2枚のチケット※全年齢対象※

「ちょっと、何よ」

訝しげにオレを見る舞子に対して、オレは2枚のチケットを見せる。


「どうしたの?そのチケット」

「どこだっけなーどっかで拾った」

「どっかで拾った…て、これスイパラの無料招待券じゃない!」


拗ねた顔からぱぁーっと花が開いたように笑顔を見せる舞子。

「可愛い…」

「……………!??」

驚いた顔で、しかし嬉しそうにオレを見る舞子。いつの間にか漏れ出た本音に気付き慌てて目線を逸らす。


「そ、その、お詫びというか…いつか2人で行こうと思ってて、ほんとはお前の誕生日に渡したかったんだけど」

片手で顔を隠し、もう片方の手でチケットを持つオレから舞子は大事そうに両手で受け取り、オレの額に屈んでキスをした。


「ここは可愛い祐に免じて許してあげるわ♡」


-一週間後


オレと舞子は博多駅から歩いて数分のスイパラの会場に来ていた。都市部とはいえ広々とした会場に、定番のスイーツから新商品、和菓子まで実に多種多様なスイーツが並べられている。


「このケーキどうやって作っているのかしら。造形も美しいし何より美味しそうだわ」

パティシエの資格を持つ舞子は花より団子ならぬ「団子より学び」という感じで熱心にその造形を観察している。今日は小さな果物柄のワンピースに色味を揃えたパンプス。長い髪を高い位置でポニーテールにし、その髪はまた色味を揃えたリボンによって括られている。


「舞子、早く食べないとすぐ無くなるよ?」

このままでは何も食べずに終わってしまうような気がして、オレは舞子の後ろ姿に声をかける。ちなみに女言葉なのは人前だからだ。


しばらくして舞子が持ってきたのが、ケーキ3つ。モンブランとレモンケーキと…あと何だ。何だかわからない謎の黒いサイコロみたいなケーキを持ってきて、その中の1つを食べている。食べようと口を開ける瞬間にこちらみ見てくる舞子が可愛い。


「どうしたの、祐。食べたいの?」

見つめすぎていたのかそんなことを聞く舞子。

「そ、そうだね、私も食べたい-っ⁈」

突然口の中に広がる、甘酸っぱい香りと奥深い香り。どうやらそれは今舞子が食べている物の一部分らしかった。


「どう?美味しいでしょ」

イタズラっ子のように笑う舞子。

「美味しいけど…コレって間接キスでは?」

「…ちょ、やだ、何照れてんのよ笑 恥ずかしくなるじゃない」

耳まで朱に染めるその感じがイジらしくて堪らない。



「だって、私たち恋人同士でしょ?」

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