ギタリストを許すな
「白が似合う男を知っているか」
尊敬する人間からの突然の質問に驚く人間。
「どうしたんです突然…白が似合う男?」
人間二人はベースの弦を好きに弾きながら雑談をしていた。
10年来の知り合いの二人は時折こうして集まるのだが、人間の方が先に言葉を発するのは始めてだった。
短い髪をかき上げ、ベースから手を離した人間は、驚き目を丸くしている人間へこう言葉を続けた。
「最近あるだろ、ギタリストが襲われる事件。」
人間が話しているのは、最近この辺りで有名になっている通り魔事件の事だった。
「ああ、ありますね…で、それがどうしたんです?」
相槌を打ちながらベースと短髪の人間を交互に見るショートカットの人間。
「予知した奴がいるんだ、ギタリストを襲っている奴は男だ、と。」
「だからそれが白……ああ、有名な誘拐犯居ましたね、確か…白がとても似合っていたっていう目撃情報しかない男。」
「俺はそいつだと踏んでる。」
「……安直すぎません?」
「僕が尊敬していた頭脳明晰なあの人はどこへ?」
と続ける人間へ、短い髪の人間はこう答えた。
「いや、その二人が同じ人間だと決めつけること以上にさ」
「はい」
「そいつがもしベースとギターの見分けもつかんバカだった時の事考えた方が良いかもって思ってな…」
「……それは…どうして?」
「だとしたら俺らも危ないだろ」
「あー…そう…ですね…持ち歩いてるケースだけ見て判断されたらたまったもんじゃない」
その後も何度か言葉を交わし、誰が怪しいか、どういう人間なのかを心理学的に考えていた二人は、気付いたら人間達の話に論点が刷り変わっていた。
「最近来た予知できる人、居るでしょ」
人間が話しているのは花を好み、毎日のように隠れ家へ持ってくる人間の事だった。
「居るな…あいつの予言によるともう少しで何か事件が起きるらしいじゃねえか、何が起きるんだ?ははは」
人間は能天気だった。
だがそれは無知だからでも危機感が無いわけでもなく、人間自身が察していたからだ。
花の人間の正体や、花の人間の本当の性や…何故花の人間が予知できるのかを。
「まあ、一応観月にも相談してみるよ、あいつならきっと俺らじゃ思い付かないようなアイデアをくれる筈だ」
「あ、そういえばイロハさ……帝王が貴方に話があるって言ってましたよ、隠れ家に来てくれって」
「マジ?じゃあ急がなきゃな…じゃあな、クロエ」
「ええ、カルマ」
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