第15話
私は父の言いつけ通り部屋で過ごす事にした。夕食後、寝るまでの時間をのんびりと過ごしていると、邸に1台の馬車が到着したようだ。父からすぐに執務室へと来るように知らせがあり、マーラと共に執務室へと向かった。
「お呼びでしょうか、お父様」
「あぁ、イーリス。すまんな寝る前に」
「いえ、構いませんわ。婚姻の書類の事で呼ばれたのでしょう?」
執務室には父と母、執事と侯爵家の執事が居た。
本来なら侯爵自ら来る予定だったのだが、ロマーノ公爵が突然侯爵家に訪れたようで、侯爵自ら対応にあたり、侯爵家の執事が裏口からこっそり出て、我が家に書類を届けにやってきたようだ。
やはりロマーノ公爵はリューク様に狙いを定めているらしいわね。
私は早速書類に目を通し、3枚にサインをする。1枚は我が家、2枚目は侯爵家、3枚目は王宮へ提出する書類となっている。既に書類にはリューク様のサインがしてあったわ。
「イーリスお嬢様、リューク様よりお手紙を預かっております」
侯爵家執事から手紙を受け取り目を通す。本当ならこの書類を自分で持って行きたかった事、会えない日々がしばらく続くかと思うと寂しい、結婚式が待ち遠しいと力強い文字で書かれていたわ。
私が思い続けていたリューク様のイメージは少しずつ変わろうとしている気がする。
でもまだ私の中ではリューク様程の熱はないの。
執事は出来れば返事が欲しいと言っていたので私はすぐにマーラに便箋を持ってきて貰うと返事を書くことにしたわ。
簡潔に書いて侯爵家執事に渡すと、執事は『リューク様はイーリス様からの手紙を喜び肌身離さず持ち歩くと思います』と言っていたわ。大げさね。そうして執事は急いで侯爵家へと帰っていった。
「お父様、婚姻も成立しましたわ。後は、式を待つだけですわね」
「あぁ。邪魔が入らなければ良いんだがな」
リシェ様はリューク様と婚姻する私が疎ましい。聖女は心優しいと言われているし、歴代の聖女様達は皆に愛され、親しまれる存在だった。リシェ様とは正反対ね。本当に神託で聖女になったのかしら?
案外、公爵がお金を積んで聖女になったのかも?
まさか、ね。
それからの私は父の言いつけを守り邸から出ないようにしていた。詳しく言うと、出られなかったのだ。ロマーノ公爵がランドル侯爵家に突撃した日、私達の婚姻は成立した。
公爵は何時間も居座り続けていたが、私達の婚姻が成立した書類を見せると観念したのか項垂れて帰っていったらしい。
だが、リシェ様は諦めきれなかったようで我が家に毎日突撃するようになってしまったのよね。
「イーリス!!出てきなさいっ。聖女の私が呼んでいるのよ!」
大声で叫びながら玄関扉を叩いたり、蹴ったりと聖女以前に令嬢らしくもない行動を起こしていたの。その様子を邸の窓から見た時は怖かったわ。
連日我が家の門前で大騒ぎするものだから皆の注目の的だったと思う。リシェ様が暴れる度に我が家はすぐに王家と神殿、公爵家へと連絡を入れ、すぐに引き取りに来てもらったの。
公爵家から権力を盾に兵を差し向けられたら歯向かえないだろうと殿下達の好意で我が家も侯爵家も騎士を付けてくれたわ。
それでも連日突撃してくるリシェ様の行動の異常さに困っていたけれど、こっちにリシェ様が訪れているその間に他の4人の婚姻は全て成立したらしいわ。
カノン様や他の方からお礼状が届いたの。
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