イタバ(サンペ)
与太郎とキセガワの二人は、一つ目の宿、イタバ宿に到着した。
「ここがイタバか。流石に四天王のいる所だけあって、周りに妖気が流れ出していると見える」
「そうかしら?まだここじゃ何も感じないけどね」
与太郎は鋭い。もはやバカの与太郎ではない。
「くんくん。俺の鼻は強烈な妖気を感じますよ。この香ばしくて芳醇な香り…」
「ああ、コーヒーの香りのこと?」
「コーヒー?」
「イタバはコーヒー発祥の地よ。さっきからコーヒーのお店が多いのに気付かなかった?」
「ラクゴ国にコーヒーなんてあるんですか!?」
「人が想像し得るものは大体あるわね」
改めて落語の奥深さに感じ入る与太郎であった。
目に付いたお店に入って、コーヒーで一服する。
「うーん、ここまで来てコーヒーを味わうとは思わなかったなあ」
インスタントのものしか飲んだことのない与太郎にとっては、実質コーヒー初体験である。砂糖とミルクをドバドバ入れて、コーヒーの味などどこかに飛んでいってしまっている。
「これが結構大変なのよ。今エードでは道楽と言えば、飲む打つ買うじゃなくて、飲む挽く淹れるだと言われているぐらいだわ。コーヒーに現を抜かした大店の若旦那が、勘当されてコーヒーの店で奉公しているっていう話もよく聞くのよ」
「コーヒーってそんなに金がかかるんですかい」
「そう言えば、イタバ宿を守るサンペってのも、元はどこかの若旦那か何かじゃなかったかしら。意外とこんな所で会ったりしてね」
そんなキセガワの後ろに人影が立った。
「いかにも、私はコーヒーの飲み過ぎで実家の寺を勘当されてしまったのだよ」
振り返ったキセガワの目に、ネギ坊主が袈裟を着た妖怪が映った。
「だが、この馨しい香り、深みのあるコク。フルーティな中にもスパイシーを感じさせる、この琥珀色の飲み物を誰がやめられようか。たとえ仏の道に背いてでも、コーヒーだけはやめられはせぬ」
「お前は、サンペ!」
「フフフ、いかにも私は妖喜利四天王の一人、ネギ坊主のサンペである。花魁とマヌケ面の二人組がエードに潜入したとの噂を聞き付け待っておったが、早速お目にかかろうとはな。飛んでコーヒーに入る迷惑な夏の虫とはお主らのことよ。仏の名において成敗してくれるわ!」
「そうは行かないわよ!いざ尋常に勝負!」
サンペとの妖喜利バトルが始まった!
【妖喜利バトル】
コーヒーが似合う女、キセガワよ。この世でやめられないものが三つ。コーヒー、自画自賛、そして妖喜利よ。熱いコーヒーが冷めないうちに、チャッチャとサンペを倒してしまいましょう!良かったら、みんなもコメント欄を使って楽しんでみてね。
(お題)
今回はコーヒー川柳。コーヒーをお題にして、思わず飲んでいるコーヒーを噴き出すような面白おかしい川柳を作ってください。
(与太郎の回答)
「キャンプ朝炭火で焙煎干しぶどう」
…キャンプの朝にコーヒーで一服。いいわよね。って、間違えて干しぶどう持って来ちゃったの?コーヒー豆に似てるっちゃ似てるけど。
※サンペ…笑点レギュラーだった二代目林家三平師匠とは無関係。
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