第6話 せいしゅん

――次の日


太郎はいつものように学校に向かう。

そしていつものように教室に入り。

そしていつもの席に座る。


「おはよー」


女子生徒が挨拶をした。


いつもの光景。

自分には関係ない。


「影無太郎!挨拶!」


ただいつもと違うのは後ろの席の女子が太郎の名前を呼んだ。


「え?あ。おはよう」


太郎は驚いていた。


「笑顔でおはようだよ?」


「えっと……後ろの席だったんだね」


「いっかいグーパンいい?」


自由は笑顔満点でそういった。

すると別の女子が近づいてくる。


「自由が男子と話してる……」


目をパチクリさせている。


「うん、影無くんとバイト先が一緒なんだよー」


自由がそういうとその女子が笑う。


「へぇー」


太郎は自信があった。

この女子の名前は言える。

そんな自信があった。


「七節さんだっけ?」


「えー!私の名前知らなかったのに。

 ななっちの名前は言えるの?一目惚れ?」


「あ、よかった。

 あってて」


「へへへへへ、なんか知らないけど勝った気分」


その女子は自信満々に笑う。


「七節うおこさん!」


するとその女子の顔が凍る。

そして言った。


「ぐーぱんいい?」


「え?ぐーぱん流行ってるの?」


太郎は慌てる。


「ははは、影無って思ったより話せるんだな」


すると今度は男子が声をかけてきた。

ちょっとやんちゃそうな男の子だ。


「は?宍道しんじ。ぐーぱんするよ?」


女子は少し楽しそう。


「こいつは『うおこ』でも『さかなこ』でもなく。

 魚々子ななこ、こいつのぐーぱんはいたいぜ?」


「経験者は語るだね」


魚々子が嬉しそうに笑う。


「んで、俺は御剣みつるぎ宍道しんじ

 クラスメイトの顔と名前は覚えような?」


「あ、うん」


宍道は太郎の顔を見てニヤッと笑った。


「そうそうその顔だよ!」


自由がそういって笑った。

太郎は無意識のうちに笑っていた。

なんとなく久しぶりに笑えた気がした。

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