置き場
@iwashityan
兄弟神
神は、二人もいらぬ。
兄のその言葉に弟は困った様に眉を下げ、けれどもやはり予想できていたかのように口角を少しばかりあげて笑う。その顔が酷く滑稽で、同時に腹立たしいものに見えた。
今までもこうであったように、これからもきっとこうである。
自分の近藤を千里先まで見据えているかの如く振る舞う優秀な弟が、兄は嫌いだった。
故にありとあらゆる手を回し、数千年たった今天から地へ堕とすところまでこぎ着けたというのに。
なんだ、その顔は。
自分が持ちうるすべての語彙と表情筋を使いに使って嘲笑し、まあ、恨み言罵倒の一つくらいは聞いてやろうと兄は弟の目の前に立っていたのに。
「じゃあ、兄さん元気でね」
そんな兄の心中を理解しているのかいないのか、羽のように軽い言葉を残して弟は地上へと自ら堕ちていった。
──望み通り唯一の神となった兄は、弟が使っていた玉座を未だに撤去出来ないままでいる。
置き場 @iwashityan
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