第7話 そうはならんやろ。

香しい木々の香り。路傍には新鮮な倒木達。こういう香りを嗅ぐと、キャンプファイヤーや飯盒炊飯なんかを思い出す。

小中学校の思い出で懐かしくなっている反面、この大量伐採の原因が自分であるという事実に、練の情緒はぐちゃぐちゃにされていた。元からぐちゃぐちゃなのに。


『パパ……どうしたの?』


最強美幼女のルミナは、そんな自業自得の目に遭って苦しんでいる主人公アホを心配する。

モチモチしっとり、美味しいスイーツの要件すら持ち合わせる透き通るような白い肌。

一目見ただけでは宝石と見分けのつかない蒼く輝く両眼。

そして、陽の光を受けて輝く艶やかな金の髪がそれらを照らし、可愛らしいその容姿を幻想的かつ1つの芸術品のような姿へと押し上げている。(唐突な見た目の描写)


「いや〜今回は成功したなって思ってさ。」


『変なパパー。』


昨日出来た道で……否、昨日作った道で二人が笑う。なにわろてんねん。

ま、そんな事してたら当然不審に思われる訳で。


「おいそこの貴様らァ!!!急に現れて!一体何をした!!!」


どうやらここを警戒していた衛兵らしい、でけーおっpと栗毛の獣耳のお姉さん。詳しく言うと犬耳のお姉さん。獣人らしく(?)露出が高いビキニアーマーを着用しており、防御性能は高いのだろうが、別の意味で無防備過ぎていた。


「何をしたかを聞いているんだ!!!」


……警戒しているのか、短いスカートから漏れた尻尾がピンと立っていた。つまり何とは言わないが丸見えだった。

後ろにいる部下らしい男は、それに慣れているようで、「見てませんよ」と言わんばかりにそそくさと門の後ろに隠れた。マジかよ!じゃあこの女普段からこんな感じの天然ドスケベ女じゃん!

勿論、それだけのドスケ…………扇情的な格好や仕草を見せられて、気が動転しない男などいる訳が、


「え?錬金術使っただけど?」


だ が き か ん 。

ロリコン。幼女を至高とする者。よってデカいたわわも、えちちな仕草も等しく無。

糠に釘、暖簾に腕押し、練にエロ。(575)


「冗談はもういい、では聞く!これをやったのは貴様らか!」


「……本当にごめんなさい。」


それはそれ、これはこれ。

練は当然のごとく、悪いことをしたら謝るという心は持ち合わせているので、許して貰えるかどうかはさておき、ちゃんと謝るのだ。えらいね!!(小並感)


「ん?もう一度聞く!これをやったのは貴様か?」


「すいません!反省しています!すいませんッ!!」


心配そうに見上げるルミナを他所に、練はひたすらに謝る。第6話冒頭の妄想と同じ目に遭わないため、悪気はなかったという事だけはどうしても信じて欲しいのだ。


「え?これをやったの?どうやって?」


「え?錬金術でペターしてそのまますぱーっと。」


……どうやら、雲行きが怪しくなってきた。


「え?」「え?」

「錬金術で?」「はい」

「本当に?」「はい」


「…嘘をつくなぁぁぁぁッ!」


「嘘じゃないです!」


何故こんなにも怒鳴られているのか理解出来ないでいる練に対して、女性は怒り心頭といった様子で捲し立てた。

そして、


「じゃあやってみせろ!」


あーあ、言っちゃったよこの人。

そして、どうしても身の潔白を証明したい練はこの命令を断れない。


「分かりました!責任とって下さいよ!!」


「良いだろう!」


どうせ口だけだろうと高を括っていた衛兵のお姉さんは、練が詠唱を開始したのを見てぎょっとする。


「じゃあ遠慮なく……『溢れろ』魔力よ!我が剣に風となりて『宿れ』!翔べ……刈り取れッ!!ウィンドスラッシュッ!!!!!」


ルミナの前なので、カッコつけました。

剣から放たれた風の刃は次々に木々を斬り、昨日と同じく道を拓いていく。

スパパパパパパパパパパパパパパパパパ──ン!!軽快な音がむしろ恐怖を引き立てる。


「……んな…………!?」


衛兵のお姉さんは、この惨状の責任をどうやって負えばいいのかで頭がいっぱいだった。



「進め!そして獣人を捕らえるのだ!」


さて……丁度エティアルがアビルの命令を受け、獣人の住む国の方へ進軍していたとき。


「ん?何の音だ?」


スパパパパパパパパパパパパパパパパパ──ン!!

異様な音、遠くから響く何かが倒れる音。そして決め手は嫌な予感だった。


「ッ!総員伏せろッ!!」


エティアルが的確な判断を行うがもう遅い。

その言葉に反応出来たのは後列に居た十数名だけで、ほとんどの部下はまともに風の刃を食らう。


「そ、そんな……馬鹿な……。」


既にエティアルの部下の半数以上は瀕死。そうでない者もHPを半分以上失い、まともに戦えない状態。

しかし、さすがは騎士団長といったところか。


(第2射が来ない……詠唱に時間がかかる魔法?いや、獣人は魔法が不得意な種族。だとすれば、古代期魔導術器アーティファクトか……ならば連射はできんな。)


この状況を冷静に分析し、適切な回答を導き指示を出す。


「……総員撤退!動ける者は重傷者を運べ!!この付近で宿営し体勢を整える!!」


カチャカチャと、鎧同士が擦れぶつかる音が響く…………。

一方、練の脳内ではまたまた無機質な声が響き渡っていた。


『レベルが上がりました』『レベルが上がりました』『レベルが上がry


「ふふふ、責任とってくれるんですよねぇ?」


1日1本。2日で2本。道を作るのが得意なんだね!

さて、衛兵のお姉さんの責任の取り方とは────


「くっ………わ、私の身体でよければ……!!」


命を懸けて戦うという危険の割に、衛兵の稼ぎはよろしくない。給金自体は良いのだが、装備品や消耗品は国にもよるが、基本自己負担。それを差し引くと、年間平均給与は全体の平均をかなり下回る。

そんな理由もあり、お姉さんが差し出せるのは自分の身体くらいだった。世知辛。

しかし、そんな葛藤の末、苦渋の末に出した答えに対して、練の回答は一瞬だった。


「あ、いいです、大丈夫です、そういうの。

ホントにいいんで、はい。

あとルミナの教育に悪いんで、やめて下さい。」


ロリコンはどこまでいってもロリコンだ。(575)

当然、お姉さんなんてロリコンには無用の長物だ。


「アッハイ。」


その一言で色々察したらしく、お姉さんは虚無顔になっていた。ルミナは不思議そうな顔をしていた。



……さて、そんなこんなで重要参考人というvip待遇で獣人の国に招かれた訳なのだが。


「ありがとう、練殿、本当にありがとう!」


どうしてこうなったのか。

練は猫耳のおっさんに泣きながらお礼を言われていた。


(どうしてこうなった……それより猫耳のおっさんなんてどこにも需要ねーんだよ!どうせなら女の子にしろよッ!)


何かとおっさんに縁があるな、この主人公。

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