第2話

 椅子に座っているだけで、入学式は何事もなく終わった。普通の入学式と違ったのは、来賓にナントカ省の大臣がたくさん来ていたことくらいだ。この高校は、国家プロジェクトによる実験的なナントカとか説明してたけど、僕はイマイチ興味が持てなかった。入学式が終わると、新入生はそれぞれのクラスへ案内され、指定の座席に座った。クラス室は、特に変わらない普通の教室だった。

「入学おめでとう。私が担任教諭の仲町カオリだ。全国から集まった優秀な君たちを担任できることを、誇りに思う」

 教壇に立ったスーツ姿の担任、仲町先生は、てきぱきと段取りを進めていく。男子の制服は紺色のブレザーなのに、女子の制服は真っ白なセーラー服で、チグハグだ。けれどこれがこの高校の伝統らしい。クラスメイトの皆は、きちんとした着こなしをしている。……ただし、人型スマホを持っているのは僕だけっぽい。

「では、いくつかプリントを配ろう。通学費の申請書、あと携帯持ち込みの許可願いだ」

 許可願い。書かないとスマホさんも没収されるのだろか、とぼんやり考えていると、前の席に座る小さな男子が、ニコニコしながらプリントを渡してくれた。……僕の横に立っているスマホさんを、興味深げに見ながら。彼の制服の襟には、ロボット整備技能のバッジがついている。特科高の生徒はなにかしら、得意な技能を持っているらしい。通称ではテックとか、呼び表すそうだ。

その技能は僕にもあって、『潜水ヘルメット』のバッジが、襟についていた。スマホさんをじろじろと眺められるのは慣れていたけれど、これほど真剣に観察される事は、滅多にない。僕はすこし戸惑いを覚えた。

スマホさんはどこ吹く風で、すまし顔のまま、立ちんぼだった。

「今日の課業はこれで終わりだ。寄り道はしないように。では、委員長。号令を頼む」

 ホームルームの最後、委員長に選ばれた男子が起立、礼、着席の号令をかける。途端に教室は騒がしくなった。居心地の悪さを感じ、僕はそのガヤガヤから逃げるように、教室を後にした。

 特科高から最寄りの駅までたどり着いて、僕はようやく一息ついた。駅の改札をくぐると、ホームの人はまだ、まばらだった。僕とスマホさんの座ったベンチの周りには、誰もいない。春の暖かい陽気が、そよ風に運ばれて、僕らの間を通り抜けていく。

 それを合図にしたかのように、これまで猫を被っていたスマホさんは、本性をあわらす。スマホさんは小さく伸びをしてから、いたずらっぽくニヤッと笑みを浮かべた。

「あーあ。つかれちゃった。迫真の演技はどう? 上手かった?」

 スマホさんは、小声でささやいた。頭の後ろで、嬉しそうにポニーテールが跳ねる。

 僕もなんとなく、小声で言い返す。

「スマホが疲れるのか」

「疲れるもん。電池切れかけなんだよ。ねー、早く充電させてよ」

 スマホさんは、僕の袖をぐいぐい引っ張ってゴネる。これが二人きりの時のスマホさんだった。他人が居る時は、すまし顔のくせに、僕と居る時だけはニヤニヤ笑いながら、気ままに振舞う。

「モバイルバッテリーなら、色々と持ってるだろ? スマホさんがこっそり、そういうスマートフォン用のグッズを買い集めてるのは、僕だって知ってるんだ」

「モバイルバッテリーはあくまで非常食だって。それに味薄いし。電柱から直に繫いできた電源が、一番おいしいんだ」

「……電気に味あるのか?」

どうも、僕のスマホは、はっきりした意思を持っているらしかった。


 2


 次の日の午前中は、教科書を配ったり、クラスの役職を決めたりするホームルームが続いた。そのあと昼休みに入ってすぐだった。前の席の小さな男子が、僕の方へバッと振り返って話しかけてきた。

「これからよろしくな。俺は安形って名前だ。技能はロボット整備。ま、この高校にはよく居る技能、いわばテックだな」

「あ、ああ。よろしく。僕は芦原っていいます」

 僕は軽く頭を下げる。人懐こい笑顔で、安形は聞いてきた。

「それでさ、昨日からずーっと聞きたかったことがあってさ。そのレアなスマホ、どこで手に入れたんだ? ロボットの機種がイマイチわからなくて気になってしょうがないんだよ」

 僕は助けを求めて、スマホさんの方をちらっと見た。スマホさんは微笑み返してくるだけで、何も言わない。現実世界でスマホさん以外と話すのは、久しぶりだった。僕は意を決して、話してみる。

「父さんから貰ったんだ、ずいぶん前に」

「ふむ、機種名はなんだろな」

「え、と。僕は知らない。ずっとスマホさんって呼んでる」

「機種名不明かあ……。製造記号は? そのスマートフォンの本名のことだ。それがあれば機種名も解るんだが」

「ええと、スマホさん。製造記号ってのを教えて」

 と、僕は聞いてみたものの、スマホさんは愛想のいい笑顔で、キッパリ拒絶する。

「禁則事項です」

「本名を答えたくないってのか? そりゃあ、まるで……」

 それを聞いて、安形は不思議そうに首を傾げた。

「ごめん、スマホさん的に教えたくないみたいだ」

 と僕が縮こまって謝ると、安形は数秒考え込んでから、ぱっと人懐こい笑顔に戻った。

「んー……まあいいか。ロボットシャーシのメーカーは分かるから、そこから探してみたいもんだ。たぶん、加賀美インダストリ製だろうね」

「どこでそんなの分かるんだ?」

 ロボットに詳しいとはいえ、初見でそんなの分かるのだろうか。半信半疑で僕は聞いた。

「スマホさんの目は猫目だろ? それは、加賀美インダストリアル製メイドロイドの特徴なんだ。敷島重工と早乙女電機は、人間に似せたレンズアイを使ってるから、そこで見分けられる。それにオッドアイのオプションが設定されてるのも、やっぱり加賀美だけだから、まあ間違いないと思う」

 安形は、すらすらっと説明してみせた。ロボットのスペシャリストというだけはあるようだ。

「詳しいんだ。メーカーなんて知らなかった」

「そら、俺の実家はロボット整備工場や……だからな! その子が故障したら、聞いてくれ。可能な限り、助けになれるぜ。でも、メイドロイドはちょっと専門外なんだよな。人工肌はサイバネティクスだしなあ? どこかに専門家はいないかなー?」

 と、安形が思わせぶりに語尾を上げると。

「なんだい、わざとらしく。私を呼んだつもりかね」

 左隣に座っていた男子が、話に割って入ってきた。その顔つきは垢ぬけてシュッとしている。

「お、乗って来たな進藤くん。芦原君、紹介するよ。こいつは進藤。俺はコイツと住んでる寮が一緒なんだ」

 安形が話を振ると、進藤は襟をいじって、居住まいを正す。

「ご紹介に預かりなんとやら、だな? 進藤遥だ。専門はサイバネティクス。安形とはもう顔見知りだが、芦原君と話すのは初めてだねぇ。よろしく」

「ええと、よろしく」

 差し出された進藤の手を握り、その感触にぎょっとする。彼の右手は一見普通に見えて、まるで鉄のようにごつごつしていて固い。……いや、これは鉄そのものだろう。進藤の右手は、精巧なサイバネ義手だ。僕の表情を観察して、進藤は白い歯を見せてニカっと笑う。

「私は右手が義手でね。いわゆるサイボーグさ。スマホさんもよろしくね? 時間があれば、人工肌の化粧方法を教えてあげよう」

 スマホさんは、微笑んだまま会釈を返した。……猫かぶりだなあ。

「あ! そういや芦原くんの専門技能はなんだ? この高校に入ったんだから、なんかすごい技能があるんだろ?」

 安形は指を鳴らすしぐさをして、僕へ話を振る。その指は鳴らなかった。僕は教えるかどうか迷った。できれば言いたくない。けれど、遅かれ早かれ言わなきゃならない。言ってしまおう。

「ヴァーチャルダイブっていう、コンピューター世界に入り込む能力だよ。マイナーな特技だし、知らないと思うけど」

 僕は自分の技能を白状した。安形と進藤は顔を見合わせてから、首を傾げる。

「すまん。聞いたことないな」

 と、安形は申し訳なさそうに言った。やっぱり知らないんだなあ。この反応が怖いから、話したくなかったのだけど。僕の技能、ヴァーチャルダイブは、全然有名じゃない。国家機密にも関わるとかで、秘密の技術になっているせいだ。それもあって、僕は『現実世界では』全然目立たないのだった。

 放課後は、その場の雰囲気に流されて、安形と進藤と一緒に帰ることになった。その道すがら、僕は二人から質問攻めにあった。ヴァーチャルダイブとは何か? と。 全然知らないマイナーな能力だが、コンピューターを自由に操作できるというところが、二人の好奇心に突き刺さったようだ。特科高のすぐ近くには、新宿に建つ東京都庁が良く見えた。四角の柱を多重に重ね合わせた、灰色の巨塔。側面には、巨大で真っ白いレドームアンテナが張り付いている。それは、ゲーム作品に出てきそうな重厚な砦のようだった。下校する特科高生徒たちは、都庁に見下ろされながら、帰路についていた。

「ダイバーは、コンピューター上の仮想空間『デイドリーム』で、プログラムを見たり聞いたり、触ったりできるんだ」

 僕は、とりあえず無難な言葉を並べて、説明を試みる。

「プログラムを見たり聞いたりって、どういうことだ? それは」

 という安形の質問へ、僕はなんとか答えをひねり出す。これは入学試験やヴァーチャルダイブよりも、よっぽど難しい気がする。

「VRって意味は知ってる?」

「へ? んまあ。ヴァーチャルリアリティってやつだろ。ゲームでもよくあるよな」

「あの世界に入り込む感じだ。ダイバーはキーボードやマウスでなくて、脳波でデイドリームのキャラクターを動かすんだ。キャラクターはプログラム上の命令として、プログラムを創ったり、壊したりできる」

「つまり、考えただけで、コンピューターをプログラムできるのか。便利そうだ。マスターできるなら、しておきたいね」

 空を仰いで安形はため息を吐いた。

「こういうのは、習って身につくものじゃあないだろうぉ。なあ、芦原」

進藤は手をパタパタ振って僕へ言う。

「えーと、そうかもしれない。ほとんどのダイバーは、先天的にダイブ能力を持っているみたいだから」

 僕は、ヴァーチャルダイブの検査を受けた時のことを、ぼんやりと思い出した。小学生になったばかりの頃だった。見知らぬ病院で、ゴーグルを被り、僕はデイドリームへ初めてダイブした。自分の身体が、バーチャル空間に浮かんでいた時は、ぎょっとした。目の前にあるブロックや、つるつるの床が、プログラムそのものだと知ったのは、ずっと後のことだった。そのテストの結果、僕に特殊能力があることが分かった。コンピューターネットワークに存在する、デイドリーム空間への侵入能力。それがヴァーチャルダイブ。デイドリームを日本語で言うと、白昼夢。そんな夢の中に入れると言われても、特にうれしくなかった。たしか、スマホさんがうちに来たのも、それからだった。もうあと一か月で、スマホさんが僕の元へきて、九年目になる。スマホさんと初めて出会った日付は、もちろん覚えていた。もうそろそろ、プレゼントを用意しないといけない。

 その時、僕らの脇を、何台ものトレーラーが通り過ぎた。トレーラーの荷台には、多脚の重機ロボットが係留されてある。

「おお。ゴルドラック社の新型ユンボや! やっぱ東京すごいな!」

 安形は、その車列を食い入るように見つめる。

「おい、方言出てるぞ。お前はホントにロボット好きだな」

 進藤は興味なさげにして、義手で前髪をいじる。

「そりゃあ、最先端のロボテックを勉強しに、わざわざ上京してきたんだぞ。地元の高専も考えたけど、やっぱ特科高のロボット研究部は名門だしさ」

「意外だな。高邁な向上心を持っておられたか」

「じゃなきゃ、わざわざ東京まで来て、お前みたいな唐変木と共同生活せんわな」

「……お? 言ったな安形?」

 やっぱり特科高に入るだけあって、目標が皆あるらしい。それに比べると、僕はなんとなくこの高校に進学しているから、肩身が狭い気がした。特科高の寮は、駅の向こう側にあるとかで、安形と進藤とは最寄り駅で別れた。


 家へ帰ってきてから、スマホさんはだらけきっていた。セーラー服のまま、充電ケーブルを口にくわえ、ソファへ寝ころんでいる。最近、また充電の減りが速くなった気がする。

「たまには家事してくれよ」

 僕は洗濯物を畳みながら、愚痴った。スマホさんが聞いてくれるとは思ってないけど。スマホさんは勝手に、ネットショップで山ほどの洋服を注文する。大量の衣装を畳む身にもなってほしい。

「しないよ。スマホは、人と人とを結ぶ情報機器であり、家電じゃないんだよ。それに家事担当のトライポッドたちがいるもん。わたしは働かなくてへーき」

 と、スマホさんは、へらへら笑いながら言う。すると、ソファの隙間から握りこぶしぐらいの小さなロボット達が、十匹ほど湧いてきた。一つ目カメラアイの付いた空き缶に、短い足が三本生えているような彼女たちは、家政婦ロボットのトライポッドだ。

「呼んダ?」「アーイ」「お待たせ待っタ?」

 一匹一匹は小さくて、ロボットアームも一本しか持っていないけれど、数の多さを生かして色んな家事をこなしてくれる。数は力なり。ちなみに、何匹いるかは僕もわからない。たぶん百匹はいると思う。あと、日によって数も違う気もする。ミステリー。

「けれど、トライポッドは、晩御飯の用意で忙しいんだ」

 ちなみに晩ご飯は一人前だった。この家に人間は僕しかいないから。父も母も、もう数年くらいは家に帰ってきていない。それは普通で、もう慣れきっていたけれど。その後も少しばかり、スマホさんと僕との間で、家事の押し問答が続いた。その不毛な争いは、スマホさんが鳴らせた電子音で中止された。

 スマホさんがむくりとソファから起きて、僕へ告げる。

「む、電話がきたよ。お父様からだ」

 スマホさんは左耳部分のインカムを外して、差し出してくる。僕は促されるままにインカムを受け取り、耳に当てた。父は一か月おきに、電話はかけてきてくれる。そろそろ掛かってくると思っていた。

「もしもし」

「入学おめでとう、カケル。入学式に出れなくて済まないな」

 低い男の声が、スピーカーからビリビリ聞こえた。父は今、アフリカのどこかで、何らかの任務に従事している。父親の職業は外交官……だと思う。自信はない。

「気にしていません、大丈夫です」

 僕の答えは本心だった。 両親はきちんとお金を出してくれるし、僕の嫌がることはしてこない。世の中には子供を殴ったり、嫌なことを押し付ける親がたくさんいるらしい。そんな人でなしより、二人はよっぽど立派だ。……たぶん。

「そうか。本当なら三月には日本へ帰るつもりだったが、仕事がまだ纏まらなくてな」

 スマホさんがすまし顔で、ウィンドウを空中へ開いた。外務省のホームページが大写しになる。そこには、危険な国のリストが載っていた。スマホさんの指さした項目、ローデシア共和国の欄にはこう書いてある。

『第四次ローデシア紛争は継続中。ノーシス軍の侵略により全面渡航停止。日本からは停戦交渉団が派遣中』

 ノーシス軍という文字。僕は嫌なものを見たせいで、目を細めた。ノーシス軍とは、過激な国際テロ組織だ。元々は、小さなカルト団体だったらしい。けれど新しい世界を創るためにとかで、世界中で信者がテロを引き起こしていて、最近のニュースの主役になっている。そんな連中が占領した地域へ父は派遣されている。少なくとも、スマホさんはそう推理しているらしい。

「仕事って、ノーシスに絡むものですか?」

 僕が話を振ると、父は含み笑いをしながら、切り返してきた。

「スマホさん情報かね? 彼女に隠し立ては出来ないものだな」

「危ないことにならないよう願っています」

「私の事は心配ないさ。……いつも通り、仕送りは銀行へ振り込んでおくよ。あと、鈴香によろしくな」

 鈴香は母の名前だ。母は大企業の研究員……らしい。その認識さえも、あいまいだ。

「家に帰ってくるとは思えませんけれど、伝えておきます」

 素朴な疑問がある。父と母はどこで出会って、どうして結婚したんだろうか。お互いに無関心で、たまに顔を合わせても、まるで上司と部下のように話し合う二人。

「おう。頼むぞ。じゃあそろそろこれくらいで……ああ、そうだった。我々の計画が進めば、ノーシス軍のボスを倒すために、お前のダイバー能力を頼るかもしれん。覚悟してくれ」

 と言って、他人事の短い電話は、一方的に切れた。ノーシス軍のボス? それを僕が倒せというのか。そんな馬鹿な。それは冗談なのか、それとも本気なのか……

 インカムを戻さず、とりとめのない考え事にふけっていると、トライポッドが足元にわちゃわちゃ集まってきた。

「御飯デキタ」「麻婆ドーフ」「中華料理は行けるカイ?」

「え、ああ。ありがとう」

 ダイニングテーブルに一人っきりで座る。トリポッドたちは専用の橋を行き来して、台所からお皿を持ってきてくれる。彼女たちは、頭部にしまってある折り畳み式のロボットアームを広げて、料理をのこぼすこともなく器用に皿を並べていく。

 憂鬱さが胸にこみあげてくる。僕は、今の生活に縛り付けられているような、なにかを常に感じていた。それが、息苦しい。

「料理さめちゃうよ」

 ぼんやりとした呼び掛けが、テーブルの向こう側から聞こえた。顔を上げると、向こう側の椅子に、スマホさんが座っていた。口から充電ケーブルをぶら下げているのは変わらないけれど、ケーブルの接続先は携帯バッテリーに変わっていた。

「スリープしてていいよ。疲れてるんでしょ?」

「家事をすればいいのか、寝ていればいいのか。どっちかわかんないや。私は機械だから混乱しちゃうよね」

 と、スマホさんはため息をつく真似をする。ポニーテールがそれに合わせて揺れる。スマホさんは色々と髪型を変えるけれど、その一つ結びの髪型は、新鮮だった。

「とりあえず、セーラー服からパジャマに着替えてくれないかなあ。パジャマいっぱいあるでしょ」

「やだ。気に入ったから着替えないもん」

 僕はスマホさんの助けを借りて、悪夢のような堂々巡りの思考から、今ある現実へと戻ってこれた。

「意地張らないでくれ。どうせ二週間もしたら、飽きるだろけどさ」

「む。カケルはわたしのことわかってないね。たぶん三日で飽きるよ」

「だめじゃねえか。僕はもう寝るよ。ちょっと疲れた」

「え、早くない?まだ九時じゃん」

「スマホさんみたく、僕は連続ドラマも見ないからね。……早寝早起きくらいしか、趣味ないし」

「つまんないご主人さまだな、ホント。んじゃ、明日は六時半起きだね。目覚ましのセットとスケジュールの管理は、任せといて。安心して爆睡しなさい」

「まるでスマホみたいな事をいうじゃないか」

 僕が言うと、スマホさんはむっとする。

「わたしスマホだもん」

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