第5話 入学初日
ハルシは後ろに束ねた赤い髪を、もう一度きつく縛り直した。
荘厳な校舎の入り口には、『対魔専門学校』というプレート。その文字を見るだけでハルシの心は昂った。やっと、最強の対魔剣士になるための道へ、大きな一歩を踏み出せる。
横を通り過ぎる生徒達が、ちらちらとハルシを見ていた。「あの子迷子?」「刀持ってるし一年生じゃない?」「でも制服着てないよ」といった会話が聞こえてくる。
ハルシはボロ雑巾のように糸のほつれた衣服の自分と、紺色の上等な羽織を着て校舎へと入っていく生徒達を見比べた。
(制服があるなんて聞いてない……まぁ、何とかなるか!)
ズンズンと校舎に足を踏みじ入れたは良いものの、どこの教室に行けば良いのかさっぱり分からない。
「おーい、不審者は立ち入り禁止だぞー」
後方から声がしたので振り返ると、鼻が触れそうな程近くに男の顔があった。
「わぁぁぁぁ!!」
尻もちをつくハルシを見下ろしながら、その男は大きなあくびをした。ボサボサの髪に無精髭、虚な右目の下から首の辺りにかけて火傷跡のような紫色の痣が広がっている。どう見たって不審者はそっちだ。
「あ、茜ハルシです! 新入生です!」
男が舐め回すようにハルシの全身を見る。
「あー君が特別入学の。そういや今日だったか……てか何で制服じゃないの?」
「制服があるなんて知りませんでした!」
男が何かを思い出したように頭上を見上げた。
「俺のデスクに置きっぱなしだわ。完全に忘れてた」
「へ?」
またしても大きなあくびをしながら「ついてきな」と言い、男は歩き出した。相当な猫背だ。
「あの、あなたは一体誰ですか?」
「何って……」
男がゆっくりと振り返る。
「君のクラスの担任、カタギリだ」
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