56. ハーレム・ハーレム

 楽しいジェシカとの空のデートから帰還した。


「ありがとう、ジェシカ。よかったよ」

「うん」

「ふう、やっぱり足が着いてると落ち着く」

「そう? 空にいるときも、ボクたちは落ち着けるけどね、敵も少ないし」

「そうなんだ。空飛ぶ魔物とかいないの?」

「いる、ことはいる。まあボクたちの速度に追いつける敵はあんまりいない」

「速いんだね」

「うん」


 ジェシカか。また女の子が増えたな。

 最初はドロシーとリズで両手に花だな、程度に思ってたけど、そこにメアリア、ジェシカと増えると、さすがにハーレム・ハーレムという感じがぷんぷんしてくる。

 まあジェシカは村人ではなく、軍属だけど。


「そうだ、神様にジェシカの着任の報告をしようね」

「神様?」

「そうだよ。ほこらがあるんだ」

「わかった」


 ジェシカを連れて祠に行く。


「じゃあ一緒に祈ってね」

「うん」


 ジェシカは両手の指を互い違いに組み合わせるお祈りのポーズをした。

 そうだよな、手のひらを合わせる以外にもこういうのもあるよね。


『この子はアンダーソン隊の伝令に着任したジェシカです。よろしくお願いします』


 ぽぽ、ぽ、と黄色い光が昼間でも灯って浮かんでくる。


「わぁ、なにこれ。すごい」

「これは妖精光、なんだって」

「へえ、初めて見た」

「いつもより数が多い気がするね。これは、歓迎されてるみたいだよ」

「そっか、神様、ありがとう」


 そういうと頭も下げて見せるジェシカ。


「そろそろお昼御飯だね」

「ああ、じゃあボクは隊長たちと一緒に、宿舎で食べるよ」

「わかった。またね」

「ああ、また。ブラン」


 そういうと、顔を近づけてきて、ほっぺにチュッとしてきた。


「あっ」


 俺はうひょっと思ってしまう。モテ期到来か。ちょっと早くないか。


「ん? じゃあ、またあとでね」


 ジェシカが今度はウィンクして宿舎に低空飛行で飛んでいった。

 なるほど走るより飛んだほうが速いと。

 それにしても、ちょっと積極的だな、ジェシカちゃんは。


 どこで俺の好感度が上がったのか謎だけど、すでにジェシカの値はかなり高いらしい。

 俺は攻略対象フラグなんていつ立てたのか、よくわからないな。

 やっぱハーレムしちゃう感じだよな。参ったな。はははは。


 頰をぽりぽりかいて、家に戻って昼食をとった。




 午後、子供たちみんなで再び集まった。

 午前中の残りはちょうど個人の時間にしていたのだ。最近趣味が分かれてきたので、そういう時間をとるようにしている。


「で、で!!! ブラン。そのくっついてる子。何? 誰?」


 ちょっとドロシーがジェラシーを垣間見せる。機嫌が悪い。

 まあしょうがないよな。だって俺の左手を胸に引き寄せてくっついているジェシカがいる。


「ジェシカです。ブラン君の婚約者だよ」

「「「婚約者??」」」

「はい。ブランは『その羽、すごく白くて綺麗だね』って翼人族のプロポーズの言葉を言ってくれたので。初めてだったし、すごくうれしかった。まだ会ったばっかりだけど、ボクたちいい夫婦になるね」

「ちょっと、ブラン、これはどういうこと?」

「いや、そんな。俺は翼人族のプロポーズなんて知らなかったし、ノーカン、ノーカンで」

「そんなっ、でも、事実、それはプロポーズだよ?」

「ぐっ」


 俺はプロポーズの言葉を言っていたのか。どうりでジェシカの好感度がなぜか高くて、しかも積極的だったのか。謎は解けたけど、迫ったのが俺になってるじゃん。


「私はドロシー、よろしくね。純血のエルフなの。それで私が一番目だから」

「わたしはリズ。よろしくにゃ。あのね、わたしが二番目なんだって」

「メアリア、です。三番目、です」


 あー。知らなかったなぁ。というか番目って何。なんの順番なわけ。女の子の間だけで通じる秘密の暗号かな。


「そんな。全員……」


 ジェシカもびっくりだよな。


「んっ、ボク、あの、じゃあ。四番目でいい」

「「「いいよ」」」


 全員即答。何この子たち。


「あの私たち、一応、順番だけど、上下はなし。公平だから」

「わかった」


 そうなんだ。ドロシーが一番偉いのかと思ってた。民主的なんだな。ふーん。

 俺の人権はどこにあるのかな。


「それじゃあ、順番に空飛んでみる?」

「う、うん」

「はいにゃ」

「はい、です」


 みんなうなずいた。さすがに同時に複数飛べないよね。

 一人ずつ、順番に短い空の旅をしていった。


 残りの人と俺はそれを下から眺めた。

 けっこう高く飛ぶと、ミニスカでもパンツとか見れないんだな。と不純なことを内心考えたりした。


 空で何を話しているとかは、プライベートなことなんだろうな。女の子同士、話くらいあるだろう。

 そっと見守ろう。


 こうして、ジェシカとみんなの顔合わせも済ませた。



 ちなみにジェシカは俺んちに居候している。

 雑魚寝の宿舎は狭い上に全員男だ。さすがに年頃の女の子をそんなところに放り込めないだろう。


「ということで、夜もよろしくね」

「ああ」


 まあジェシカ可愛いし、別にいいか。同棲っていっても親同伴だしな。

 リズたちも別に何も言わないし、特に問題にならなかった。


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