ラヴ逃走
真島 タカシ
1.給食係
「ありがとう。チカ」彩乃が千景に、礼を云った。
千景は、彩乃と二人で、クラスの給食用食器類の運搬係を担当している。
給食時、食器類を給食室から教室へ運び、給食後、教室から給食室へ戻す作業の係だ。
四時限目は、川口先生の国語の授業だった。
授業が終わって、川口先生が彩乃を呼び止めた。
暫く待っていたが、時間が掛かりそうだったので、千景は、先に給食室へ向かった。
千景たち二年生、五クラスの教室は、本館東棟の一階と二階にある。
運動場側に階段を降りると、渡り廊下がある。
渡り廊下は、本館の東側にある三年生の五クラスと支援学級が入る新館から、体育館まで続いている。
土手道を隔てて、体育館と西校舎が南北に並んで建っている。
その西校舎に調理教室兼給食室がある。
教室に食器篭を二個運んだが、彩乃はまだ解放されていない。
結局、千景は、二往復して食器篭四個を一人で教室まで運んだ。
千景が、食器類を教室へ運び終えると、彩乃は、川口先生から解放されていた。
「何か、あったん?」千景は、尋ねたが、彩乃は、「いや、ちょっと」と云っただけだった。
云い難そうだ。
今日の給食は、カボチャのフライと炊き込みご飯だった。
カボチャのフライは、冷凍食品のようで嫌いだ。
給食が終わると、彩乃は、食器類を片付けて運び始めた。
千景も食器篭を持って運ぼうとすると、「ああ。ごめん。わたしが、するから、ええわ」彩乃が云った。
千景が一人で、食器類を教室へ運び込んだのだから、給食室へ返却するのを彩乃は、一人で片付けようと思っているのだ。
「ええけん。一緒に片付けよ」そう云って、千景は食器篭を持った。
「ごめんのぉ。ありがとう。…あののう」
彩乃は、礼を云った後、何か云おうとした。
千景は、川口先生に云われた事だろうと思った。
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