第77話 夢
「……んん?どこだここ?」
気づいたら、俺は花園みたいな場所にいた。
見た事のない所ではあるが、何故か懐かしい気分になる。
「夢……か?」
花園を見渡してみると、そこには珍妙な姿をした生き物が多数見受けられた。
ゼリーっぽい動物だったり、毛玉に目のついている様な奴らだ。
どう見ても現実の景色ではない。
その事から俺はこれが夢だと断定する。
「なんだろう……あいつらって精霊か?」
見た目はばらばらだが、俺はそいつらがなんとなく精霊だと思えた。
「うおっ!?って……夢だから動けないし触れられないのか」
岩ころみたいな精霊が楽し気な奇声を上げながら転がってきたのでそれを躱そうとしたが、体が動かない。
結構なサイズなので激突すると怪我しそうなサイズだったが、その精霊は俺に当たる事無くなくすり抜けて行ってしまった。
「夢は人の願望や記憶が影響するんだっけか?どういう記憶と願望が合わさったらこんな珍妙な生物だらけの夢を見るんだ?」
完全に意味不明である。
そんな事を考えていると、花園の様子が凄い勢いで変わって行った。
「んあ?地震?」
急に地面が揺れ出す。
それも激しく。
それに伴い、青空は雲によって太陽が隠され、周囲の花が枯れていく。
更に楽し気に遊びまわっていた精霊達がバタバタと倒れ、動かなくなってしまう。
「おいおい、珍妙な夢かと思ったらまさかのホラー展開かよ」
珍妙な生物だらけだったが、明るい雰囲気だった花園が滅びていく様は完全にホラーである。
「うおっと、体が」
体が浮き上がる。
超空高く。
そこで俺は花園が滅んでいく理由を知る。
「なんだありゃ?あれが原因か?」
白い巨大な人型と、同じサイズの黒い人型。
その二人が戦っているのが見えた。
放たれるエネルギーとエネルギーがぶつかり合い。
それが地面を焼き、揺らす。
そしてその余波で、広大な面積に広がっていた花園がどんどんと枯れていく。
とうぜんそこにいる精霊達も死にまくりである。
「ホラーかと思ったら特撮か?」
夢ではあるが、本当に意味不明だ。
暫くその巨人達の戦いをみていると、黒い巨人が崩れ落ちた。
そこに白い巨人が光を放つ。
その光は黒い奴を消滅させ、そこを起点に広がっていく。
やがて人がった光の中から木が生えてきた。
そしてそれはどんどんと増えていき、やがて花園だった場所を森へと変えてしまう。
それが終わると、光の巨人の体が透けていき消えてしまった。
「白が勝った様にも見えるけど……」
普通に考えたらそう見える。
だが俺には、真逆に思えて仕方ない。
何故そう思うのかは自分でもわからないが……
『待ってるよ』
声がした。
それは森から聞こえた物だ。
『死の森で待ってる』
もう一度。
死の森でまっている、と。
――そこで俺は目が覚めた。
「変な夢だったな。死の森で待ってる……か」
夢の中の言葉が胸中でリフレインされる。
まるで死の森が俺を呼んでいるかの様な夢だった。
これが何かの掲示なら、俺は死の森に行くべきなのかもしれない。
が――
「ま、行かないけど」
行くわけがない。
何故なら危険だから。
そもそも、夢を真に受けて行動するとかありえないしな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます