幼馴染聖女を勇者にNTRされたけど、なんだかんだ円満解決(本人視点)できただけのお話
どくいも
第1話
「さすがの俺でも限度がある」
その報告を聞いたとき、私はこの世界に来て初めて大きな怒りを感じた。
私は、元現代人系異世界転生者である。
ちょっとチートではあるが、性格はごく普通。
しいて言うなら、幼馴染の少女が回復魔法が得意であり、世間一般には【聖女】と呼ばれていること。
ついで、魔王復活のせいで、その幼馴染系聖女が勇者に連れていかれたくらいだ。
「はぁはぁ、はぁはぁ」
無論、私は転生者故に、精神年齢はお兄さんを超えおじさんだ。
だから、あんなに『将来お兄ちゃんのお嫁さんになる~♪』なんて言っていた幼馴染聖女が、どことも知らないぽっとでの勇者に連れていかれた程度では怒ったりはしない。
もちろん、『将来、結婚するかもしれないから、浮気禁止!』なんて理由で、こちらに【貞操の呪い】を掛けたくせに、旅先から『勇者様って超カッコイイ!』という勇者への惚気報告魔導ビデオレターを送ってきたこともまだ許せる。
『あの女はお前にはふさわしくない、だからお前はさっさとこの女を諦めるんだな』という勇者からの嫌味レターや『ぎしぎし♪あんあん♥』とか聞こえる謎の魔導レターを送ってきたことも大丈夫。
なんなら、魔王討伐後に明らかに不自然な声がとぎれとぎれなぶつ切り戦勝報告魔導レターや、その後しばらく帰ってこなかったことも全然許容範囲であった。
「しかし、そんな俺でも許せないことはある!!!」
握りこぶしを握り、思わずそれをふるう。
思い出すのは、勇者と幼馴染の婚約発表から数ヶ月後。
すでに、残念会も終わってその話題なついて誰も話さなくなった頃、幼馴染であり世界を救った勇者パーティ兼人妻の幼馴染聖女が村へと戻ってきたのであった。
護衛は最低限であり、隣に勇者の姿はない。
それはいい。まだいい。
正直、婚約するならそれをちゃんと手紙でいいから報告しろよとか、幼馴染系聖女と結婚したのなら俺とは言わんが、せめて彼女の両親くらいには挨拶しろとか。
なんなら、勇者自身挨拶せんかいとか、お前らが結婚するなら俺にかけられた【貞操の呪い】はもう解除していいだろとか!
マジで色々言いたいことはある。
が、それもいい。全てを許そう。
二度目の人生ゆえにそのくらいのことは菩薩よような心で許せる。
しかし、そんな自分でも許せない事がある。
……それが……
「人の幼馴染婚約者を、婚約発表パレードと妊活までさせておいて、本当に孕んだらポイ♪するとか、それが勇者のすることかよおおおぉォぉォ!!!!!」
「ぐ、ぐおおおぉぉぉぉぉ!!!!」
「「「「ゆ、勇者様~~~~!!!!!!!」」」
かくして、私は王都の城内でハーレムを作っていると噂の勇者様のところへいき、そいつの面に向かって全力ストレートを決めたのでした。
めでたくなしめでたくなし。
「不敬罪と器物損害罪で、捕まったんだが」
「そりゃそうよ」
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