勇者として異世界転移したけど一瞬で裏切られたので錬金術師になりました!?/中学生の頃に書いた黒歴史小説を書き直す
はくめい
第1部 裏切られた?!
第1話 プロローグはテンプレ展開?
死にたく……な………い………俺は……まだ………ッ!
──変な夢を見た、血塗れになって地面を這い蹲る夢だ。
夢と断定するにはあまりにも鮮明すぎて、未だに汗が吹き出てくるほどだったが、そんな夢の中と反して、現実は変わり映えは一切しない。
期待外れないつも通りの朝だった。
……ふと、今日が新学期だと思い出し、溜息を吐く。昨日の日曜日、それが最後の休日だったのだ。
「いってきます」と言い学校を目指す、残念ながら家族の声は聞こえないし、起きてきてすらいなかった。なんて薄情な奴らだろう。そう心の中で悪態をつく。
その時、まるで流行りもののライトノベルに触発された中学生のように、『あぁ、異世界に行きたい』だなんて思わなければ、そんな他愛の無いことを考えなければ、この先の災禍に巻き込まれることはなかったのかもしれない。
ぶわり、突然煽るような光が足元から刺した。驚いて見ると、魔法陣のようなものが足元に現れていたのだ。間違いない、念願の異世界転生だ────その先に待っている地獄を知らないまま、俺の平凡な日常は黒い光に消し去られるのだった。
一瞬感じた浮遊感が消えたのを合図に、閉じていた目を開けると……そこは天井の光に照らされても尚黒い空間が拡がっていた。
果てのない空間にも、こじんまりとした小部屋にも思える、そんな不思議な空間。
そしてその中央、つまり練の目の前には女性が立っていた。
「おはようございます。金子練さん。」
透き通るような白い肌にまけじとしっかりと主張する大きな胸、そしてそれらを強調するために存在するような黒めの服。艶やかな髪はまるで吸い込まれそうなほど黒かった。
……もちろん、それらも気になってはいたが、
「……どうして、俺の名前を?」
気になったのはそこだ。何故この女性は、名乗ってもいない自分の名前を知っていたのだろうか。そして、その女性の返答はほとんど練が期待していた通りの返答だった。
「すみません。失礼は承知しているのですが……少し心を読ませて頂きました。」
その形容し難い美しさを持つ女性が、申し訳無さそうな表情でそう言い、更に言葉を続ける。
「私の名前は
「王道きたッ!」なんて事を心の中で呟きつつも、練は極力格好を付けて言った。
「俺にできることならなんでもしますよ。」
……しかし全然格好良くなかった。なんなら格好悪かった。中の上くらいの第一印象が下の上くらいに落ちるくらい。
けれど、その女神はその返答に微笑で……
「ありがとうございます。
それでは、貴方に勇者としての力を授けます。」
……どっちかというと業務的な微笑でそう告げた。
しかも最悪なことにその瞬間、彼の本音が暴発した。
それはもう獣のような……あっ、獣に失礼なレベルでした。すみません。
「異世界チートキタぁぁぁぁぁ────ッッッ!!!!!」
(あっ!本音と建前間違えた!!)
あぁ醜い、嘘でしょこれが主人公?(5.7.5)
今からでも女神様の方を主人公にした方がいいのでは?『異世界女神は楽じゃないっ!』とかいうタイトルよさそうじゃない?だめ?
「そ、それでは力を授けます」
コホン、小さな咳払いを挟みつつ、女神は手のひらを練へと向ける。
(無かったことにしてくれるなんて優しいなぁ。)
もちろん、彼のその考えは九割九分九厘違う。どう考えても面倒くさがられているだけで、それを優しさと勘違いしているだけだ。
……と、女神の指先から放たれた光が、練に向かって飛んでくる。その光に触れると、胸の中に火の様な熱さと力があふれるのを感じた。
それと同時に、「今ならなんだってできる」そんな全能感に襲われる。脳裏で声が反響する。
「早くアビスの為に力を振るいたい。」「目的を果たしたい。」
それは傍から見れば少し危うかったが、彼は気付かない────否、気付けない。
「それでは頼みましたよ。」
「はい。」
返事と共に光に包まれてワープしてるような感覚を感じた。
……といってもワープはこれで2度目なので何とも言えないのだが、ずっと落下している感覚が続くような……そんな感じだった。
そして、その後も暫くそんな感覚が続いたので、下らない事をずっと考えていた。
家に侵入して壺を割ったり、タンスを開けたりできるのかな。
武器はどんな感じかな。王道の剣?いや、ただの棒……まさか銃!?……無いか。
王様は丸いかマッチョか……まさか美少女ッ!?
死んだら「おおなさけない」とか言って生き返らせてくれるのかな。
そんなアホみたいなことを考えていたせいかもしれない。
「みつけた……!」
長い退屈のせいか、好奇心や悪戯心……そして僅かな希望を織り交ぜたようなその声色にいつのまにか練は心惹かれていた。
「誰だ……?お前は……うっ……!!」
その声の方に手を伸ばした瞬間だった。
眼の前を一気に白い光が包み込み、浮遊感がゆっくりと消える。こんなに地面のありがたさを感じたのは初めてだった。
「やった!成功だ!ははッ!全部アビス様の言った通りだ!!」
瞼の外から刺す光が淡い色に落ち着いた頃、練は恐る恐る目を開いてみた。
……そしてすぐに後悔した。
目の前に30歳は優に超えているであろうおっさんに四方を、いや、四方どころか八方、いや八方どころか全方向。
つまりは全くの隙間なく囲まれていた。
「ひっ……!」
さらに言えばそのおっさん共は子供のように目を輝かせていた。
当然、その状態で正気を保てる自信は彼にはないし、作者にもない。
「ヒィギャアアアアアアァァァァァァ──────ッッッッッ!!!!!!!!」
悲しい事に、それが彼が異世界で初めて喋った言葉になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます