第2話 にちじょうはへいおんなり

――とある学園の屋上


ノートに書かれた【死ね】という文字。

文字はマジックで書かれており消えることはない。


影無かげなし太郎の涙はとっくに枯れている。


太郎は屋上の隅っこに立つ。

教師たちは騒ぎ生徒たちもはしゃぐ。


太郎をいじめていた生徒たちのみが焦りの表情が浮かぶ。

しかし、その表情は太郎が死ぬことよりも自分たちがいじめていたことがバレることを恐れているからだった。


「最高に最悪だ」


太郎はそう小さく呟くと屋上から身を投げた。


中学生の自殺未遂。

いじめによる中学生の自殺は日常にある今。

太郎の自殺未遂に興味がある記者はいなかった。

学校は隠すことに必死になり。

太郎をいじめていた生徒たちは逃げるように転校した。


「この学園にいじめはない」


校長は全校生徒の前でそういった。


太郎が意識を取り戻したのはそれから1週間後のことだった。


「……あれ?死んでない?」


太郎は病院のベッドの上で涙を流した。


「……意識が戻ったのね」


見知らぬ中年の女性が優しく微笑む。


「貴方は??」


千代田ちよだ美代みよ

 肝っ玉な看護婦さんよ」


「そうですか……」


「死ななくてよかったわ」


「僕は死にたかったです」


太郎はそう言って涙を拭った。


「気持ちはわかるわよ」


「わかるんですか?わかるはずないじゃないですか……」


太郎がそういうと千代田はナース服の袖を捲った。

そこにはいくつものためらい傷があった。


「死ねなかったってことは呼ばれなかったってこと。

 呼ばれないのなら楽しく生きてみない?」


「楽しい……ですか?

 楽しい人生なんて想像できません」


「大丈夫。だって貴方は生きているのだから」


千代田はそう言って太郎の点滴を変えた。


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