素行不良で僻地に追いやられた第4王子、自分が転生者だった事を思い出す～神様から貰ったランクアップで楽々領地経営～

第62話 実力

「勝負ありだ」

二人の実力差は圧倒的だった。

タゴルの攻撃をポッポゥがあっさり捌き、足を払って倒れた所に剣先を首筋に向けて手合わせ終了である。

「くっ……今のは油断した！もう一勝負頼む！」

「いいだろう」

まあ油断があったのはたぶん事実なんだろう。

ナタンが強と言ってはいたが、見た目が甲冑来ただけの可愛い女の子だからな。

どこかにそんなはずがないって気持ちがあっても、おかしくはない。

「参った……」

タゴルが起き上がって再戦するが、結果はほとんど変わらない。

若干慎重になった分数手伸びはしたが、あっさり制圧されて終了である。

「ポッポゥって滅茶苦茶強いんだな」

俺に人の強弱はよくわからないが、タゴルは決して弱くないはずだ。

その彼をあれだけあっさり制圧する当たり、ポッポゥの実力は間違いなく相当な物なはず。

「精霊は肉弾戦とか苦手ですけど、特大精霊ともなればあれくらいは楽勝ですよ。フォカパッチョ」

「そうなのか？」

大精霊だったカッパーは、軽くカンカンの護衛を制圧している。

だからあんまりそういうのが苦手というイメージはないのだが……まあでもよくよく考えたらあれは搦め手で無力化しただけだから、近接戦闘って訳じゃないか。

「ふぉっふぉっふぉ。精霊は人間的に分類するなら、魔法使いタイプですからな」

「なるほど……いやでもポッポゥは自分から騎士を名乗ってるぞ？」

戦闘が苦手なら、騎士を名乗るのはおかしくないか？

「彼女だけが特別なのか？」

「ふぉっふぉっふぉ。好きな物と、得手不得手は必ずしも一致する訳では御座いませんぞ」

「ああ、単に趣味で騎士を名乗ってただけって事か……」

まあでも例のスキルを使ってないとは言え、筋力Aのタゴルを圧倒出来るのなら、不得意分野でも十分な実力があると言えるだろう。

少なくとも、木っ端男爵の護衛騎士としては十分すぎる強さだ。

「ふぅ……では、次は我の相手をして貰おう」

倒れていたタゴルが立ち上がると、その雰囲気が変わる。

というか、自分の事我とか言ってるし。

これって……

「ナタン殿が憑依している様ですな」

やっぱそうか。

「我が名はナタン。血の刃ナタン。尋常に手合わせ願おう」

「我が名はポッポゥ。火の騎士ポッポゥ。その挑戦、受けて立つ」

続いてポッポゥ対ナタンの手合わせが始まる。

「互角っぽく見えるな……」

二人の見事な高速の打ち合いが続き、激しい剣戟の音が響く。

使っているのはタゴルの肉体だが、明らかにその動きは違っていた。

素人目にも分かる程に。

「タゴルさんの力任せの戦い方にくらべ、ナタン殿は高い技術に裏打ちされた洗練された動きをしてらっしゃいますので」

「つまり、タゴルよりナタンの方が強いって訳だな」

「まあ現状ではそうなります。とは言え……タゴルさんには例のスキルがりますし、今現在ナタン殿の指導の下訓練しておりますので。いずれ彼の強さはナタン殿を超える事でしょう」

ジャガリックはタゴルの将来に期待している様だ。

まあ俺的にはどっちでもいい事だが。

護衛は貴族だから一応つけてるってだけで、辺境の一男爵である俺に危険な事態が迫るとは到底思えないからな。