狂信



アリスが死んで、数週間が経過した。

アリスを失ったことに、隠れ家の皆が悲しみ、項垂れていた。


「ローズおかえり、腕はどう?」

「ただいま、もう大分良くなったよ、お前は?」

「私はもう完治したね」

「凄…私もお前見習ってリハビリ頑張ろ」


ローズと、マーガロ以外の皆が。

不気味に思ったアヤがこう呟く。

「……なんで、そんな普通に過ごせるんだよ」

アヤの声が聞こえたマーガロがこう答える。


「アリスが昔言ってたんだよ…「私は勘がいいから誰かに殺されたりするならその直前に察して私に黒歴史を破壊しろと命じる」って」

微笑み合うローズとマーガロ。

その姿を更に不気味に思うアヤ。

「……なにそれ…」


「バカだと思うか?うん、バカだよ」

「……」

「アリスが思春期真っ只中の…高校一年の時に言った言葉を事細かに覚えてる私はマジでバカだ」

「私も覚えてるそれ!だからアリスは死んでないなって察したんだ」


それを聞いたアヤは、怖くなったと同時に、悲しくなった。


「アリスさんが、本当に死んでたらどうすんだよ」

顔を見合わせる二人。

「死んでない」

「もしもの話じゃん」

「死んでない」


アヤの手が震える。

そしてアヤは思い出した。

冷静でクールで聡明なはずのクロエすら「アリスは死んでない」と信じきっていたことを。


「マジでバカだな…花屋が言ってた人間がアリスさんだったんだろ、ならもう疑う余地もないじゃん、ずっとそんな考えに縋って…悲しくならないのかよ」


ローズが右の眉をつり上げた。

「死体がなかったんだぞ?んなもん死んでないかもって思っちゃうだろ」

立ち上がるアヤ。

それを宥めるマーガロ。


「なんだそれ…お前は花屋の能力を疑ってんのかよ!!」

「花屋が来たことで未来が変わったっていう可能性は考えなかったのか!?」

「ローズやめな、アヤ君怖がらせてどうすんの」

「……ごめん」

「……」


三人は静かに顔を見合わせた。




「……死んで欲しくないんだよ、どうしても」

か細い声でそう呟くローズ。

「うん、神足はもっと生きなきゃいけないの、もっと生きなきゃ…もっと生きて、ずっと歌わなきゃいけないの」

「あいつは…あいつは、歌いながら死ななきゃいけないんだよ…」

「…そんなの……俺だって…そう思ってるよ」







一週間後、隠れ家の倉庫からアリスの遺書が発見された。

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