粗忽の使者
「あんれまあ、面白い人でごんすなあ」
【座布団一枚獲得!総座布団数87】
「横綱の家までの地図を描いてあげるでごんすよ。えんれえでっかい家だから、すぐに分かるでごんす。ただ、急に行っても会ってはくれないでごんすから、わしが一筆書いてあげるでごんす」
阿武松は、地図と紹介状を持たせてくれた。
「横綱の家の周りは、肥溜めが多いから気を付けるでごんす」
「そんなものあるんかい?」
「横綱は入れるもんが多いから、出すもんも多いでごんす」
地図を見ながら歩いていく与太郎。
「地図ばかり見て、肥溜めに落ちないように気を付けてね」
「大丈夫、そんなヘマはしませんや」
そのうちに横綱の家の前まで着いた。
「うへえ〜、でっかいお屋敷だな〜」
与太郎は家を見上げて口をあんぐりさせた。と、そのときである。空を飛んでいた一羽のカラスが、与太郎の顔を見てアホーアホーと鳴いた。ついでに糞を落として行った。
「おっと」
華麗に避ける与太郎。その体が、ズボッと柔らかいものにハマって沈んでいった。
「うげっ、汚ねえ、肥溜めだ!」
その頭にカラスの糞がポトリと落ちた。
「カラスは与太郎の顔に糞を落としたのではなく、肥溜めに落としたのね」
何のことはない。避けようとしなければカラスの糞が当たることはなかったし、肥溜めに落ちることもなかったのである。
門の前で騒いでいると、中から人が出てきた。
「これこれ、何を騒いでおる」
「あ、横綱ですかい。ええと、あんたに用があるんでさ」
「私は
「ええ、ここに。あ、ない。肥溜めに落っことしたんだ」
「どういう内容であったか覚えておらぬか」
「ええと、さっき見たぞ。確か、何だったかな。思い出せないや」
「では私が思い出そう。そこの花魁、私の尻をつねってくれるか」
「え、あなたのお尻を?」
「私はいつも何かを思い出すときには尻をつねってもらう。そうすると良く思い出せるのじゃ」
ギュウ〜と治部右衛門の尻をつねるキセガワ。
「はて、おかしいな。ちっとも思い出せぬ」
「もう〜、そそっかしい人ばかりじゃ先に進まないわ。私達は阿武松って人の紹介で来たのよ」
「ほう、阿武松関の紹介か。それなら横綱に会わせてやっても良いが、ただ紹介状がないなら条件がある」
「もしかしてアレ?」
「左様。私とアレして勝ったら横綱と会わせてあげよう」
地武太治部右衛門と妖喜利バトルだ!
【妖喜利バトル】
この話で唯一まともなキセガワだわ。もう〜、それより早く肥溜めから上がって来なさい!鼻をつまみながら妖喜利行くわよっ。良かったら、みんなもコメント欄を使って楽しんでみてね。
(お題)
あなたは思わず「そんなアホな!」と言ってしまいました。何を見た?
(与太郎の回答)
「水鳥がダウンジャケットを着ていた」
…羽毛を着て、鶏肉や卵を食べる。私達の体って、ほぼ鳥と同じ。飛べないだけ。
※粗忽の使者…古典落語の演目。地武太治部右衛門はその主人公。
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