春。君と出逢い、別れた季節。
ゆるゆる
第1章 出会い、始まる恋。
第1話 春、君と出逢った季節
____溢れんばかりに咲く桜並木、賑やかな人混みを横目に歩く。足取りは重い。自分に付された運命にもはや絶望はない。せめて、代り映えのない日々をすごせたら、なんて思う。___
_否、それは突然だった。一陣の風が桜の花びらを舞い上がらせ、そこで僕、宵宮 圭は__一目惚れをした。とても可憐でどこか儚げな雰囲気を醸し出す少女がその光景によく馴染んでいてそれはとても、、とても、鮮烈で目に焼き付いて離れなかった。__
______________________
「圭、おはよ~!」
と朝から耳が痛くなるような甲高い声で僕に挨拶してくるのは、幼なじみの咲坂 葵だ。僕は、未だ止まぬ眠気と闘いながら
「ん、おはよう。」
と気だるげに返事を返す。それが、僕の日常だった。今日から僕らは高校二年生。始業式を迎えるために僕らは他愛もない会話をしつつ学校までの道を歩いていると、葵が突然、こんな提案をしてきた。
「そいえばさ、最近駅前にケーキ屋さんできたじゃん!今日の放課後あのお店行こ!」
「なんで僕なんだよ。そういうのは仲いい友達とか、...彼氏とかと行けばいいじゃないか。あんだけ人気あるんだから彼氏の一人や二人はいるんだろ?」
と至極真っ当なことを言ってやった。うん、そうだろう、それが正しいはずなのだ。そもそもとしてクラスの隅に埋もれている僕と学校でも一、二を争う程に人気のある彼女が一緒にいること自体イレギュラーなのだ。そして最近妙に彼女との距離が近い気がする。まあ、気のせい...じゃないな、うん。今物理的にすごく近いね!?それに周りからの視線が痛い。とそんなことを考えていると、
「なぁに~?考え事⁇私というものがありながら、考え事だなんて全く圭のそういうところ__」
あぁやばいなんか始まったな、と心の中でそっと呟き、昨日一目惚れした少女について思い返していた。「あぁ、とても綺麗な子だったなぁ」と耽っていると、
「あ、今他の女の子の事考えてたでしょ!ほんっとに圭ったら...」
「あのね、そもそも学校で言い寄ってくるような男は眼中にないの。しかも、男子が勝手に私の所に来るせいで女子の間では嫉妬?とかで邪険にされてるの!」
そう言い切ると顔をプイッと背けて拗ねてしまった。かわいい奴め、なんて思いながらも僕はなんとか機嫌を直してもらうように言葉を紡いだ。
「で、でもそんな風には見えないぞ。ほら、同じクラスの寺田とか佐々木とかとよく一緒にいるじゃないか!」
そう言ったのは逆効果だったらしい。もう怒ったといわんばかりに頬をプクッと膨らませて、
「女子は、表と裏が激しいの‼私に絡んでくる子なんておこぼれを貰おうとするような人しかいないよ。それに裏では私の悪口ばっか言ってるみたいだし...」
言ってる途中から泣きそうな顔をして、言い終わると同時にしょんぼりとしてしまった彼女をみてこれ以上の発言は流石にヤバいと思い僕は急いで話題を変えようと試みた。
「そういえばさ、お前が言ってた駅前の店、モンブランが絶品らしいぞ。お前確かモンブラン好きだったよな?今日は奢ってあげたい気分なんだよな~。ハハ」
我ながら注意のそらし方が天才なんじゃないか、と思うのを心にとどめ葵の反応をおそるおそる見ていると、
「ほんとに!?やったー‼それより私がモンブラン好きなの覚えててくれたんだ~。
にへへ」
と、さっきまでの今にも泣きそうな顔とはうって変わって気味の悪い笑みを浮かべながら喜ぶ彼女の姿に僕は、ふと「ちょろいな、こいつ。」と心の中でつぶやくのだった。
「今、私に対して悪口考えたでしょ!わかるんだからね、圭が考えることなんて何だって!」
とまるで僕の心を見透かしたかのような発言に少し驚きながらも、僕は負けじと言い添えておくことにした。
「でもまぁ、お前にだってわからないこともあるよ。」
「なにそれ~私は圭の事なんだって知ってるんだから!例えば圭が小学四年生の時に__。」
「...僕の抱える秘密はお前じゃわかんないよ。」
被せるように、聞こえないようにボソッと呟く。その一瞬、僕はどんな顔をしていたのだろうか。葵が僕の顔を覗き込みながら心配してきた。
「どうしたの?今なんかちょっといつもと雰囲気違うような気がしたんだけど。私がちょっと調子にのりすぎちゃったのかな、だったら...ごめん。」
そんな言葉を聞き不意に我に返って、「しまった。」と思いながら僕は取り繕って
「なんだよ、そういうノリはお前の専売特許じゃないか。いちいち気にも留めていないよ。別になんでもないから気にしないでくれ。」
というと、彼女が何か一瞬何か言うのを躊躇った後、いつもの口調で
「んま。圭がそう言うならそれでいいんだけどね~。隠し事はなしだよ、なんてったて私たち“幼なじみ“なんだから」
と、言った。僕もちゃんと返事をしておくことにした。変に気を遣わせるのも悪いだろう。
「あぁ、わかってる。もちろんそのつもりだ。」
いや嘘だ。絶対に言えない。これは僕の、僕だけの問題なのだから。
______________________
いまだ桜が咲き誇る道を歩きながら、僕は誰にも言えない秘密について思考を巡らせる。やっと着いた学校で今日から二年間を共にする新たなクラスに入るや否や目を見張る光景がそこにあった。
そこにいたのは___
僕が一目惚れした少女__紫電 渚だった__
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