不治の病
カルマは、重い病気を患っていた。
多くの人間が苦しめられている病気で、未だに治療法が見つかっていない重病だ。
しかしカルマの場合、それで苦しんだのは回りの人間であった。
カルマ本人は「神の気まぐれ」「俺にはどうしようもないことだ」と言い、対して気にしていなかったからだ。
妹のローズはカルマを心配していた。
あまり素直ではない彼女も、いつもカルマの顔を見ては「大丈夫か?」と声をかけるくらいには。
「カルマさんの病気について…聞いても良い?」
気遣いの出来るアヤは、やはり心配した。
「カルマは…ただ、うん、経過を…見守るしか…」
妹のローズはよく分かっていたのだ。
彼女は遠くを見つめ、眉間に皺を寄せた。
アリスはずっとローズの背を撫で、アヤへ「本人には絶対に言わないであげて」と伝えた。
察したアヤは、背後で花へ水やりをしているカルマと、アリスの胸へ顔を埋めているローズを交互に見てから下唇をぐっと噛みしめ…頷いた。
優しい優しいアヤは眉間に皺を寄せ、拳を固く握り「俺に出来ることは…無いのか」と低い声で呟いた。
三人はお互いの意思を尊重し、カルマの事を支えようと決めた。
カルマは、そんな三人を見つめながら微笑んでいた。
「カルマさんの病気について聞いてもいい?」
恋人のリリーは、カルマの腕の中でそう尋ねた。
人との接触をあまり好まないカルマも、リリーの体温は好きだった。
「病気か…ふふ、そうだな…」
栗色の髪を撫でるカルマの腕が、少しだけ震えた。
「あいつらが言うように重くて治らない病気だ」
リリーはカルマの胸へ頭を寄せ、大きく息を吸い込んだ。
「…その病気、病名は、なんていうの?余命とかはないの?カルマさんはいつまで…一緒に居てくれる…?」
瞳いっぱいに涙を溜めるリリー。
カルマはリリーを強く抱き締めてから……クスクスと笑った。
「……なんで笑うの?」
「すまん…俺の病名はなリリー」
「うん」
「……恋だよ、綺麗な白百合への」
「か…カルマさん………」
そう。
カルマの病名は、中二病である。
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