第2話 言葉はいらない〜はじまりのとき〜

"うみ〜着いたよ〜家に迎えに行く〜?"

"先行ってて〜!歩いていくから"


すでに台風は過ぎ去り外は晴れていたそんな午後。

私はテンションがあがっていた。ウキウキしてた。ソワソワもしてた。

だって、なんとなく今日もし会わなかったら一生会わないとおもったからだ。


なんとなくなんとなくが2人を近づけていった。


"やほ〜!はじめまして〜♡"

天と天の地元の友達の虎と初めて会った。

"どうも美人ちゃん〜"

と天が私をからかってきた。

"まじ、うっざーーー!恥ずかしいしやめて。"

"ハイボール好きなんだよね?ハイボールでいい?"

"ありがとう ♡"


カンパーーーイ!!



時々、虎と2人になると。

"天どう??彼氏にすれば??金も持ってるよ!!"

とニヤニヤしながら私に問いかけてきた。

"いやーないない。彼氏とかいらないし。"


天は天でやたらと

"俺、嫁大好きなんだよね〜"

って言ってくるから、

"そういうこと口にするやつ嫌い。だって、嫁大好きな人は嫁好きなんだよね〜て別にいちいち言わないもん。"

って言い返してた。

お互いにそういうつもりはなかった。この時までは。意識もしてない。


お酒もすすみ、私は緊張のせいかベロベロに酔っ払ってトイレで寝てしまった。ほんと最悪!

初対面の男性の前で潰れるとかほんとにありえなかった。

夕方になり、私は子供が帰ってくるから帰らなきゃいけないのに、足元フラフラ。


"飲みすぎた〜"

"虎〜、俺送ってくわ〜!うみ〜大丈夫か?送ってくからおいで。"


てくてく歩く私。

道が細いのに車通りが激しい駅前。

時折、しゃがんでは吐いた。

天は介護するように私の手をひいた。

とくに私達はしゃべらなかった。

ただ手を引かれて歩いてた...


(あったかいなぁ。)

手から体温が伝わった。手から手へと気持ちがなぜか伝わった。

(また、あいたいなぁ。)

とふと私は思った。


"ほんと!!1人で歩けるから!!ここでいいって"

"いいよ。家の近くまで危ないから送るよ!"

"もうここでここでいいから。"

酔っ払ってるから何回もこのやり取りをして歩いた。


もう少しで家だった。

急に切なくなった。

踏切が鳴って遮断機が降りた時だった。

カンカンカンカン...


私は立ち止まった。


天の顔を目をじっと見つめた。

お互いに遊び慣れてる方だったから言葉はいらなかった。



そっと唇が重なった。



私は何か関係を求めてるわけじゃなかった。

自然と身体が彼にむいた。

自然とそうなった。なぜだかはわからない。



その瞬間

私は彼に強く抱きしめられて長いキスをした。

心地よかった。

それだけでよかった。


天はバッと肩を掴み唇を離すと

"俺、実は明後日仕事休みなんだ!!ホテル行こうぜ!!"

あまりにも突然で目が点になったが、

"いいよ!わかった。"

と私はふたつ返事だった。


"じゃ、もうここでいいから送ってくれてありがとう"

"じゃあね!"


手を振ってバイバイした。

踏切を私終わった時、私はスキップしてた。

いや、ほんとはしてないんだけど。

心の中でスキップして帰った。



一緒の時代を生きてきた私たちには

キスしてホテルの約束をするのに言葉はいらなかった。一瞬で恋に落ちた。

私から求めた。彼も不思議と受け入れた。

やっと出会えたね。何回もすれ違ったのに。

でも、遅すぎたね。

お互い帰る場所があるから...

神様はイジワルだね。

もっと早ければ君を救えたのに。

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