似た者同士2
ギターを弾くのが好きで、誰かがギターを弾いている姿を見るのも好きだった。
「見てんの」
隠れ家から少し離れた場所にあるスタジオで、僕は尊敬する人がギターを弾いている姿をじっと見つめていた。
「うん、好きだから…ギターとか、音楽」
「そっか、お前もギター持ってんの?ここにある?」
「ある…弾いていい?」
そう言うと、彼は「うん」と答えてから目を逸らし、ギターを掻き鳴らし始めた。
彼のギターは、例えるなら嵐。
台風。
雷。
そしてそれらが過ぎ去った後の静けさだった。
頭にずしりと響いて、あんなこともあったなと思い出せるような…そんな感じ。
僕は、彼のギターが大好きだった。
「弾きなよ」
彼はそう言い、こてんと首を傾げた。
「うん」
ギターを取り出し準備をしている間も、彼はずっと腕の中のギターを大切に抱き、何度もボディを撫でていた。
確かローズさんが彼に譲ったギターだ。
「……僕も弾いていい?」
「弾いてみ」
ギターを奏でた。
彼はにっこりと微笑み、上手いと言ってくれた。
「まだコード押さえてないのに」
「あー、まあ~確かに…でも上手いよ、俺には分かる」
低くなくて、高くもない、彼の声。
その声が好きだった。
彼の言葉も好きだった。
大好きだった。
「あれ弾ける?あの、最近流行ってるポップス」
「弾けない」
「そっか」
「…でも、歌詞覚えてるから歌える」
「そう?じゃあ、俺弾くからお前は歌って」
「うん」
「………」
どっちがカウントをしようか悩み、二人でしばらく黙ってから見つめあってクスクスと微笑みあった。
「じゃあ俺がやる…いくぞ、1、2、3…」
「3で始まり?3が終わったら始まり?」
「3が…」
「……」
「…いや…1、2、1234…で始めようか」
「わかった」
「わかった?」
「わかった!」
「ほんとに?」
「わかったってば…」
「ふふ…ごめんって…じゃあ……1…2…」
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