第100話 会
「ぐああああ……」
「うぅ……」
「あっ、ぐぅ……」
そこら中に響く苦痛による呻き声。
床を這いずる人々。
彼らは全て、ボロンゴ村の住民達だ。
一体何が起きたのか?
話せば長くなるが、一言で言うならそれは――
大ランクアップ会と言った所だろうか。
実は今日、村人達を集めてランクアップを行っていた。
ある目的のために。
その目的とは、現在ほぼ独立している状態のボロンゴ村に人を入れて、開拓を進めるという物である。
ボロンゴ村の人口は少ないからな。
外から人を受け入れないと、村の拡張ってなかなか出来ないんだよねぇ。
で、そこで問題になるのが教育水準だ。
ボロンゴ村の人間は、これまで奴隷同然の扱いを受けて来た。
そのため、一般市民なら受ける事の出来る最低限の教育すら受けられていない状態となっている。
この状態で何も考えず外から人間を入れると、軋轢の大きなタネになってしまうのは目に見えていた。
だから村人達に、教育を施す。
そのためのランクアップだ。
知能は上げられないんじゃ?
勿論上げられない。
ロックかかってるし。
じゃあ何を上げているのかと言うと、それは体力である。
あ、今何言ってんだこの脳筋はって思っただろ?
ちっちっち。
考えが浅いな、全く。
体力はイコール知識ってのを理解していないのは、まさに愚民の発想と言わざるえないな。
いいか、よく聞け。
ボロンゴ村の人間は汗水流して働いているんだ。
それもきつめの重労働を。
そんな人間に、労働後に集中して物を学ぶ余裕があると思うか?
いやない!
俺ならそのまま家に帰ってばたんきゅーだ。
そこで!
そう、そこで体力の出番である!
体力さえあれば何でもできる!
という訳ではないが、体力があればきつい労働後にも余裕が生まれるという物。
だから体力を上げるのだ。
余裕を作って、そこにお勉強の時間を捻じ込むために。
わかったか!
このボンクラ共!
という訳で、仕事しつつも勉強をする余裕を生み出すための、大ランクアップ会という訳である。
え?
だったら、仕事のない暇な冬の間に勉強させとけばよかったんじゃ?
もちろんさせてたぞ。
ただ、冬場は冬場で結構やる事が多いんだよ。
僻地は。
だからあんまり捗らなかった。
で、足りない分を何とかしようと、本格的な畑仕事が始まる春以降も勉強できる様に体力を上げるって流れになった訳だ。
あ、言うまでもないとは思うけど、子供は除外してるぞ。
もちろん。
彼らは大人に比べて比較的暇だし、回復力が半端ないからな。
ランクアップさせる必要はない。
まあ本人が望めば別だが。
「よし、全員終わったな。じゃあ次を行う」
一段階じゃそこまで劇的にとはいかないので、最低でも三段階位は上げておかないとな。
まあ俺ですら耐えられたんだし、この村の人間なら三段階如き余裕だろ。
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