも酷い脚本だ」

「リアルであったんですって……本当に洒落にならないですよ」


 恐るべしアメリカ。オレは生き残る事が出来るのだろうか……

 

「しかし、今後が心配だね。『カラシコフ』はロシアを本部に置くマフィアとは言え、世界に支部を展開している。しかも、今回の首謀者はミザリー・ボイルド。『カラシコフ』総帥の孫娘だよ」

「マジですか……」


 アレは組織内でも相当に位の高い女だったらしい。報復がマジで心配になってきた……


「その件はこっちで話をつけた」


 チーフがクーラーBOXに氷を入れて冷やしているソーダを持ってきてくれた。


「『カラシコフ』総帥のシルベスター・ボイルドには個人的に貸しがあった。ソレを返して貰う形で今後、こちらに危害を加えない公約を結ばせた」

「オレの中で色々と質問が渋滞してるんですけど……まず、それって効力はあるんですか?」


 孫娘を可愛がるのが老人だ。それがクレイジーサイコレズであったとしても。


「組織は大きければ大きい程、内部は複雑化し原則は増えていく。その中で約束事は特に厳守されるだろう。ソレを無視し無秩序となれば組織として成り立たん。『カラシコフ』は秩序を重んじるからこそ、今も成長しているのだ」


 組織として大き過ぎる故に、今回の公約は有効であるとチーフは語る。


「クラウザー。君の手札は多そうだね」

「切るべき時に切ってるだけだ。私の望むモノは単なる安寧だよ、エルダー」


 と、奥方と娘さんを見る。

 チーフの経歴はかなり奥深そうだが、今の日常を手に入れる為に苦労した事は解る。


「今回の件は本社に報告します?」

「いや、内々で済ませる。妙な気苦労を社長にかけるべきではないからな。結果として、ダイヤはここに居るし、誰も欠けなかった」


 逆に圭介おじさんと接点が生まれたのは有益か。オレも今回の件が無ければおじさんと再会が出来なかったワケだし。


「あっ! ニックス!」

「ん? うごっ!?」


 バレーボールが顔面に直撃。唐突な事だったので後ろから倒れて、鼻を押さえる。どうやらレシーブを受け損なってポールがこっちに飛んできたようだ。痛てて……


「ダイジョウブ?」


 ダイヤが駆け寄って来て心配そうに覗き込んで来る。

 上からシャツを着ているが、それでも十分に強調される胸に通り過ぎる通行人もダイヤには一度目を向ける。フォスター四姉妹は万人が認める美人姉妹なのだ。


「鼻は折れてないから大丈夫だ」


 と、ダイヤが手を差し出したのでオレは取ると起き上がらせてもらった。するとその様子を次女のサンが笑う。


「ぷぷぷー。情けないわねー、ニックス」

「今のスパイク打ったのおめーか!」

「ちゃんと打ち返しなさいよ。バレーにならないでしょー?」


 言ってくれるぜ。

 サンはミスト(13歳の四女)よりも胸が無い分、運動神経は四姉妹随一。ニューヨーク市警に勤めているのだから体力はこの場の男性陣並みにあり、バレーネットを越えてスパイクくらいは平然と打てる身体能力を持つ。


「Oh! それじゃ、ワタシとニックスが相手ネ! サンもペアを選びナ!」

「御姉様!? 何故ニックスと!? くっ、ニックスの魔の手から御姉様を取り戻す!! ヴェイグ! 手を貸して!」


 サンのヤツ、一番身軽なヴェイグをペアに選ぶとは……ガチで勝ちに来てやがる。大人げなーい。


「ねぇ、ニックス。一つ聞いてイイ?」

「なんだ?」


 オレはダイヤに手を引っ張られながら質問される。


「ワタシを助けるには危険な相手だったデショ? クラウザー達に任せても良かったヨ?」

「何言ってんだ。そんな事は一瞬でも考えた事はねぇよ」

「ナンデ?」

「お前なぁ……」


 オレは理解してないダイヤへ告げる。


「オレはお前のパートナーだろう? 片割れが攫われたのに自分だけ引っ込んでられるかよ」

「――――アリガト」

「どういたしまして」


 太陽の日差しと一緒に向けられるダイヤの笑顔は、オレ達の日常に必要なモノだと改めて理解できた一幕だった。


https://kakuyomu.jp/users/furukawa/news/16818023212072961022

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