願わくはあの頃に…

ミルク

願わくはあの頃に…

中学三年生の頃、私にも反抗期というものが訪れた。

受験も重なっていたためストレスもあり、親に反抗ばかりしていた。


ある日、進路のことで両親と口論になり、私は親に対して

「うるさい!死ね!」

と言ったあと、そのまま部屋に閉じ籠ってしまった。その後兄に

「母さん泣いてたよ。謝りに行け。」

と言われた。罪悪感はあったが素直になれず、兄にも八つ当たりをしてしまった。

次の日、私は親に買い物に誘われたが、また素直になれず無視をした。そのまま両親は買い物に行った。

数時間後、家に電話が掛かってきた。

「○○さんのお宅ですか?こちら○○病院のものですが。お二方が乗っていた車にトラックが…」

私は耳を疑った。

急いで兄と病院に向かい、手術室の前で待った。

執刀医の先生が出てきた。

「父と母は…父と母は大丈夫なんですよね!」

先生は私と兄に謝罪をしてきた。

私は兄と二人になった。 

昨日私が「死ね」なんて言ったから…

私は、父と母に謝ることができなかった。


私は結婚し母親になり、子宝に恵まれた。

そして、息子にも反抗期が訪れた。自分の子供に

「死ね!」

と言われ、胸が張り裂けそうになり私は思わず息子の頬を叩いてしまった。

昔の自分と重なったからだ。

私は息子に、自分が子供の時の話を初めてした。

私は目を潤ませながら息子に言った。

「お願いだから死ねだけは言わないで」

息子は涙を流しながら私に謝ってきた。

私も息子に叩いてしまったことを謝った。

今となって「死ね」と言われた親の気持ちが理解できた気がした。

出来ることならあの時に戻って謝りたい。


私は週末、息子と一緒に地元へ帰り両親のお墓参りに行った。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

願わくはあの頃に… ミルク @miruku369

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ