今日は…

「三日月さん、ありがとうございました。」


「いえ、こちらこそお疲れ様でした。」


「宮部さん、お茶をご用意しました。」


「はい」


私は、喜与恵の言葉に宮部さんと共に行く。


「どうでしたか?三体の幽体のお話は?」


喜与恵のいれてくれたお茶を飲みながら話す。


「とても、よかったです。私は、まだ光珠さんとお付き合いしたばかりですが、とても難しいのを感じました。何でも持っていても幸せではない。努力でもどうにもならない事がある。生きて行くのがとても辛かったのを感じました。それでも、何故死ぬのかが私には理解出来ないです。」


宮部さんの言葉に、私は自分が考えていた言葉を話す。


「あの、これは私が常に思っている事なのですが…。」


「はい、ボイスレコーダーに録音します。」


宮部さんは、スイッチをいれる。


「何か、変わるきっかけが欲しいのかもしれません。皆、そうだったのかもしれません。それが、死だったのかもしれません。」


「それって、ゲームのリセットボタンって話ですか?」


「明日、そのお話をしますね。リセットボタンの話をしてくれた、幽体のお話を…。」


「はい、お願いします。」


宮部さんは、軽く頭を下げた。


私は、顎に手をあてながら話す。


「そうですね。何か、切り替え方がうまくなかっただけなのではないかと思ってしまうのです。死ぬつもりは、皆なかったのです。ただ、その時はそれが最善な方法だと信じていただけです。」

  

「その結果が、死だったって事ですか?」


「はい。脳裏にこびりつく、どこか固い考えしか出来ない自分。それをひっくり返したり手放す事は、容易ではないのです。だから、他者を攻撃するのです。ただ、誰かが黙って隣で話を聞いてくれる。そんな簡単な事さえも、行われない世界。小さな画面の方が、自分よりも存在価値が高い世界。何をやっても、人の目を気にさせられる世界。その世界の中心は、愛ではないのです。」


「今は、孤独や絶望が世界の中心なのですね」


私は、三日月さんの目をジッと見つめた。


「こんな風に、誰かが自分に向き合ってくれたら…。自分の命さえ、手放さずにすんだのではないでしょうか?」


「三日月さん、それって」


「勝手な私の偏見ですよ。」


私は、宮部さんに笑った。


「最中食べますか?」


喜与恵は、宮部さんに最中を渡していた。


「ありがとうございます。」


宮部さんは、喜与恵から最中を受け取って食べている。


三日月家みかづきけの取材は、無事に終わりましたか?」


「実は、人数が多すぎて、まだ、終わっていません。」


「そうでしょうね」


私が笑うと宮部さんは、苦笑いを浮かべた。


「三日月さんの話が終わりましたら、次は、珠理じゅりさんにお話を聞くことになっていまして…。この方は、白き能力者と聞きましたが、もう三日月家みかづきけの事がわからなくて大変です。頭が、ぐちゃぐちゃでして…。まだ、1000年前の話しか書けていなくてですね。」


その言葉に、喜与恵が宮部さんを覗き込む。


「もう、三年ですよ。三日月家みかづきけの1000年前の話って事は、まだ私と宝珠の前世も書かれていないのですか?」


「あっ、はい。まだです。」


「宮部さん、私と宝珠の前世も取材するのですよね?」


「そ、それは、巫女さんにお聞きできると伺いました。」


「そんなペースじゃ、30年はかかりますよ!!」


喜与恵が、宮部さんを怒っていた。


「すみません。でも、すごく反響あるんですよ。皆さん、不思議な話が大好きなんです。私が、書いた。封印の戦いなんて、重版しまくりだったんです。大海力おおうみちからの私小説なんか、書かなくてよかったです。」


宮部さんの言葉に、喜与恵は笑っていた。


「よかったですね。」


「では、明日も三日月さんお願いします。」


「はい、お願いします」


私は、宮部さんを見送った。


あの日みたいに送ることはない。


光珠が、迎えに来ていた。


「お気をつけて」


「はい、さようなら」


宮部さんは、嬉しそうに行って

しまった。

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